加齢で衰える「嗅覚」のトレーニング法とは?理学療法士が解説

 加齢で衰える「嗅覚」のトレーニング法とは?理学療法士が解説
AdobeStock
堀川ゆき
堀川ゆき
2024-06-11

加齢とともに嗅覚が低下すると様々な弊害が起こります。理学療法士の堀川ゆきさんによるアドバイス。アロマの香りを楽しみつつ健康な嗅覚を維持しましょう。

広告

嗅覚が低下すると

「嗅覚」(きゅうかく)とは、においを感じる力のことで、10歳代でピークに達したあと、男性は60歳代、女性は70歳代から衰えていきます。においは慣れてしまうと感じなくなることがあるため、ほとんどの人が自分の嗅覚の低下に気付きにくいようです。また、女性が男性よりも嗅覚の低下が遅い理由は、男性のほうが喫煙者が多いことや、女性のほうが化粧品や香水、調理などにおいに触れる機会が日頃多いことが関係しているようです。嗅覚が低下すると様々な問題が起こります。

例えば、

・食べ物が腐っていることに気が付かない(食中毒の恐れ)
・料理がおいしく作れない、おいしく感じない(栄養不足、塩分や糖分過多の恐れ)
・料理がこげているにおい、ガス漏れ、煙のにおいに気が付かない(火災や命に関わる恐れ)

このようなことが起こる可能性があります。また、認知症と嗅覚とも関わりがあり、嗅覚が低下している高齢者は、嗅覚が正常な高齢者より認知症になりやすく、寿命が短くなるともいわれています。

嗅覚トレーニングとは

今のところ、嗅覚の障害には決まった治療法はありません。コロナで嗅覚の異常症状が注目されるようになりましたが、自然に治るのを待つのみです。およそ7~8割の患者さんは、ひと月ぐらいで自然に治っていくことが多いようです。嗅覚が自然に治らない場合、意識してにおいを嗅ぐ「嗅覚トレーニング」が効果的であるという報告もあります。嗅覚トレーニングはドイツなどヨーロッパで最近注目されている治療法ですが、現時点で日本では嗅覚のリハビリは確立されていません。

方法は、朝と晩の1日2回、レモン、ユーカリ、バラ、クローブのにおいのエキスを数10秒ずつ嗅ぐというもので、嗅細胞の再生を促すと考えられています。これらのにおいに限らず、普段から自分で意識してにおいを嗅ぐこと自体も、嗅覚トレーニングになります。嗅ぐにおいは何でも構いません。好きな香水、コーヒー、お花、レモン、ニンニクでもいいですし、料理しながら食材や料理のにおいを意識して嗅いだり、入浴剤のにおいを楽しんだり、生活の中でにおいを意識してみましょう。ヨガクラスでアロマを焚くなどしてにおいを取り入れることは、嗅覚にプラスと言えるでしょう。

嗅覚の低下を防ぐために

嗅覚の低下を防ぎにおいを楽しむために、次の5か条が勧められています。

・鼻の病気があれば治す
・禁煙する
・週に3回は運動する
・意識して嗅ぐ習慣をつける
・鼻呼吸をする

まずは鼻の病気がある場合は治療が先決です。タバコは嗅覚を低下させる大きな要因となるため、禁煙しましょう。週に3回以上汗をかく程度の運動をすることが嗅覚低下を予防するという報告があります。ヨガや早歩きなど身近な運動を続けてみましょう。また、日常から意識してにおいを嗅ぐこと自体が嗅覚トレーニングになります。においがしなくても普段から鼻呼吸を心がけて、においを積極的に嗅ぐように心がけましょう。ヨガでは鼻から吸って鼻から吐く鼻呼吸が基本ですが、これも嗅覚の健康のためには大切なことです。ここで簡単な鼻呼吸の方法を紹介します。

画像
photo by Yuki Horikawa

普段何気なく行っている呼吸は、5秒間で吸って吐いているので1分間で約12回呼吸をしています。この倍の時間をかけて鼻呼吸することがポイントです。5秒間で吸って5秒間で吐きます。1分間で6回呼吸をすることになります。鼻呼吸が苦しければ無理せず少し口を開けて呼吸してください。

まとめ

ヨガとは無縁のような気もする「嗅覚」ですが、ヨガで身体を動かし、鼻呼吸して、アロマの香りを楽しむことで健康な嗅覚を維持できます。そして、普段の生活の中で積極的ににおいを嗅ぎ楽しむことが、嗅覚の回復や低下を防ぐことにもつながります。においは生活を豊かにしてくれるもの。においとともに健康に過ごせるといいですね。

※参考
NHK 健康ライフ「においが分からない 嗅覚障害」2020年12月
中野区医師会 医療トピックス「においを嗅ぐトレーニングをしましょう」2020年8月
きょうの健康「においが分からない『嗅覚低下』は認知症にも関係。原因や予防の方法を解説」2021年7月

広告

AUTHOR

堀川ゆき

堀川ゆき

理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

画像