髪は女の命?わたしが20代後半で金髪ショートにした理由|チョーヒカル連載#とびきり自分論
モテたかった。もうそれはそれはモテたかった。本当は好きな女の子がいてストレートでもなかったくせに完全に先入観で「たくさんの男にモテたい」と思っていた。高校で同じクラスのあの子は柔道で大会に出てメダルを取ったらしい。でもモテていない。隣のクラスのあの子は成績が全国レベルで上位で学級委員だ。でもモテていない。私は絵画のコンクールで大賞を取った。でもモテていない。なぜかモテることは人間の根本的な価値であるように思っていた。他にどんな凄い所があっても、モテるという能力には劣る気がしていた。
大学に入ってからは見事な大学デビューで髪を茶色く染め、ゆるっとしたパーマもかけ、今では鼻で笑ってしまうような小花柄のワンピースを着て「モテテンプレート」を使った。そして私は恐らく人生で初めて少しだけ、モテた。お酒を飲む場に行くようになったからかもしれない、テンプレートが成功したのかもしれない、化粧が上手くなったからかもしれない。生まれて初めて複数の男性に迫られたり告白をされたりした。モテ慣れていない私は全てにしっぽを振り、たくさんのトラブルや面倒なことにまきこまれ、それを嬉々として友人に愚痴った。
ここで悲しいお知らせがあります。モテることで私は幸せになりませんでした。といっても私のモテレベルなんて本当にみみっちかったけれど。あんなに全ての価値を凌駕すると思っていた「モテ」はただの虚しいものだった。モテた末に付き合った人たちとうまくいくことは一度もなかった。だってその人たちのことを一度も本当に好きになっていなかったから。私を好きでいてくれていることにしか価値を見出していなかったから。そして彼らが好きになったのは私ではなく「モテテンプレート」だったから。モテたい気持ちに引っ張られて「私」がどこかに行ってしまっていた。
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