予定がないと不安になるのには理由がある。更年期でも動ける人がやっている「予定がない日」のおすすめの過ごし方
更年期の方に向けたサービス「よりそる」を運営する高本玲代さんが綴るコラム連載。高本さんご自身もまさに更年期世代。わかりやすい不調だけではない更年期の影響について、体験を交えてお話しいただきます。
今日は特に予定がない。
そんな日は、本来なら少しホッとできるはずなのですが、更年期の女性の相談に乗っていると、予定がない日が苦手になっている方が意外と多いと感じます。
朝起きて、特に出かける予定もないので、なんとなくスマホを見る。SNSを見たり、動画を見たりしているうちにお昼になり、そのままダラダラ過ごしていると夕方になっている。
そこで、
「今日も何もしなかった」
「せっかく一日あったのに」
「また一日無駄にしてしまった」
と自己嫌悪になる。
あるいは、朝から「今日は何も予定がない」と分かっただけで、なんとなく落ち着かない方もいます。
「みんなは仕事をしたり、出かけたりしているのに」
「こんなふうに何もしていなくていいのかな」
「予定がない自分って駄目だな」
そんなことを考えてしまいます。
でも、これまでたくさんの方の相談に乗ってきて思うのは、元気に動けるようになっていく人ほど、予定がない日を無理に埋めようとしなくなるということです。
むしろ私は、予定がない日を「ボーナスタイム」だと思ってみてください、とお話しすることがあります。
予定がないと不安になるのには理由がある
更年期を迎えるまで、仕事や家事、子育てなどで、ずっと忙しく過ごしてきた方は少なくありません。
朝起きたら家族のことをして、仕事に行き、帰ってきたら家事をする。
休日になれば、平日にできなかった用事を済ませる。
気がつけば何十年も、「今日はこれをしなければならない」という予定がある生活を続けてきたという方もいます。
そういう生活が長かった人にとって、何も予定がない日は、必ずしも嬉しいものではありません。
予定がないことに慣れていないのです。
さらに、周りの人が仕事をしたり、出かけたりしている様子を見ると、焦ることもあります。
SNSを開けば、休日に旅行へ行っている人や、友人とランチをしている人、趣味を楽しんでいる人が目に入ります。
自分は家で何もしていない。その差を見てしまうと、「私も何かしなければ」と思ってしまうことがあります。
そして、もう一つ多いのが、以前の自分との比較です。
以前なら、休みの日にも買い物に行って、家事をして、出かけることもできた。
それなのに今は、何も予定がない日に家にいるだけ。
すると、「前はもっと動けたのに」という気持ちが出てきます。
その結果、予定がないことそのものよりも、「何もしていない自分」を責めることのほうがつらくなってしまうのです。
「休む=怠ける」になっていませんか?
相談の中でもよく感じるのが、「休むこと」に罪悪感を持っている方が多いということです。
疲れている。
今日は特に予定もない。
だったら家でゆっくりすればいいように思います。ところが、それがなかなかできません。
ソファに座っていても、
「洗濯物を片づけたほうがいいかな」
「買い物に行ったほうがいいかな」
「時間があるんだから、あれをやっておこうかな」
と考えています。
体は休んでいても、頭の中ではずっと「やらなければならないこと」を探しています。
結局、休んだはずなのに、本人には「休んだ」という感覚があまり残りません。
むしろ、「一日あったのに何もできなかった」という罪悪感だけが残ることがあります。
私は、こういう方には、予定がない日を「休む日」とだけ考えなくてもいいと思っています。
「休みましょう」と言われても、長い間「休む=怠ける」と考えてきた人にとっては、休むこと自体が難しいからです。
そこでおすすめしているのが、「今日はボーナスタイム」と考えることです。
予定がない日は「ボーナスタイム」
ボーナスタイムというのは、何か特別なことをする日という意味ではありません。
いつもはできないけれど、ちょっとやってみたかったことをする時間です。
たとえば、
「この映画、いつか見たいな」と思っていた映画を見る。
SNSで保存したままになっていた動画を見る。
気になっていたドラマを見る。そんなことでいいのです。
ここで大事なのは、「やらなければならないこと」ではなく、「やりたかったこと」を選ぶことです。
予定がないから、
「今日はクローゼットを全部片づけよう」
「たまっている家事を一気にやろう」
「せっかくだから用事を全部済ませよう」
と考える必要はありません。
それでは、予定がない日が別の仕事の日になってしまいます。
「時間があるから、やらなければならないことをやる」ではなく、「時間があるから、やりたかったことをやってみる」。
この違いは小さく見えますが、実際の過ごし方はかなり変わります。
高尚なことをする必要はありません
「やりたかったことをしてみてください」とお話しすると、「やりたいことが分かりません」と言われることもあります。
これも珍しいことではありません。
ずっと家族や仕事の予定を優先してきた人に、突然「あなたは何がしたいですか」と聞いても、すぐには出てこないことがあります。
そんなときに、無理に趣味を探す必要はありません。
新しい習い事を始める必要もありませんし、何か自分の成長につながることをしなくてもいいと思います。
もっと簡単なことで十分です。
たとえば、スマホの中に保存したままになっている動画はないでしょうか。
「あとで見よう」と思って保存したものの、そのままになっている動画。
気になっていた映画。読みかけの本。ちょっと食べてみたかったもの。
そういうものを一つ選ぶだけでもいいのです。
私たちは「せっかく時間があるなら、有意義に使わなければ」と考えがちです。
でも、それを始めると、今度は「休みの日を有意義に過ごす」という新しい課題が増えてしまいます。
予定がない日まで頑張る必要はありません。「これ、見たかったんだよな」くらいのものでいいのです。
