イライラ・落ち込みに振り回される原因と改善法3つ|オフィスのストレスを減らし、心の波をやさしく整える方法

イライラ・落ち込みに振り回される原因と改善法3つ|オフィスのストレスを減らし、心の波をやさしく整える方法

「仕事中、ちょっとしたことでカッとなってしまう」「家に帰ってからも、昼間の出来事が頭を離れない」——そういう状態、心当たりがある方は多いのではないでしょうか。 実はこれ、性格が悪いわけでも、メンタルが弱いわけでもないんです。カウンセリングの現場でよく話を聞いていると、感情の波に振り回されている人のほとんどが、ある"思考や反応のパターン"にはまり込んでいることがわかってきます。

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目次

今回は、そのパターンを整理しながら、オフィスでも無理なく実践できる改善法を3つご紹介します。「特別なことを始めなきゃ」と構える必要はありません。日常のちょっとした視点の変え方から、少しずつ整えていきましょう。

イライラ・落ち込みに振り回されるのはなぜ? 仕事やオフィスで起こる原因

ストレスや苦痛が積み重なる仕組み

仕事をしていると、目に見えるプレッシャーだけじゃなく、「なんとなく居心地が悪い」「また嫌な空気だった」という、言葉にしにくいストレスが日々積み上がっていきます。

以前、営業職の30代男性がこんなことを話してくれました。「特別につらいことがあったわけじゃないんです。でも気づいたら、朝起きるのが億劫で、電車の中でも怒りっぽくなっていて……」と。なんだか急につらくなることがあって、それから頭がおかしくなってということがありました。

ひとつひとつは小石くらいの重さでも、それが毎日積み重なればリュックは相当重くなりますよね。心の余裕がなくなるのは、ある意味で当然のことといえるかもしれません。ストレスの蓄積と感情の揺れには、こうした密接なつながりがあると考えられています。

感情に飲み込まれる思考パターンとは

「~すべき思考」がイライラを強める

カウンセリングでよく見聞きするのが、「ちゃんとやるべき」「ミスしてはいけない」という強い思い込みです。これ自体は責任感の表れなのですが、行き過ぎると自分や周囲への期待値が上がりすぎて、ちょっとしたズレが大きなイライラに変わってしまいます。なんであの人は挨拶もしないのか、こっちが相談したんだからちゃんと聞くべきでしょう!?とか、本来やってくれるはずのことをやってくれない。そこに注意が向いてしまう。

認知行動療法(CBT)の観点からも、このような「べき思考(should statements)」は感情的苦痛を高める認知の歪みのひとつとして広く知られています。※1

ネガティブな反すうが落ち込みを深める

「あのとき、なんであんなことを言ってしまったんだろう」と、過去の出来事を何度も頭の中で再生してしまう——いわゆる"反すう思考"です。これが続くと、気分はじわじわと下がっていきます。「ああ、やってしまった。どうしよう。困ったなぁ」と。

特に30代の働き盛りの方は、仕事の失敗や上司との関係性に関する反すうが起きやすい傾向があるといわれています。「考えるのをやめよう」と思っても、なかなかやめられないのがこのパターンの厄介なところです。※2

オフィス環境が心の波に与える影響

騒音、密なコミュニケーション、評価される緊張感。オフィスという空間は、意識していなくても心に相当な負荷をかけています。自分の内側だけでなく、環境そのものが感情の波をつくっているという視点も、忘れないでおきたいところです。

イライラや落ち込みが続くと、どうなるの?

仕事のパフォーマンス低下とミスの増加

感情が乱れた状態では、集中力や判断力がどうしても鈍りがちです。小さなミスが増え、それを自分で責め、さらに落ち込む——こういう悪循環にはまってしまっている方も少なくありません。

ある事務職の女性は「最近、確認したはずのことを見落とすようになって、自己嫌悪がひどくなっています」と話してくれました。ミスが増えたのではなく、心の余裕がなくなったことで注意が分散しやすくなっていた、というケースでした。

人間関係の悪化と孤立感

イライラが顔や態度に出てしまうと、周囲との間にじわじわと距離が生まれます。本人はそのつもりがなくても、気づかないうちに関係性がぎこちなくなり、「なんか自分だけ浮いてる気がする」という孤立感につながることもあります。

慢性的なストレスが心身に及ぼす影響

ストレスが長期化すると、不眠や疲労感、気分の落ち込みが慢性化してきます。厚生労働省の「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事や職業生活に関して強い不安・悩み・ストレスを感じる事柄があると答えた労働者の割合は82.2%に上るといわれており、約8割の働く人が何らかのかたちで職場ストレスを抱えている実態が明らかになっています。※3 だからこそ、早めに「整え方」を知っておくことが大切だと思います。

イライラ・落ち込みに振り回されないための改善法3つ

改善法① マインドフルネスで「気づく力」を高める

呼吸に意識を向ける、たったそれだけから

難しく考える必要はまったくありません。まずは、ゆっくり息を吸って、少し止めて、長めに吐く。それだけです。「今、自分はここにいる」という感覚に戻ってくることが、マインドフルネスの出発点といえるでしょう。

マインドフルネスに基づくストレス低減法(MBSR)を開発したジョン・カバットジン氏は、著書『マインドフルネスストレス低減法』の中で、呼吸への注意を「いつでも戻ってこられるアンカー(錨)」のようなものとして位置づけています。※4

