太っていたらおしゃれを楽しめない?プラスサイズという選択肢|吉野なおの#ボディポジティブな生き方

 太っていたらおしゃれを楽しめない?プラスサイズという選択肢|吉野なおの#ボディポジティブな生き方
Nao Yoshino
吉野なお
吉野なお
2020-05-16
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世の中の価値観が明らかに変化していった

そんなふうに日本で始まったプラスサイズモデル事情(当初は「ぽっちゃりモデル」という表現をよく使っていました)。

「ラ・ファーファ」も号数を重ね、私以外にもたくさんのモデルが活躍して、この7年間のうちにプラスサイズのアイテムを堂々と取り扱うブランドも少しずつ増え、かつてはマネキンを使って撮影をしていた通販サイトがプラスサイズモデルを起用してくれるようになったり、「ラ・ファーファ」にも出演していた渡辺直美さんが自身のアパレルブランドを立ち上げ大人気に。

TwitterやInstagramなどのSNSが流行ったことで「ラ・ファーファ」読者のぽっちゃり女性たちがプラスサイズのファッションやヘアメイクについて発信したり情報共有していくことも当たり前になっていきましたし、アパレルアイテムの価格帯も値下がりし、大きいサイズでも手に取りやすい商品が増えていきました。

ファッションの流行的にも、ゆったりした服が受け入れられるようになり、『ぽっちゃり女子』という言葉が何となく以前よりかわいらしく、ポジティブなイメージを持ち、『プラスサイズ』という言葉が日本のアパレル業界でも少しずつ広がってきている気がします。

2019年あたりからは、欧米のダイバーシティやボディポジティブの影響を受け、少しずつですが、日本でもプラスサイズモデルがレギュラーサイズのモデルと並んで広告に出るアプローチも始まりました。

大手下着ブランド主催でプラスサイズだけの下着のファッションショーに出演した時には、「自分の存在が肯定されたような気持ちになった」と泣いていたお客様も多く(お客様は女性限定でした)その様子を見たブランドのスタッフさんたちも感動のあまり、つられて泣いてしまったほどでした。

レギュラーサイズに比べたら、まだまだデザインの選択肢もブランドも少ないと感じますが、それでも私自身、プラスサイズ業界に携わってきて、昔感じていたような『誰にも相談できない疎外感』が明らかに、少しずつやわらいできていると感じています。

プラスサイズモデル=肥満を薦めているわけではない

プラスサイズモデルがニュース記事や話題になると必ず見かけるコメントが「こんなに太りたくない」だとか、生活習慣病など肥満からくる病気を危惧するもの。確かにそれらを心配する気持ちもわかります。

でも私は、太っている人がおしゃれをすることは全く悪いことだと思いませんし、むしろ良いことだと思っています。

それにもし病気を持っていたとしたら、人知れずひたすら暗い生活を送らなくてはいけないのでしょうか?

例えば、私が実際に知る限りでも、体型から何事にも卑下していた女性がおしゃれに目覚めて明るく生きられるようになった話、薬の副作用や出産を機に体型の変化で自信をなくした女性がプラスサイズのアイテムでお気に入りのお洋服を身にまとう楽しさを思い出せた話、着る勇気がなかった服をプラスサイズモデルが着ていたことで真似して着れるようになった話など、数え切れないぐらいのポジティブなエピソードを見聞きしました。

かつての私のように「こうあるべき」という体型にこだわるあまり摂食障害になってしまった女性たちも体型にかかわらず、はるばるイベントに足を運んでくれたりしています。

プラスサイズモデルは肥満を薦めているわけでなく、今ぽっちゃりした体型の人が参考にしやすいリアルと、体に対する前向きなマインドを表現していること、10年前にはなかった『ぽっちゃりしている体のためのおしゃれやヘアメイク』が、少しずつ多くの人の存在の肯定をしていることは、もっと広く知られてほしいと思っています。

生き方の選択肢

「自分で履けないキュロットパンツ」を縫い上げた私がプラスサイズモデルになった一方、「ラ・ファーファ」が誕生したきっかけも、当時の創刊編集長自身が大きいサイズのファッションのバリエーションに不満を感じていたからからこそ企画されたものでした。

さらにプラスサイズのブランドでも、実はもともとはスタッフや身近な人が「サイズがなくて困っていた」というところから立ち上げられたものもあります。

そういったバックグラウンドもあり、私にとって、プラスサイズモデルの活動は「太ろう」だとか「太っている女性だけが美しい」ということを表明したいのではなく、「多様な体型の人が存在すること」の表明、生き方に関する選択肢の一つを投げかけることだと思っています。

最近では「生き方の多様性」をテーマに、大学や小学校で講演させていただくこともあります。(←次世代にもっと訴えていきたいのでお仕事依頼もお待ちしています!)

7年かけて少しずつ変わっていった日本のプラスサイズファッション事情。
まだまだ満足していないし、世の中の価値観や文化を変えることは時間のかかること。
でも、きっとさらにもう10年後は、プラスサイズに限らず、もっとあらゆる人が生きやすい時代になっているはず。
もしよかったら、あなたも一緒に、そんな『生きやすい時代』を作っていきませんか?

ライター/吉野なお
プラスサイズモデル。雑誌『ラ・ファーファ(発行:文友舎)』などでモデル活動をしながら、摂食障害の経験をもとに講演活動やワークショップなども行っている。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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