臨床心理士が解説!自分を思いやる力「セルフコンパッション」とは?

 臨床心理士が解説!自分を思いやる力「セルフコンパッション」とは?
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石上友梨
石上友梨
2019-07-22

みなさんは、自分には甘いタイプですか?それとも厳しくしてしまうタイプでしょうか?完璧主義だったり、高い目標を持っていたり、努力を重ねる際に、自分に厳しい声かけをしてやる気を出そうとすることがあるかと思います。もしかしたら、自分に優しくすると自分がだらけてしまうのでは?と考えているかもしれません。自分に厳しくすることと、自分を思いやり優しく声かけするのでは、どちらがプラスの影響が多いのでしょうか?今回は近年注目されている自分を思いやる力「セルフコンパッション」についてご紹介したいと思います。

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セルフコンパッションとは?

セルフコンパッションとは、「自分を思いやる力」のことです。コンパッションは「思いやり」という意味でして、自分を思いやり、自分を許したり、自分に優しくする力のことです。自分に優しくすると聞くと、「自分を甘やかして、だらけてしまうのでは?」と心配するかもしれません。セルフコンパッションは、自分を甘やかすこととは区別されています。また、自己肯定感や自尊心とも異なる力になります。

甘やかしは、自分の悪い面には目を瞑り、改善策を考えることなく悪い面をそのままにします。しかし、セルフコンパッションは、自分の良い面も悪い面も両方とも受け入れます。自尊心は、自分を好ましく思う肯定的な態度のことです。自分と他者を比較し、自分の好ましいところを探すことで他人を低く見てしまう場合があります。また、自己肯定感は評価を含みます。他人と比べたり、過去の自分と比べたり、なにかと比較して、自分の良い部分や、前に進んでいる部分を探し評価します。比較したり評価したり、何かをしていないと自分を肯定できないことは、少し疲れてしまいます。セルフコンパッションは、比較したり評価はしません。あるがままを受け入れます。

自分に厳しくした方が成果が出るのでは?

自分に厳しくして、奮い立たせた方が成果が出ると思われていました。弱点を克服するためには、自分の弱点に目を向け受け入れた上で、冷静に対処法を検討することが必要です。しかし、自分に厳しくしてしまうと、弱点を見ないようにしたり、失敗しないために挑戦しなくなる傾向があります。弱点に対して良し悪しを判断せず、事実として受け入れるためにセルフコンパッションの力が必要です。努力や、頑張りが必要な時もありますが、セルフコンパッションの上に成り立つものです。

セルフコンパッションが高い人の5つの特徴

セルフコンパッションが高い人には以下の特徴があると言われています。

・自分の失敗や誤りに対して批評せず、寛容であること
・人は誰でも失敗することを受け入れる
・失敗したり目標を達成できなかったときに、マイナスの感情に支配されない
・自己改善のモチベーションが高い
・自分に偽りがない(オーセンティシティ)を示す

オーセンシティとは、本当の自分を押さえ込んで生きたり、自分をよく見せよう、悪く見せようと偽らないことです。あるがままの自分で生きることです。

セルフコンパッションの効果

セルフコンパッションの力を高めるとどのような効果があるのか紹介します。

・幸福度が高まる
・不安や抑うつ、怒りが和らぐ
・ストレスが下がる
・逆境力(レジリエンス)が高まる
・モチベーションがあがる
・脳の思いやり回路が活性化する
・他者にも寛容になる

セルフコンパッションが低いと、「自分は悪い人間だから、罰せられるべきだ」、「自分は楽をしちゃいけない」「自分は幸せになっちゃいけない」と、自ら自分を辛い方向に持っていってしまうかもしれません。また、現在の自分の状況をしっかりと見つめることができず、適切な対処法を見つけることができないかもしれません。

自分の育ってきた環境や周囲からの声かけで、自分を思いやる力「セルフコンパッション」が一緒に育ってきた方もいらっしゃると思います。また、自分で自分に声かけをすることで、セルフコンパッションを高めてきた方もいるかもしれません。しかし、そうではない場合、セルフコンパッションがうまく育たず、自己否定的になったり、自責的になりやすいかと思います。

そこで嘆く必要はありません。セルフコンパッションは後からでも高めることができます。

セルフコンパッションの3つの要素

最後にセルフコンパッションの3つのポイントを紹介します。

マインドフルネス

自分に対して良い悪いと評価せず、あるがまま受け止めることです。マインドフルネス瞑想を続けることで、自分の性格や特徴についてもマインドフルに受け止めやすくなります。

自分に対する思いやり

自分に対しての厳しい声かけを、思いやりを持った声かけに変えていきます。自分にとって大切な人に声をかけるつもりで、優しく労いの言葉をかけましょう。

人類の共通性

人間なら誰でも失敗します。誰でも欠点があります。誰でもストレスや困難、嫌なことがあります。強いストレスを感じているとき、こんなに辛いのは世界中で自分だけのような感覚に陥ります。しかし、ほぼ全ての悩みは過去に経験した人がいると言われています。すべての悩みには、人類のどこかに仲間がいる…人類の共通性を意識することが大切です。

この3つのポイントを意識した声かけを、自分自身に対して実践していくことでセルフコンパッションを高めることができます。今まで自分に厳しくしてきた方は、急に実践するのは難しいかもしれません。しかし、はじめは違和感があっても、出来るペースで継続していくことで少しずつ変化していきます。セルフコンパッションが低いと感じる方は参考にしてください。

ライター/石上友梨
臨床心理士/公認心理師 大学・大学院と心理学を学び、警視庁に入庁。職員のメンタルヘルス管理や、心理カウンセリング、スポーツ選手へのメンタルトレーニングなどを経験。ヨガや瞑想を本場で学ぶためインド・ネパールへ。全米ヨガアライアンス200取得。現在は認知行動療法をベースとした心理カウンセリング、セミナー講師、ライター、ヨガインストラクターなど、活動の幅を広げている。また、発達障害を支援する活動にも力を入れている。

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