比較的簡単にできることを選ぶ
もう一つ、選ぶときに気をつけたいのが、今の自分にとって比較的簡単にできることです。
やりたかったことだからといって、体に負担がかかることをする必要はありません。
以前から行きたかった場所があったとしても、そこまで行くのに長時間かかるのであれば、今は別のことを選んでもいい。
やってみたいことがいくつもあったとしても、一日に全部する必要もありません。
見たかった映画を一本見る。今日はそれだけでもいいと思います。
特に更年期の時期は、その日の調子によってできることが変わる方もいます。
「やりたいかどうか」と同時に、「今日はこれなら無理なくできそうか」を考えてみてください。ボーナスタイムなのに、終わったあとにぐったりしてしまっては、少しもったいないからです。
「何もしなかった日」ではなくなる
予定がない日に、見たかった映画を一本見たとします。
外出はしていません。家事もそれほどしていません。
一日を外から見れば、これまでとそれほど変わらないかもしれません。
でも、本人の受け取り方は違います。
「今日は何もしなかった」ではなく、
「今日は見たかった映画を見た」になります。
この違いは、相談に乗っていても大きいと感じます。
何もしなかったと思っていると、その日の終わりに自分を責めやすくなります。
一方で、自分がやりたかったことを一つできると、「今日はこれをした」と思えます。
そこで初めて、「今日はこれでいいか」と思えることがあります。
そして、その「今日はこれでいい」が、休むことへの許可にもなっていきます。
休んでいいと自分に許可を出す
体を休めること自体は、それほど難しいことではないかもしれません。
横になることも、家にいることもできます。
でも、「休んでもいい」と自分で思うことは、意外と難しいものです。
特に、これまでずっと忙しくしてきた方ほどそうです。
休んでいる間にも、「こんなことをしていていいのかな」と思っていることがあります。
それでは、せっかく予定がない日でも気持ちが落ち着きません。
ところが、「今日はボーナスタイムだから、見たかったものを見よう」と決めると、少し変わります。
自分で選んで、その時間を使っているからです。
「何もできなかったから家にいた」のではありません。「今日はこれをしようと思って家で過ごした」になります。
すると、休むことへの罪悪感を手放しやすくなります。
私は、この「自分に休んでいいと許可を出せること」がとても大切だと思っています。
翌日、もう少し元気に動けることもある
予定がない日に無理をしないで過ごすと、翌日に「昨日より少し動けそう」と感じることがあります。
ここは、予定がない日をどう過ごすかを考えるうえで大事なところです。
一日空いていると、「今日のうちにいろいろやっておこう」と思うかもしれません。
でも、その日に全部使い切ってしまえば、翌日また疲れてしまうこともあります。
反対に、予定がない日をボーナスタイムとして過ごし、体に無理のないことをして、休んでもいいと自分に許可を出す。
そうすると、翌日にもう少し元気が残っていることがあります。
「昨日何もしなかったから今日頑張らなきゃ」ではなく、「昨日ゆっくりできたから、今日は少し動けそう」と思える。
予定がない日は、その一日だけを見て評価しなくてもいいのです。
自分の時間を楽しむことを思い出す
こうした過ごし方を続けていると、「自分の時間を楽しめるようになった」と話す方もいます。これは、更年期の時期には意外と大きな変化です。
仕事をしている時間。
家事をしている時間。
家族のために使う時間。
誰かとの約束の時間。
そうした時間はあっても、「自分がやりたいことのために使う時間」は、長い間ほとんどなかったという方もいます。
だから最初は、予定がない時間をどう使えばいいのか分かりません。
でも、保存していた動画を見るところからでもいい。
見たかった映画を見るところからでもいい。
「これは自分がやりたくてやっている」という時間を少しずつ持ってみる。
そうすると、予定がないことへの感じ方も変わってきます。
予定がない日は「何もない日」ではなくなります。自分のために使える時間になります。
予定がない日を埋めなくてもいい
更年期になって以前ほど動けなくなると、予定がないことに焦りを感じる方がいます。
以前ならもっと予定があった。
もっと動いていた。
もっといろいろなことができた。
そう思うと、空いている時間を見るだけで、自分が止まってしまったように感じることもあります。
でも、予定が入っていることと、元気であることは同じではありません。
予定がない日があることも、悪いことではありません。
むしろ、そんな日ができたときに、「今日はボーナスタイムだな」と思ってみてください。
そして、「やらなければならないこと」ではなく、「やりたかったこと」の中から、今の自分でも簡単にできそうなものを一つ選んでみる。保存した動画を見るだけでもいい。映画を一本見るだけでもいい。途中で眠くなったら、そのまま休んでもいいと思います。
予定がない一日を、立派な一日にする必要はありません。
「今日も何もしなかった」と自分を責めて終わるのではなく、「今日は自分のためにこれをした」と思える一日にしてみる。
そういう日があることで、罪悪感を手放せるようになり、自分の時間も少しずつ楽しめるようになります。
そして次の日、「今日はちょっと動けそう」と思えたら、それで十分です。
予定がない日は、埋めるためにあるのではありません。
長い間、仕事や家事、家族のために時間を使ってきた人にとって、自分のために時間を使う練習ができる日でもあります。
次に予定のない日が来たら、「今日は何をしなければいけないだろう」ではなく、「何か見たかったもの、なかったかな」くらいから始めてみてください。
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