貧困と虐待の中で育ち「稼げば幸せになれる」と信じた私が、無意識の思い込みに気づくまで|経験談

貧困と虐待の中で育ち「稼げば幸せになれる」と信じた私が、無意識の思い込みに気づくまで|経験談
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『私は私を幸せにできる 脳が作り出す「無意識の思い込み」にさよなら』(KADOKAWA)の著者で、マインドトレーナーである田中よしこさんにお話を伺いました。「お金があれば幸せになれる」「いい学校に行かないといけない」――こうした日常のネガティブな感情の裏には、私たちが自覚していない「無意識の思い込み」が潜んでいます。貧困と虐待のある家庭で育った田中さんは、スリランカの同僚との出会いをきっかけに、自分の考え方に違和感を抱くようになりました。過去の経験をどう捉え直し、本当の自分と出会うことができるのか、その道筋を語っていただきます。

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「無意識」とは

——本書のタイトルにもなっている「無意識の思い込み」とはどういったものでしょうか。

生きづらさは誰もが持っている「無意識」が原因です。無意識とは、私たちが自覚せずに行っている「思考や行動」であって、嫌だと思っていることでも、実は無意識が選びたくて選んでいるんです。

無意識は嫌なものを避けさせ、かつ歪んだ望み通りの現実に状態を動かす力を持っています。不安や罪悪感、恥など避けたいものがあって、それを直視するのはしんどいので、無意識が見ないようにしてくれる。でも避けたいものが見えなくなっていても、苦しさは残ってしまうんです。

無意識の中にある「こうしなければならない」「こうあらねばならない」、こういったものが無意識の思い込みです。

——本書では、脳科学の視点も交えて執筆されていらっしゃいますが、なぜ脳は無意識の思い込みを作り出すのでしょうか?

実は脳には「生かすこと」というシンプルな機能しかないんです。なので、危険だと感じとったら、やらない方がいいよ、もう考えなくていいよ、というふうに作用しているものです。

ですが、本当に自分が望んでいるものを「無理」だと言われると、すごく不愉快なものです。幸せホルモンが出にくくなってしまって、ストレスが出てくるという状態になります。

例えば「人ともっと関わりたい」と思っているのに、脳に「人と関わるのは危険だ」と言われると、1番欲しい望みが手に入らないので、不快で生きづらくなってしまう。

そうすると、胃腸が悪くなるなど、体にもダメージがきますし、思考力の低下にも繋がってしまいます。なので、まずは自分の無意識に気づき、どういうふうにしていきたいかを自分で決められるようにならないと、人は幸せを感じられないんです。

——日常で私たちがどのように無意識の思い込みに支配されているのか、具体例をいくつかお伺いできればと思います。

色々なケースがあるのですが、例えばお金はすごくわかりやすいです。「お金は使ったら必ず減っていくもの」という思い込みや、以前の私のように、「無条件の愛などないから、頑張って稼がないといけない」と思っていたり、「好きなことで稼ぐのは難しい」とか。

こういった何か引っかかるものがあったり、「これは難しい」「無理だ」と思うようなことは全て無意識の思い込みです。日常のネガティブな感情は、無意識が気づかせたいことが出ているという解釈になります。

ほかにも例えば、「いい学校に行かないといけない」といったことを親も信じていますが、もしかしたら必要ないことかもしれませんし、「仕事でこれができないとだめだ」と思うことも、自分が見ている無意識の設定かもしれません。

「無意識の思い込み」に気づいたきっかけ

——田中さんご自身の生まれたご家庭でのご経験と、「無意識の思い込み」に気づいたきっかけについてお伺いします。

生まれた家はお金がなくて貧困状態でした。母が宗教にハマっていて、私も母が信じる宗教を押しつけられていたんです。

身体的にも精神的にも虐待がある状態だったのですが、4人きょうだいの1番上の私だけが虐待されていて、私がありのままの自分を愛されることは不可能という思い込みがありました。

小さいときから、「殴られるか、殴られないか」という2択で色々なことを判断する思考の癖がついていて、それが当たり前になっていました。なので、人前でありのままの自分を出すのは危険だという脳の働きになっていて、生きづらかったです。

——どこかのタイミングで実家を離れたのでしょうか?

