時代とともに進化し続けるスタイルアイコン、アレクサ・チャンのいま。
モデル、TVプレゼンター、そしてファッションブランド「ALEXACHUNG」のCEO、さらには子宮内膜症のリサーチのための国際基金(WERF)のアクティビストとして多彩な活躍を続けるアレクサ・チャン。そんな彼女の“いま”に注目!
「“イットガール”の定義もわからないし、そもそもどういう意味で私に対してその言葉を使っているのかがわかりませんでした。ソーシャライトと同義なのでしょうけれども、私はテレビプレゼンターでしたし、イットガールと呼ばれることには良い気がしたことがありません。ちゃんとした仕事があり、一生懸命働いていたのに」。
「シドニーモーニングヘラルド」紙のインタビューにこう語ったモデルでテレビプレゼンターのアレクサ・チャン。1983年、イギリス・ハンプシャーに生まれ育った彼女の名字・“チャン”は、父フィリップ・チャンが中国にルーツを持つことに由来する。
16歳の時、レディング・ロック・フェスティバルでスカウトに会ったことから、モデルとしてのキャリアをスタート。デビュー直後から「ELLE」等のファッション誌を総ナメにするほか、様々なメゾンのキャンペーンを務めるなど、順風満帆なキャリアを築いて行った。
2010年からJ.Crew等のファッションブランドとのコラボレーションラインを発表するなど、積極的にファッションビジネスを展開し、2017年には自身の名を冠したブランド「ALEXACHUNG」を発表。そのパリのシックさとNYのエッジーさをミックスしたそのセンスはメディアを惹きつけ、世界中のファッショニスタたちを魅了している。
一方モデル業やCEO業と並行して、チャンネル4の番組「Popworld」(2006年)を皮切りにテレビ界にも進出。22歳に時にはポール・マッカートニーらをゲストに招いたインタビュー番組のMCを務め、さらにはNYでMTV冠トークショー「It’s On with Alexa Chung」を持つ傍ら、「インディペンデント」紙で1年間「Girl About Town」のコラムニストを務めるなど、その存在は常に世界中にインスピレーションを与え続けている。
「こうやって色々なことをしているから、時には“あなたは一体何をしている人なの?”と聞かれることもありました。でも、時代は変わって今ではそんなことを言う人はいません。ひとつひとつ違う分野で積んだキャリアと学びが一つになって、今の私を形成しているのです」と、これまでの歩みを振り返るアレクサ。しかし、様々な形で自己を表現し続け、多方面から絶大な指示を得て、さらには地位と名誉を築いた今でも、ひとつだけ克服できないものがあると言う。それはーー。
「今でも、自分のことがメディアでどう伝えられているのかを見るのがとても気になってしまいます。いまはだいぶ慣れてきましたが、以前は本当にひどかった。インターネットで私の嘘のコメントを見つけたときは本当に怒ったり、この間も私の喋り方が男みたいに聞こえると言った人を動画で見てとても不快になりました。有名人であるということは、ある意味パーティでみんなからけなされるのを黙って聞いているのと同じです。でも見方を変えれば“みんながあなたのことをけなしても気にしないでね。その代わり、この高くて素敵なドレスをあなたはタダで着ることができるんだから”ということでもある。だから私は、ようやくそれで折り合いをつけようと思い始めてきたのです(笑)」。
子宮内膜症の克服と新たな恋
そんな彼女はボーイフレンド、オーソン・フライとの関係が、目下イギリスメディアのターゲットとなっている。オーソンはインディーバンド、サウンドタウンのフロントマンであり、2019年から二人は公に交際をスタートした。そんな二人がイギリスで注目を集めている理由の一つには、フライの実家がお菓子メーカー「キャドバリー」の傘下の「フライ」であること、そしてその年の差にあると彼女は言う。
「メディアはいつも私たちの年の差を指摘します。特にあるメディアはいつもオーソンが24歳だと書いていますが、正確には26歳(笑)。私は今年37歳だから、11歳差です。こういうディテールはとても大切な情報なので、しっかり書いて欲しいと思っています(笑)。少し前のインタビューで私は“愛とはどういう感じですか?”と聞かれた時、“抗うことができないもの”と答えました。40を目前にした今でも、そう思っています。これまでずっと一人で友達の結婚式に参列して、一人で泣いたり拍手したり、ブーケトスに参加してきたけれど、いまはとても落ち着いていて、彼と一緒にいるのが幸せです」。
プライベートでオーソンとの幸せを噛みしめる一方で、2020年に子宮内膜症の腹腔鏡診断を受けたと言うアレクサ。当時のことを、彼女はこう語る。
「私が子宮内膜症と診断された時はかなり進行していました。初期は自覚症状もそれほどひどくなかったのですが、ずっと鈍痛が続いていて四六時中悩まされていました。そのまま忙しくしていたら、ある日朝起きたら歩けないほど痛みがひどくなって、ついには全てのミーティングをキャンセルしなければならなくなったのです。とても怖くなって、この痛みの正体を突き止めようとようやく受診したところ、子宮内膜症と診断されました。でも、その時正直ホッとしました。もしかしたら子宮ガンではないかと思っていたので」。
こうした自身の体験から、現在はビジネス等の活動と並行して、子宮内膜症リサーチのための国際基金(WERF)の活動にも尽力している。その主な内容は、この病気の啓蒙活動だ。
「この病気の治療には手術を伴う場合がありますし、自覚症状もあまりない場合が多い。だからこそ、早期に病院を受信して欲しいと思うのです。私のブランドとコラボレーションでこのプロジェクトのために様々なアイテムを作りました。私のようにこの病気に患う女性たちはたくさんいます。この病気の撲滅に少しでも貢献できれば、こんなに嬉しいことはありません」。
CEOとして、ビジネスのこれから
パンデミックに見舞われたイギリスでは、アレクサのブランドも例に漏れず大打撃を受けた。そこでSNSを駆使して、なんとか22人の従業員を守り抜いていると言う。
「あれこれ手広くビジネスを展開していなかったことがよかったのかもしれません。それに実店舗を展開していないので、在庫処分に困ることもありませんでした。ですが、物流面では大きな遅れが出るなど、やはり影響を受けましたね」。
そんな彼女は現在2022年春夏コレクションを鋭意準備中だ。テーマは「Saturday Night Fever」。彼女独特のセンスに、セクシーでエネルギッシュなテイストをプラスしたものだ言う。
スタイルアイコンとして、常に時代をリードし、変化を求め続けるアレクサ。そんな自分自身を表現する言葉は、まさに彼女の生き様そのものだ。
「ヘアスタイルでも、メイクでも、ファッションでも、人はいつも無意識にいつも同じものを求めてしまいます。その方が安心するから。でも、同じものをずっと見続けていると、違うものが欲しくなるものです。私は、一つのものに執着するのが苦手。だからいつも“次”を探してしまうのです」。
AUTHOR
横山正美
ビューティエディター/ライター/翻訳。「流行通信」の美容編集を経てフリーに。外資系化粧品会社の翻訳を手がける傍ら、「VOGUE JAPAN」等でビューティー記事や海外セレブリティの社会問題への取り組みに関するインタビュー記事等を執筆中。
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