中米一美しい湖のほとりで出会った幸せな暮らし|6年間世界を旅した夫婦の記録Vol.3
「死ぬまでに世界を見ておきたい」夫の熱い思いから始まった、世界を旅する夫婦の暮らし。ふたりが旅先で出会ったものとは。そして旅を続ける理由とは。ヨガインストラクターで旅した先でヨガする妻と、映像と写真で旅を記録する夫によるユニット「旅する鈴木」6年間の旅の記録を、不定期連載でお届けします。
喧騒から逃れてサンペドロへ
メキシコの南に位置するグアテマラ。ここに中米一美しいと言われている「アティトラン湖」があり、そのほとりに小さな町、サンペドロ・ラ・ラグーナ(以下サンペドロ)はあります。クリスマスからお正月にかけて、メキシコでも日本同様交通渋滞が起こる。その前にどこかに移動をして、正月過ぎまでゆったり過そうと考えてた時におススメされたのがここ。メキシコで出会う旅人が皆口々にここは行くべきと教えてくれました。「僕は長居したくて帰りの飛行機チケットを破棄したよ」と明るく話す青年も。
密入国?初の国境越え
まずはメキシコからグアテマラへ行くには国境越えが待っています。私は陸地の国境越えは初めてでドキドキ。国境越えはトラブルがあるもの。緊張です。ついたのは川。どうやら川を下っての国境越えのようで、どんな立派な船に乗るのか楽しみにしていたのですが、目の前にあるのは公園にある手漕ぎボートをちょっと大きくしたようなボロ目なボート。まさか...とは思ったけど案の定このファミリーボートで入国するらしい。初の国境越えは、まるで密入国のようでした。
ちょっとでも騒ぐと落ちてしまいそうな不安定さの船に乗り、川の水をバチャバチャにかぶりながら渡りました。次は入管管理局。すでに入国するのにお金がいるやらいらないやらで、外国人とぎゃあぎゃあ揉めています。入国管理局の職員なのに、払うべきなのか払わなくていいのか、何が正しいのかがハッキリしていない模様。世界は案外ゆるいんだと、初めて知りました。ゆるいので、私達はお金を払わずすんなり入国。
中米一美しいアティトラン湖のほとりの町
バスを乗り継ぎ、船に乗り、ついに到着!
これが街の至る所から眺めることができるアティトラン湖。日中も太陽に照らされ輝き、夜は街明かりが少ないので、星空がとても綺麗に見えます。満月の夜は、月が水面に映ってとても幻想的な美しさです。家は山沿いにたくさん並んでいます。
マヤの人々の伝統的な生活が残る町
美しい湖というのは世界中どこにでもあります。ここが美しいと言われるのは、その周りに住むマヤの人々の昔ながらの生活を感じれるからだと思いました。
ここに住んでいる人たちは殆どがマヤの末裔の人。浅黒い肌に大きな瞳。男の人は普通の服ですが、女の人は黒い髪をおさげに結い、民族の刺繍の入ったロングスカートをはいています。
セントラルエリアには人々の活気溢れる日常生活が垣間見れます。午前中しか空いていない強気なマーケットには、新鮮な野菜から果物、生きている鶏までなんでも揃います。私たちは自炊をして過ごすため、毎日このマーケットでお買い物。ツーリスト向けのオシャレなカフェや民族のお土産やさん、商店、バーのほか、ヨガ教室まであるから、ここにいても全く不自由がありません。
頭にバナナをのせて売るお母さんと一緒に撮影。これはバランスや体幹が鍛えられそう!