「このまま家にいたら、きっと幸せになれないだろう」と思って、18歳になって家を出ました。

「貧乏は良くない」という思い込みがあったので、とにかく仕事をして、稼ぐ自分になろうとしてきました。でも、お金があっても必ずしも幸せになれないということに、だんだんと気づいてきたんです。

——具体的にはどういった気づきだったのでしょうか。

とにかく経済力を持てたら幸せになれると信じているので、そこに日々全力で走っていました。でも目標をクリアしても、「もっと頑張らないといけない」と思うことを繰り返していて。

目標を達成してもすぐに自分で次に高い目標を設定してしまうので、虚しさのようなものが残っていて「幸せになるってこんなにきついことなのかな」と悩んでいました。

このまま過ごしていくと、幸せから遠ざかってしまうのでは、という感覚はありました。でも、「稼げば幸せになれる」としか考えたことがなかったので、信じているものがなくなったときの生き方がわからなかったんです。

その生き方を続けるしかないという思考回路だったので、虚しいことに気づきながらも、やめられない、という葛藤を持って生きていました。

——その後、どんなターニングポイントがあったのでしょうか。

海外出張に行く機会があって、30代のスリランカの同僚と出会いました。一緒にご飯に行ったときに、生い立ちを聞かせてくれたのですが、彼は内戦の中で育ってきたのに、「今の状況にすごく感謝して生きている」と穏やかに話していたことに衝撃を受けました。自分より過酷な状況で生きてきた人に直接会うのは初めてだったんです。

そのときに、「この人はきょうだいが殺されるとか、私よりもきつい経験をしていながらも感謝できているのに、自分はなぜ不満ばかり言っているのだろう」と、初めて自分の考え方に違和感を抱きました。

それまでは「ああいう環境だったんだから仕方ないじゃん」と、無意識のうちに「私には非がない」というような思考パターンになっていて、その考え方を変えようと思っていませんでした。でも、彼の話を聞いてからは、「どうして彼はできていて、私にはできていないんだろう」と思うようになって、自分の中に原因があるという見方に変わりました。

当時はメンタルヘルスの問題への向き合い方がわからなかったので、そこから「無意識の思い込み」に気づくまでには、何年も時間がかかっているのですが、彼との出会いは考え方が変わる大きなきっかけになりました。

生まれた環境をどう捉え直すか

——生まれた家の環境自体は、子どもからしたら選べないですし変えられないと思うのですが、現在どのようにご自身の中で整理していらっしゃるのでしょうか。

今は過去の経験すべてを使って仕事をしているので、「みんなのお役に立てる出来事」という解釈になっています。

「こうなりたい」と思ってすぐに実行できれば、人は悩まないと思うんです。実際には、納得できない思いがあって消化が難しかったり、つらい経験をどう自分は受け止めて生かしていけばいいのか、というところに到達できなかったりします。

私自身、そういった経験を全部しているからこそ、クライアントさんにお伝えできるのはすごくよかったと思っています。

4人きょうだいで私だけ虐待されていて、下3人は自己肯定感が高く育ったことも今は「4人とも虐待を受けていなくてよかった」と思っています。

——「どうして自分だけ」と思ったことはなかったのでしょうか。

もちろん以前は「なぜ私だけ」と思っていました。妹は8歳離れていて、1番下なので、1番溺愛されていましたし、8年違うと一番貧乏だったときから、家計も立て直して、普通の家のレベルぐらいになっていたので。

ただ、「無意識の思い込み」に気づいてからは、下のきょうだいたちは虐待を受けなくてよかったと思えるようになりました。

——「家庭」という選べなかった状況で受けてしまった影響はありつつも、そこからつらい気持ちにとどまらないで、自分の人生を進んでいけるのでしょうか。

私もいろいろな押しつけを受けて育ってきたので、自分にもそのフィルターがついてしまい、本来の自分を出せていなかったから生きづらかったのだと思います。

なので「本当の自分はこういう人なんだ」「私はこれがやりたかったんだ」と気づくことで、自然と人生が好転していった方々をたくさん見ています。

「自分のことがわからない」というのが一番の生きづらさの原因だと私は思っています。今はつらいかもしれませんが、本当の自分と巡り会えたら、それまで自分が執着してきたお金や名誉、ポジションなどが気にならなくなるくらい、いい人生を送れるようになる。そんな未来を歩いている人がいることもお伝えしたいです。

※後編に続きます。

『私は私を幸せにできる 脳が作り出す「無意識の思い込み」にさよなら』(KADOKAWA)
『私は私を幸せにできる 脳が作り出す「無意識の思い込み」にさよなら』(KADOKAWA)


【プロフィール】
田中よしこ

マインドトレーナー、株式会社コレット代表取締役。
自分自身が生きづらさを抱え、本当の自分と向き合った30年間の経験をベースに、心理学・脳科学、コーチングの知見を取り入れ、「自分を本当に知る」ことをメソッド化。
個人セッションやセミナーなどを中心に、潜在意識を整え、本心と「未来の理想の思考」を引き出す方法を伝えている。現在まで、約7000人以上の人たちの、本当の自分らしさを手に入れるサポートをしている。

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