心がすり減る人ほど無意識にやっている“自分いじめ”とは|臨床心理士が解説

心がすり減る人ほど無意識にやっている“自分いじめ”とは|臨床心理士が解説
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狩野淳
狩野淳
2026-04-27

日々の生活のなかで、「気づくと気分が落ち込んでいる」「よくわからないけど元気が出ない」と感じることはないでしょうか。大きな出来事があったわけではないのに、心がじわじわと消耗していく感覚。その背景には、自分でも気づかないうちに続けている“自分いじめ”の習慣が隠れていることがあります。これは誰にでも起こりうるもので、特別な人だけの問題ではありません。ここでは、心がすり減りやすい人に共通する3つの傾向について紹介していきます。

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「こうでなければならない」と自分を縛り付ける

「社会人ならこうあるべき」「親なんだからしっかりしなければ」そんなふうに自分の中で“理想の姿”を強く持っている人ほど、無意識のうちに自分を追い込んでしまうことがあります。一見すると向上心が高く、責任感のある姿にも見えますが、その基準が厳しすぎると、少しの失敗やズレでも「自分はダメだ」と感じてしまいます。

例えば、仕事で少しミスをしたときに、「誰でもミスはある」と受け止めるのではなく、「こんなこともできないなんて」と自分を責めてしまう。あるいは、家事や育児が思い通りにいかないときに、「自分はちゃんとできていない」と落ち込む。こうした思考は、知らず知らずのうちに心を蝕んでいきます。

本来、人は状況や体調によってパフォーマンスが変わるものです。それにもかかわらず、「常に同じ高い水準でいなければならない」と思い込むと、自分に余白を与えることができなくなります。その結果、心が休まる時間が減り、疲れが積み重なっていくのです。

失敗場面を何度も思い返す

生物は失敗から学び次に生かしていくことができるので、過去の出来事を振り返ること自体は決して悪いことではありません。しかし、失敗した場面ばかりを繰り返し思い出し、「あのときこうしていれば」「なんであんな失敗をしたんだろう」と考え続ける状態が続くと、心は少しずつ消耗していきます。

例えば、人前でうまく話せなかった場面を何度も思い返し、そのたびに恥ずかしさや後悔を感じる。あるいは、誰かに言われた一言が気になって、何度も頭の中で再生してしまう。このような思考は、実際には過去の出来事であるにもかかわらず、まるで“今起きていること”のようにあなたを否定し、心に悪影響を与えます。

こうした状態が続くと、気持ちが前に向きにくくなり、「また同じことをしてしまうのではないか」という不安も強まります。そして、新しい行動を避けたり、さらに自信を失ったりするという悪循環に陥ることもあります。

人の脳は、ネガティブな出来事を強く記憶しやすい性質を持っています。そのため、意識しないままでいると、自然と失敗に目が向きやすくなるのです。これは性格の問題というよりも、人間の仕組みに近いものだと言えるでしょう。だから、思い当たる節があったとしても、「あなたがダメだから」「出来が悪いから」なんてことは全くないのです。

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成功しても「たまたまだ」と思い、自分を認めない

何かうまくいったときに、「今回は運が良かっただけ」と感じたことはないでしょうか。とても謙虚な姿勢のように見えますが、それが習慣化すると、自分の努力や力を正当に評価できなくなってしまいます。

例えば、仕事で評価されたときに「周りの人が良かっただけ」と考えたり、目標を達成したときに「たまたま条件が良かった」と受け止めたりする。こうした考え方が続くと、どれだけ成果を積み重ねても、自信につながりません。

その一方で、うまくいかなかったときには「自分のせいだ」と感じやすい人も少なくありません。成功は外の要因、失敗は自分の問題と捉える偏りがあると、心のバランスが崩れやすくなります。その結果、「自分はできていない」という感覚ばかりが強まり、自己評価が下がっていくのです。

本来、結果にはさまざまな要因が関わっています。成功も失敗も、どちらか一方に偏らずに受け止めることが、心の安定につながります。しかし、「自分を認めない習慣」「自分を責める習慣」があると、そのバランスが取りにくくなってしまいます。

自分と向き合うことが心を守る

ここまで見てきたような「自分いじめ」は、多くの場合、無意識のうちに行われています。だからこそ、「やめよう」と思っても、すぐに変えるのは簡単ではありません。ただ、大切なのはまず自分自身を見つめ直すことです。

「自分は少し厳しくしすぎているかもしれない」「同じことを何度も考えているな」と感じられたとき、それは心が発しているサインとも言えます。そのサインに気づけるだけでも、これまでとは違った関わり方が少しずつ見えてきます。

人は誰でも、うまくいく日とそうでない日があります。その揺らぎを含めて「これが自分なんだ」と受け止められたとき、心は少し軽くなります。完璧である必要はありませんし、常に前向きでいる必要もありません。他の人と比べることもしなくていいです。

もし今、「なんだか疲れている」と感じているのであれば、それは頑張ってきた証でもあります。自分に向けている厳しさを、ほんの少しだけ緩めてみる。その小さな変化が、心の余白を取り戻すきっかけになるかもしれませんね。

 

参考文献:

厚生労働省「こころの健康について」(2026.4.14参照)
齋藤路子,今野裕之(2009)
ネガティブな反すうと自己意識的感情および自己志向的完全主義との関連の検討(2026.4.15参照)

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