「自己価値が低下」「自ら被害に近づいてしまうことも」…性被害を受けた人が知っておきたい心理的ケア

 「自己価値が低下」「自ら被害に近づいてしまうことも」…性被害を受けた人が知っておきたい心理的ケア
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石上友梨
石上友梨
2023-11-16

性暴力被害には心身共に大きな影響があり、被害者が声を上げにくいため支援につながりづらいという現状があります。例えば、年齢が幼かったり、関係が近かったり、被害という認識が持てない場合は、「あの時、私が〇〇だったから」等と原因を自分のせいにしてしまい長い年月「自責感」に悩まされる場合も少なくありません。そうするとより一層「自分は被害者だった」という認識に至らず、現在も続く苦しみと過去の出来事を結びつけず、支援を受ける、治療を受ける機会を逃してしまうことがあります。

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性被害を受けたことで起こりうること

自己価値が低下する

被害を受けると、自分自身の尊厳や主体性が奪われます。そうすると自分自身の価値を感じづらくなり、自己肯定感や自尊心が低下することにつながります。「自分は汚れてしまった」「自分は間違った」「自分は失敗した」そんな風に自分に対するイメージが変化をします。そして、自責を繰り返すことで自己価値感はさらに下がります。主体性が奪われ、自分の価値が下がり、何かが変わってしまったと感じることで、自分を見失いやすくなります。「自分はどんな人間なんだろう」「何をしたいんだろう」そうすると、生きている意味が分からない。学生だと「学校に行く意味が分からない」など目的意識にも影響が出ます。また、主体性を奪われて「モノ」のように扱われた経験から、繰り返し自分で自分を「モノ」のように扱うことも自己価値を低下させることにつながります。

自ら被害体験に近づいてしまう事もある

性被害に遭った後に、不特定多数の人と性的関係を持ったり、性サービスを提供する職業についたり、自ら被害体験と関連することを繰り返すことがあります。それは、「自ら」同じような体験をすることで主体性やコントロール感を取り戻そうとしている場合や、同じような体験を重ねることでトラウマ体験を過小評価したい場合など、様々な理由があると考えられます。それがトラウマ体験が遭った故の行動であったとしても、他者から見ると誤解され、さらなる傷つきを重ねる場合があります。

性被害を受けた人におこなってほしいこと

安心と安全を確保する

もし今も安全ではない場所にいるのなら、まずは安全を確保することが最も大切です。「安全な場所に移動する」「安全な場所を見つける」「安全な人とつながる」等、安心できる・安全だと感じられる場所なり人なりを増やしていきましょう。なお、相手に自分の被害のことを伝える必要はなく、一緒に過ごして安心安全を感じられる人を確保しましょう。

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被害だと認識すること

「あの出来事は被害だった」「自分は悪くない」と、認識することが回復の始まりになります。被害だと認識することで、自責感は軽減されます。しかし、すぐに「被害だった」と認識できず、「でも、自分が〇〇だったから…」と自責感が出てきてしまうかもしれません。それでも、繰り返し「いやいや、相手が100%悪い」と繰り返すことで少しずつ認識は変化していきます。信頼できる人や専門機関に話をして「それは被害だよ」と他人から言われることで認識が変化する場合もあります。また、被害だと認識はできても、同じような被害を受けた他人と比べて、「私の被害は軽いから気にしてはダメ」など考えてしまう場合もあります。被害は被害であり、比較できるものではありません。

心理療法を受ける

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現在はトラウマ体験に対する心理療法がたくさんあります。例えば、それぞれ簡易的な説明になりますが、眼球運動によってトラウマを処理するEMDR、自分の中にある様々なパーツに働きかける自我状態療法、身体をタッピングすることでトラウマを処理するTFT、トラウマを繰り返し詳細に語ることで処理するPE(持続エクスポージャー)、過去のイメージを書き換えて満たされなかった感情欲求を満たすホログラフィートークやスキーマ療法、トラウマは語らずに身体の感覚から派生するイメージや感情に焦点を当てるSE(ソマティック・エクスペリエンス)など、他にも様々な方法があります。このような心理療法によってトラウマを手放すことができる一方で、心理療法を受けるには心の準備が必要です。準備を進めるためには、先程お伝えした「安心・安全を確保する」「被害だと認識する」ことに加え、トラウマによる影響や心の状態について情報を得ること、トラウマセンシティブなヨガやマインドフルネスなどの活動に参加してみること、セルフ・コンパッションを高めることが有効だと考えられます。セルフ・コンパッションについては、「臨床心理士が解説!自分を思いやる力「セルフコンパッション」とは?」の記事も参考にしてくださいね。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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