オフィスでできる1分マインドフルネス

「瞑想する時間なんてない」という方でも大丈夫です。デスクで1分、目を閉じて呼吸と体の感覚だけに意識を向ける——それだけでも、感情の波に飲み込まれにくくなる効果が期待できるといわれています。継続が難しければ、まずは週に数回でも十分です。

改善法② 思考のクセをやわらかく見直す

自動思考に"気づく"だけでいい

イライラや落ち込みが起きたとき、「今、どんな考えが頭を流れているだろう」と少しだけ立ち止まってみてください。「また怒鳴られた」ではなく、「今、自分は"また怒鳴られた"と思っている」と観察する、そのわずかな距離感が大事なんです。

この"自動思考に気づく"というプロセスは、CBTの基本のひとつで、アーロン・ベック氏が提唱した認知モデルをもとにしています。※5

「事実」と「解釈」、切り分けてみると楽になる

「上司に注意された」という出来事と、「自分はダメな人間だ」という解釈は、まったく別物です。でも感情が揺れているときは、この二つがひとかたまりになってしまいがち。「起きたことは何か」「それに対して自分はどう意味づけしているか」を分けて考えるだけで、気持ちの揺れはずいぶん小さくなってくることがあります。

改善法③ 日常の習慣で心の波を整える

感情をため込まない「小さなリセット」の習慣

こまめな深呼吸、トイレに立つついでに少し歩く、お茶を一杯ゆっくり飲む。どれも地味に見えますが、こういった小さなリセットが積み重なることでストレスが蓄積しにくくなっていくといわれています。「特別なこと」を頑張るより、「日常の中に逃げ場をつくる」感覚のほうが長続きします。

仕事終わりの「切り替えルーティン」を持つ

帰宅後に軽くストレッチする、好きな音楽をかけながらシャワーを浴びる、日記に今日あったことを3行だけ書き出す。仕事モードから切り替える自分なりのルーティンを持つことで、落ち込みを引きずりにくくなるといわれています。何をするかより、「これをしたら今日は終わり」という区切り感が大切です。

オフィスで実践できるストレス対処とセルフケア

イライラしたとき、その場でできること

カッとなったときに一番効くのは、反射的に動かないことです。まず一呼吸おいて、返事や行動を数秒遅らせるだけで、後悔する言動はずいぶん減らせます。「怒りのピークは6秒ほどで過ぎる」というアンガーマネジメントの考え方は、現場でも広く参考にされています。※6

落ち込みが強いときの過ごし方

「気持ちを上げなきゃ」と無理をするより、「今は落ち込んでいる、それでいい」と一度受け止めることが、実は回復の近道だったりします。そのうえで、散歩に出る、温かいものを飲む、小さなことに集中する——そういうシンプルな行動が、じわじわと気分を引き上げてくれることが多いです。

周囲と無理なく関係を保つコミュニケーション

完璧に対応しようとしなくていいんです。「少しだけ丁寧に関わる」くらいの意識で十分。あいさつをきちんとする、相手の話を少し長く聞く——そんなことだけでも、関係性はじわじわと安定してくることがあります。

マインドフルネスを続けるコツと注意点

続かない理由と、その対処法

「効果が出ないな」と感じて挫折する方が多いのですが、多くの場合は効果を期待する気持ちが強すぎるケースです。マインドフルネスは、「今この瞬間に気づくこと」そのものが目的であって、何かを変えようとするものではありません。10分が難しければ3分でも、3分が難しければ1分でも十分です。

効果を実感するまでの目安

変化はゆるやかに、少しずつ現れてきます。「あ、さっきイライラしかけたけど、気づけた」という瞬間が増えてきたら、それが確かなサインです。劇的な変化より、こういった小さな「気づき」が積み重なることのほうが、実は長く続く変化につながるといわれています。

無理をしないための考え方

できない日があっても、まったく問題ありません。大切なのは続けることではなく、「また戻ってくること」です。三日坊主でも、四日目に戻ってきた自分を責めないでください。それが、長く整え続けていく秘訣だと思います。

まとめ|心の波をやさしく整え、振り回されない自分へ

感情はコントロールするものじゃなく、整えるもの

イライラや落ち込みを「完全になくす」というのは、現実的にはなかなか難しいことです。ただ、整え方を知っていれば、振り回される時間や度合いはずいぶん変わってきます。感情は戦う相手ではなく、うまくつきあっていくものだと思うと、少し気持ちが楽になりませんか。

小さな習慣の積み重ねが、じわじわと変化をつくる

特別なことをする必要はありません。今日から「一呼吸おく」「事実と解釈を分ける」「切り替えルーティンをつくる」——そのどれかひとつだけ試してみてください。心の波は、少しずつ、でも確かに穏やかになっていきます。

参考文献・引用元

※1 Beck, A. T. (1979). Cognitive Therapy of Depression. Guilford Press.

※2 Nolen-Hoeksema, S. (1991). Responses to depression and their effects on the duration of depressive episodes. Journal of Abnormal Psychology, 100(4), 569–582.

※3 厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_gaikyo.pdf ※4 カバットジン, J.(春木豊 訳)(2007).『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房.

※5 Beck, J. S. (2011). Cognitive Behavior Therapy: Basics and Beyond (2nd ed.). Guilford Press.

※6 安藤俊介(2016).『アンガーマネジメント入門』朝日新聞出版.

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