更年期の自律神経の不調にも【博士が教える】女性のセルフケアに香りが向く理由
「香り」の世界は、私たちが思うよりもずっと奥深い?!「香りを吸う」ということは、「楽しい」、「手軽」、「続く」を兼ね備えた健康法。薬物療法に関する専門国際誌にも登場する博士、財満信宏(ざいま・のぶひろ)さんの著書『香りをかぐという最強の健康法』(アスコム)より内容を一部抜粋して紹介します。
女性のセルフケアに香りが向く理由
アロマテラピーを含む「香り」というジャンルは、男性より女性の方が「好き!」と思う人が多い傾向にあると思いませんか?(近頃では私も含め、香りに興味がある男性もグッと増えてきた感じがしますが……)香りの世界観が〝女性的〞なイメージであったり、女性の方が身体の小さな変化に敏感だったりと、その背景には様々な理由があるかと思います。それに加えて、PMSや更年期症状といった、女性特有の悩みに効く香りがあることも、女性を惹きつける大きな理由の一つかもしれません。
実際のところ、産婦人科は、アロマテラピーが積極的に取り入れられている臨床分野です。もっとも、女性特有の疾患の緩和に、香りは昔から民間療法として用いられてきました。古代ギリシャ・ローマでは、月経不調などにハーブの香りが使われ、中世ヨーロッパでは、修道院などで女性のヒステリーや不眠の緩和にラベンダーが良いとされていたそうです。女性の心身の不調をケアする伝統的な手法として、古くから生活に根付いていた香りという存在。そのメカニズムが、今、少しずつ明らかにされています。女性特有の疾患の多くには、ホルモンバランスが密接に関わっています。女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という二種類があって、これらが交互に優位になることで、女性の身体のリズムを作っています。
ところが、加齢や生活環境の変化などでホルモンバランスが崩れると、身体に様々な不調が訪れてしまうことも。例えば更年期症状は、エストロゲンが減少することでホルモンバランスが乱れ、心身に不調が訪れるものです。PMSの原因は明確にはわかっていませんが、プロゲステロンのバランスが崩れることで引き起こされると考えられています。さて、このホルモンを分泌するのは、脳の視床下部という部分です。香りは視床下部にダイレクトに作用するため、ホルモンの分泌を香りによって調整できる可能性が指摘されているのです。女性特有のお悩みに効く香りで代表的なものといえば、クラリセージやゼラニウムなど。詳しくは第3章でお話ししますが、これらに含まれる香気成分の構造式がエストロゲンに似ていることから、更年期症状やPMSへの影響を調べるための実験が行われ、効果的であるという結果が出ています。
また、自律神経に作用するラベンダーなどの香りも、リラックス効果や気分の落ち込みを軽減する効果があるため、PMSに有効です。この点で言えば、β-カリオフィレンも然り。PMSを持つ女性を対象に、β-カリオフィレンの香りを嗅いでもらう実験を行ったところ、幸福感がアップするなどの結果が得られたという報告があります。
もう一つ、特に女性に多い「冷え」についても、香気成分が有効である可能性を示唆した研究があります。それは、中国の一部地域に生息するジャイアントパンダに関するものです。パンダといえば愛くるしいビジュアルで人気の動物ですが、そのジャイアントパンダは、馬のフンを身体に塗りたくるという奇妙な行動をとるそうです。この奇妙な行動の理由を中国の研究チームが調べたところ、パンダがフンを塗りたくるのは、11〜4月という寒い時期であることが判明したのです。
そして、パンダが興味を示すのは、いずれも馬が排泄してから10日以内の新しいものであることもわかりました。新鮮な馬のフンに含まれており、古いものにはない成分。それは、β-カリオフィレンでした。ジャイアントパンダは、β-カリオフィレンが含まれるフンで寒さを感じにくくしていたのです。この実験結果から、β-カリオフィレンが寒さへの耐性を高める可能性があることがわかりました。これは比較的新しい実験で、人間へのエビデンスを得るにはもう少し時間がかかりそうです。ただ、β-カリオフィレンが寒さへの耐性の効果を与えるとすれば、「冷え」に悩む人の助けにもなるかもしれません。
この本の著者…財満信宏(ざいま・のぶひろ)
近畿大学教授、博士(農学) 1978年、広島県生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。 三菱化学生命科学研究所、浜松医科大学分子イメージング先端研究センター、英インペリアルカレッジロンドン客員研究員(兼務)などを経て現職。血管疾患発症機構の解明と予防・治療法の確立を目指した研究を行っているほか、食品と人間、香りと人間の関係を明らかにする研究を行っている。 クローブや黒胡椒などに含まれる香り成分「β‐カリオフィレン(BCP)」の吸入によって血管保護効果が発揮することを発見。2022年、研究成果が薬物療法に関する専門国際誌“Biomedicine&Pharmacotherapy”に掲載され、注目される。
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