生活の知恵!斬新な洗濯方法
この町の暮らしで私達夫婦が一番気に入ったのは、湖で洗濯をしながらお風呂に入っていること。持ってきた服を手洗いで洗濯をした後、自分たちの着ている服にも石鹸をつけてゴシゴシ洗い、そのままザブンと頭まで水に浸かって石鹸の泡を洗い流す。なんて効率的!「この洗濯方法いいですね」というと「でしょ!服も自分もどうせだから洗っちゃうのよ」といい笑顔。「あ、夜は寒いから昼間のうちに入ったほうがいいからね」という素敵なアドバイスまで頂きました。旅で洗濯は手洗いなので、これはいいと思いつつ、まだ長袖を着る季節。水も冷たいので今回は見るだけ。どこかでこの技使わせてもらおうと心にしまっておきました。
大胆で心地よい宿
そして、私達の宿「peneleu」。数日前に作られた3階の部屋に泊まりました。常に湖からいい風が吹く、絶景癒しポイント。お隣はカナダの小説家。創作意欲が湧くとのことで、毎年この宿の最上階を数ヶ月単位で借りているそうな。
ゆるい国なので、まあ色々あります。トイレのドアはないとか、よく停電するとかは普通のこと。ある風の強い日、町歩きから帰ったら窓が風で吹き飛ばされていました。「えええ!そんなことあるの?!」と驚いてオーナーに伝えるも、オーナーは「あっはっは、窓が吹き飛んだ!そりゃ傑作だな!」と大笑い。いやいや直してくださいよと言っても、笑ってなかなか直してくれません。
そんなゆるさもあるけど、それが帳消しになるくらい心地よい場所。ベランダに椅子を置いて、湖を見ているうちに、いつの間にか一日が終わる...ダンナは「ここの部屋、いくらで買えるのかな...」なんてことを何度もつぶやいていました。
世界一安いスペイン語学校へ
この土地を選んだ理由はもう一つ。スペイン語が世界一安く受けられるということだったから。事実、安いです。週5日、1日3時間のマンツーマンで一週間3000円弱(2011年の価格)。あまりの安さに何度も先生に聞き直したほど。私達が通うことを決めた学校は、個人で教えているミカエラ先生。もともと語学学校で指導していたので、教え方がとても上手。スペイン語と英語を使って細かく教えてくれました。場所は先生の家の庭。
先生のお家は部屋が狭いとのことで、庭にガレージのような木の屋根をひとまず作り、そこに小さいテーブルとイス2脚だけの小さな小さな学校。素人の手作りなので、雨が降ったらびしょ濡れになるけど、そのサバイバル感がまた面白い。
特にダンナと先生はウマが合うらしく、ダンナに「今日の授業はどうだった?」と聞くと、「今日はミカエラの家の事情をスペイン語と英語を交えて話してくれた。いやあ、ダンナといざこざあって大変みたいよ」とか、またある日は「今日は庭に塀を作りたいっていうから、土を掘ってきて大変だった~。腰揉んでくれる?」なんて、語学を勉強しているのか、親戚の家に遊びに行っているのかわからないエピソードがドンドン出てきます。スペイン語も英語も人生勉強もできてとてもお得な授業だよねとワハハと笑いながら話していました。
ヨガで大切なことに気づく
そして、ここでのオススメは宿のテラスでの朝ヨガ。昼間は日光が暑いですが、朝はひんやり冷たくて心地いいのです。
目の前に広がる湖と山々を見ながらのヨガ。ここにある自然を大いに楽しめます。はじめは一人でやっていたヨガも、いつの間にか人が増えていきました。この頃はまだ英語でヨガなんてしたことがなかったので、この国の人が「参加したい」とやってきても「ごめんね、このレッスンは日本語だけだからあなたにはむずかしいんじゃないかな」とお断りをしたところ、彼は笑顔で「大丈夫!君の動きを見るし、ポーズができなくてもこの景色と自分の心地よさを感じればいいんだろ?言葉は関係ないよ。オッケーさ!」と答えてくれました。頭をがーんと殴られた思いがしました。自分がいかに言葉やポーズにとらわれて、ヨガを狭い世界に閉じ込めていたのか気づかされた瞬間でした。
もちろん言葉が通じるのにこしたことはないけれど、言葉が通じないからといってやりたいことをやめるのはもったいないこと。言葉はただの手段。目的は自分のやりたいことをやること。音楽や歌と同じで、ヨガは感じるもの。感じて自分に気づきを与えて何かを発見できるもの。ヨガの基本的なことを思い出させてくれた彼に感謝です。
朝起きて朝霧の湖を眺めながらヨガをして、朝食の用意や洗濯をする。市場に行きその日食べる野菜や肉を買ってから、スペイン語を習いに行く。近所の人と軽く話しながら、街をぐるりと散歩する。夕飯を食べてからまた湖を眺める...そんなゆったりとした時間が流れる、湖のほとりの街。特別なものはない。けれど、ゆったりしたくなる場所サンペドロ。決して裕福ではないのに、ここの人たちの心にはゆとりを感じます。幸せに生きるというのはどういうことだろうということを考えた初めての街。
キラキラ光る湖を見ながら、二人して笑顔で滞在延長を決めました。チケットを破棄した男の子の気持ちがよーーくわかる。異文化を感じて癒されたいならこの場所はおススメです。
ライター/旅する鈴木
ヨガ講師の”ヨメ”と、映像作家の”ダンナ”による旅夫婦ユニット。2011年より世界一周旅行を始め、アフリカ縦断、エベレストベースキャンプまでの登山、インドでのヨガ修行などを経て7年経った現在も未だ続いている。旅中は絶景の中ヨガをしたり現地の人に教えてヨガを広める。旅の様子を伝える映像ブログ「旅する鈴木」が第18回文化庁メディア芸術祭の推薦作品に選出。CM、ラジオ、雑誌など各種メディアにも出演。http://ryoseisuzuki.com
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