"体"を媒体に表現活動を行う作家チョーヒカルが語る「誰もがエイリアンである」という言葉の真意
植物や動物と融合したような女性など人間の身体をキャンバスとして表現する若手アーティストのチョーヒカル(趙燁)さん。武蔵野美術大学在学中から、人やものにリアルなペイントを施した作品で国際的に注目を浴びています。ファッションショーや広告などに起用され、他にもイラストレーションやデザインなど幅広いジャンルで活動。中国人の両親のもと日本で生まれ育ち、中国籍を持つというバックグラウンドから、国籍や人種、性別などの境界を超えるプロジェクトも展開しています。2019年からアメリカの大学院でアートを学んでいましたが3月末に新型コロナウイルスの影響で一時帰国。インタビューは再び渡米する2日前に行われました。
紙がなくて腕に描いてみたのがボディ・ペイントの始まりだった
——どのようなきっかけでアートの道に進み、人間の身体に描くようになったのでしょうか?
「幼い頃から絵が好きだったのですが、高校が進学校で勉強が嫌いだったので、卒業後は好きなことを学びたいと思って美術大学を選びました。その受験浪人中に、ラクガキをしようとしたら紙がなくて、手にアクリル絵具で描いてみたら自分でも驚くほどできばえがよくて。それから身体に描くようになったんです」
——いつから他人にも描くようになったのですか? またテーマやモチーフはどのように決めているのですか?
「最初から友人や父に身体を借りて描いていました。仕事として依頼をいただくようになってからはモデルさんなどにお願いしています。モチーフは、定型や常識への違和感からイメージを広げることがよくあります。例えば女性同士の友人間の関係性など、最初に表現したいテーマがあって、どんなモチーフをどこの身体パーツに描いたら表現できるかを考え、それに合わせてモデルさんを選んでいます」
——ひとりひとり身体の形や皮膚も違いますし、立体的に描くことは難しいのでは?
「人間の身体はめちゃめちゃ描きづらいですよ。久しぶりに紙に描くと『すごく平らで描きやすい!』と感じます(笑) 皮膚は絵具を吸収しないので、動いたらヒビが入って割れることもある。描くのには顔全面で3時間、背中などになってくると5時間くらいかかかります。しかも完成後は長時間持たないし、絵具は絶対落とさなければならないですから、作品は写真や映像でしか残りません」
——今は写真や映像メディアを用いてデジタル加工で顔を変えてしまうこともできる時代ですが、チョーさんは時間をかけて手で描くことで変えていくという地道な作業をされていますね。
「時代に逆行していますね(笑)。私は描く行為が好きで、コミュニケーションだとも思っています。ボディ・ペイントという手法には、写真や映像にはないアナログの良さがあると思います。CGで完成度が高くてもそれほど面白味はなくて、少し見える筆痕とか、人が描いたとわかると面白味が続く。私自身、ほかのクリエイターさんの作品を見たときに、この同じ手でこんなすごいものがつくれるんだという感動があるので、アナログ表現は今も強いと思っています」
——描き続けてきて何か変化が起きたことはありますか?
「近年では積極的に自分に描くようになりました。それまでも自分に内在する感情などをテーマにすることは多かったのですが、私自身が大勢の前に出たり写真に撮られたりすることが苦手だったんです。でもそれは逃げだなと思って」
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