"幸せ"は特別なことじゃない|デンマークで感じた私のささやかな幸せ【私のウェルビーイング】
2021年「世界幸福度ランキング」で2位に選出されたデンマーク。デンマークでの暮らしを通して私なりに感じた”ささやかな幸せ”について見つめていきたいと思います。
日本から遠く離れた北欧の小さな国、デンマーク
私がデンマークにやってきたのは2020年8月。フォルケホイスコーレという成人教育機関に留学をすることが目的でした。当時社会人10年目を迎える私は、まさか自分がここから留学をするだなんて夢にも思っていませんでした。けれども、「もしいま留学をするならどこの国がいいかな?」と妄想を膨らませるうち、みるみるデンマークに惹かれ、その興味は1年の滞在を経てもなお深まるばかりです。
私とデンマークとの初めての接点は、5年前の友人との旅行です。その時に訪れたルイジアナ近代美術館は、その全ての美しさに圧倒され私にとって世界一好きな美術館になりました。文化も言葉も何もかもが違う、それなのになぜだか日本に通ずる美意識と心地良さが不思議だったことを覚えています。
デンマーク発祥 フォルケホイスコーレ
そんな思い出から、インターネットで「デンマーク 留学」と検索すると、すぐにたどり着いたのがフォルケホイスコーレという学校の存在でした。これは、17.5歳以上であれば誰でも入学ができる全寮制の成人教育機関です。デンマーク国内におよそ70校あり、入学試験やテスト、成績といったものがありません。授業の科目は学校によって異なり、文学、歴史、自然科学や政治からスポーツ、アート、工芸、アウトドアやライフスタイルなど多岐に渡ります。
学校によって雰囲気など違えど、先生と生徒の間の平等と相互学習が基本理念になっています。また共に生活をする中で、自由な言葉、対話、そしてカリキュラムも流動的なことが特徴です。人生の中で一旦立ち止まり、人との対話を通して自分を見つめ、再び社会へと参加をしていく。時代と共に変化をしながらも、多くのアイデアが1800年代にグルンドヴィによって構想された当時から、現代にも根付いています。そして肌で民主主義とは何かを学ぶことが、デンマークという国を構築する上で重要な役割を果たしているとも考えられています。
多くのフォルケホイスコーレでは、3ヶ月から6ヶ月ほどの長期コースと、1週間ほどの短期コースを開講しています。一部シニア向けの学校もありますが、長期コースの多くには20代前半の、いわゆるギャップイヤーに滞在する生徒が多いようです。このギャップイヤーという言葉、私はこれまであまり耳にしたことがありませんでした。これは高校から大学、大学院への進学、あるいは就職などの節目の期間を指し、その間に1年ほど世界中を旅したり、インターンシップをしたり、あるいはこのようなフォルケホイスコーレで過ごすことがデンマークでは受け入れられているようです。また私のように、ある程度社会人経験を経て、転職などを境に来る生徒も少数いました。
AUTHOR
大河内千晶
1988年愛知県名古屋市生まれ。大学ではコンテンポラリーダンスを専攻。都内でファッションブランド、デザイン関連の展覧会を行う文化施設にておよそ10年勤務。のちに約1年デンマークに留学・滞在。帰国後は、子どもとアートに関わることを軸に活動中。
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