90年代スーパーモデルブームの最中に不動産仲介エージェントへ|トリッシュ・ゴフ、転身と決意

 90年代スーパーモデルブームの最中に不動産仲介エージェントへ|トリッシュ・ゴフ、転身と決意
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横山正美
横山正美
2022-01-31

90年代スーパーモデルとして人気絶頂の中、第2の人生を不動産仲介業に見出したトリッシュ・ゴフ。現在45歳となった1児の母である彼女が、子供の頃から好きだったことを「第2のキャリア」へと昇華させた華麗なる転身術と決意とは。

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「19歳のときから、自分でお金をある程度稼げるようになったら、物件を買い上げてリノベーションをすることに投資していました。最初に住んでいたところの周辺をよく探していたものです。そして、ロウアー・イースト・サイドに大きなロフトを見つけ、買い上げてリノベーションをしてから売りに出しました。それが不動産仲介エージェントとしての人生最初の仕事でした」。

トリッシュ・ゴフ
トリッシュ・ゴフ
photo by Getty Images

「NYタイムズ」紙の取材に対し、こう答えたのはモデル&不動産仲介エージェントのトリッシュ・ゴフだ。永遠の少女のような可憐さとイノセントな表情で、「ヴォーグ」等のメディアから、シャネル等の名だたるメゾンまでを魅了し、90年代スーパーモデルブームを牽引した立役者の一人だ。

1976年アメリカ・フロリダ州北部に生まれ育ったトリッシュは、15歳の時のモデルのスカウトに合い、学校を中退してNYでデビュー。直後に「ヴォーグ」のカバーを飾ると同時に、ヴィクシーエンジェルとしても起用されるなど、滑り出しは好調だった。以降シャネルやディオール等のメゾンの“顔”としても活躍する一方、2005年にはサイコスリラー映画「NOISE」に出演し、その活動範囲を女優業にも広げた。

そんな彼女がモデルとしての頭角を現すきっかけとなったのが、”ヘアスタイル”だ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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「これまでずっといろんなヘアスタイルに挑戦してきました。でも、私のモデルとしてのキャリアを確実なものにしたのは“バブルボウル”というスタイルです。ヘアスタイリストのギャレンが作ったのですが、当時17歳だった私は、あの丸いマッシュルームのようなスタイルがクールだと思えなくて、本当に恥ずかしくて大嫌いでした。ですが皮肉にも、それが私を成功へと導いたのですから、いまでは彼に感謝してもしきれないほどです」と、成功への布石となったトレードマークについてこう振り返った。

スーパーモデルから不動産仲介エージェントへ

モデルとして華々しい活躍を続けてきた彼女だが、その人生においてモデル業はあくまでも“サイドビジネス”であり、自身のキャリアの中心にあったわけではなかったという。

「どんなに人気のスーパーモデルでも、そのキャリアには必ず終わりが来ます。モデルという職業は、ある程度“遺伝的”な要素がものを言う世界ですから。その後のキャリアも、運がよければ編集者やその他の職業に転向することはあるかもしれませんが、それだって数える程度。チャンスは少ないものです」。

トリッシュ・ゴフ
photo by Getty Images

常に冷静な目を持ち、人生設計を着実に進めてきたと言うトリッシュ。最初の結婚でロンドンに移住し、その後ポルトガルへと移り住んだが、離婚。その時、自分自身と深く向き合うようになったという。

「いつまでモデルとして活動できるだろうか——そんなことが頭をよぎるようになり、私の中でモデルとしてのキャリアの終わりが近いことを悟りました。同時に私は、ファッション業界に居続けるのか、それならなぜこの世界にこだわらなくてはならないのか、と自問自答をし始めたのです。そしてそんな日々を過ごしている中で、昔のある光景が鮮明にフラッシュバックしてきました」

それは、彼女が7歳の時に体験したことで、その後の人生で不動産業に漠然とした興味を抱くきっかけとなった出来事だった。

「近所に森があって、そこが住宅地として開発中でした。そして家がほぼ完成してきたある週末、職人さんたちが1軒の家の鍵を閉め忘れていたのです。そこで私はこの家に“お邪魔”して、中をじっくり見させてもらいました(笑)。この時、新築の家のなんともいえない心地よさに取り憑かれてしまったのです。もはや中毒と言ってもいいくらいに(笑)」。

子供の頃から好きだった不動産だったら、ファッションで築いた人脈も生かせる。それに、世界中を旅した自分だからこそ、ライフスタイルのトレンドやニーズがわかるはず——。そこで離婚を機にアメリカへ戻り、ニューヨーク大学で不動産業の資格を取得した。

「人生には様々な行き先があります。でも、時には今いる場所を離れる覚悟を決めることも必要です。だから私は離婚を機にニューヨークに戻り、不動産業を始めようと決意したのです」。

現在トリッシュはNYにオフィスを構えながら、不動産業を中心に、時折マーク・ジェイコブスらファッション仲間のリクエストでモデル業をこなす日々を送っている。アーロン・ワードとの間にもうけた一人息子のナイマ・ワードも、母親の後を追うように現在トップモデルとして活躍中だ。

「オフィスに私専用の部屋はありませんが、特に必要とも思っていません。毎日同じオフィスで、同じ人と顔をあわせる“安定感”は、世界中を飛び回って一期一会の人間関係を繰り返して来たモデル時代には味わうことができなかったものです。今はこのスタイルがとても心地良い。現実的で、しっくりきています」。

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横山正美

横山正美

ビューティエディター/ライター/翻訳。「流行通信」の美容編集を経てフリーに。外資系化粧品会社の翻訳を手がける傍ら、「VOGUE JAPAN」等でビューティー記事や海外セレブリティの社会問題への取り組みに関するインタビュー記事等を執筆中。



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