セリーナ・ウィリアムズも参入し話題。アメリカでますます注目が集まる「痩せ薬」
近年アメリカでは、糖尿病治療薬を用いたダイエットの効果にますます注目が集まっています。今夏、影響力のある世界的セレブが自身の体験を公表し、広告塔になったことで、さらに大きな話題になりました。
アメリカでますます注目が集まる「新たな減量薬」
アメリカでは近年成人の肥満率が増えていて、それに伴う合併症・医療費の増大も指摘されています。「肥満」が公衆衛生上の課題の一つになっているこの国では、肥満に悩む人々の間で、GLP-1(2型糖尿病治療のための医療用医薬品)をダイエットに使う動きやその効果がますます注目されているのです。
そもそもアメリカにはどのくらい肥満の人がいるのでしょうか。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、肥満とはBMI(Body Mass Index:ボディマス指数)が30.0以上、重度の肥満とは40.0以上の場合と定義されています。この定義に基づけば、一例として身長160cmの人なら体重が76.8kgを超えると「肥満」と見なされることになります。
これをもとにすると、アメリカの成人の41.9%が肥満で、9.2%が重度の肥満であると言えるでしょう(数字は2017〜20年3月の期間で24年発表)。つまり数にすると成人の肥満人口は約1億人、重度の肥満人口は2200万人以上にも上り、近年この数は増加傾向にあるということです。そんな中で冒頭で書いたGLP-1を用いた減量に注目が集まっているのです。GLP-1薬はウゴービ(Wegovy)やマンジャロ(Mounjaro)などたくさんの種類がありますが、知名度がもっとも高いのはオゼンピック(Ozempic)です。
オゼンピックは17年に米国食品医薬品局(FDA)に承認された2型糖尿病治療薬です。「オ〜オ〜オ〜オゼンピック、オ〜オ〜オ〜」という軽快なリズムに乗せた広告キャンペーンが全米のテレビ、YouTube、ソーシャルメディアで大規模に展開されていて、GLP-1を使ったことがない人や使用予定のない人でも、この音楽が流れると何のCMかがわかるでしょう。「アメリカでは知らない人はいない」と言っても過言ではないほど、このブランドの認知度は高いです。
【アメリカで大々的に流れているオゼンピックのTVCM】
CMでは「オゼンピックは減量薬ではありません」という文言や一般的な副作用(吐き気、嘔吐、下痢、便秘など)などが小さく注意書きされているものの、「2型糖尿病の成人は最大14ポンド(約6.3キログラム)減量」と大きく謳われています。
歴史的に見ると新たな減量薬とも言えるGLP-1は、アメリカのみならずヨーロッパ諸国など、世界中で急速に普及していることが報告されています。世界中で肥満率が上昇するにつれ、GLP-1人気が高まっていることの理由の一つとして「減量の難しさ」が関係するのではないでしょうか。米ピュー研究所の最新の調査では、約3分の2(65%)のアメリカ人が減量およびその後の体重の維持は意志の力だけでは不十分と回答しています。思うように減量ができない人にとって、GLP-1を用いたダイエットは頼みの綱ということなのでしょう。
*Pew Research資料
減量薬の売り上げは右肩上がり
実際にオゼンピックなどの製薬会社であるノボ ノルディスクの売り上げは近年右肩上がりです。ピュー研究所の資料(24年)によれば、(ノボ ノルディスクの)オゼンピック、リベルサス、ウゴービを合わせた23年の売上高は約211億ドル(約3兆1650億円)に達しました。これは同社の同年の総売上高の3分の2に当たり、71%はアメリカでの売上高ということです。
セリーナ・ウィリアムズも広告塔に
減量を目的としたGLP-1の使用を普及させるため、25年8月21日以降、米テレヘルス(遠隔医療)企業のロ(Ro)が、テニス界の大スターであるセリーナ・ウィリアムズをアンバサダーとして起用し、大規模な広告キャンペーンを展開中です。都市部の駅などでは、セリーナがGLP-1を腕に打っている写真が掲載された広告を大々的に見かけるようになりました。グランドスラムで23度の優勝を誇る世界的な元プロ選手とあり、この広告が大衆に与える影響力は計り知れいないです。
Roには「今日からGLP-1を使った減量を始めましょう」「GLP-1を処方された場合、1年で15~20%の減量」と書かれている
彼女自身が第二子を出産後に体重減少に苦労したそうですが、GLP-1を使用することで約31ポンド(14キロ以上)の減量に成功したとメディアで語り、スリムになった姿をイベントで披露しています。またロイターによると、夫で実業家のアレクシス・オハニアンはロ社の投資家および取締役だといいます。
痩せ薬の使用人口は全米全体で見ればまだ限定的
とは言え、痩せ薬を使用したことがある人はアメリカでも現時点でまだ少数派と言えるでしょう。例えば全米の8793人を対象としたある調査で、減量のためにGLP-1を使用したことがあると答えたのは12%未満(8人に1人程度)で、もっとも使用している年代は50歳から64歳でした。調査対象者の74%は「使用予定がない」と答えています。
その一方で、肥満人口の増加やセレブなど社会的に影響力のある広告塔の参入などで、この分野の成長への期待はますます高っています。ロイター(25年5月)はこれらの治療薬の年間世界売上高予測について、供給量の増加や使用範囲の拡大の可能性から、2030年代初頭までに約1500億ドル(22兆5000億円)規模に引き上がるだろうと見ている専門家もいると報じています。
参照
CDC(Adult Obesity Facts)
CDC資料
Ozempic Commercial (2024)
TVCM
Pew Research Center
減量薬人気調査
Reuters
セリーナ起用記事
市場予測
Rand
使用率調査
*GLP-1薬は2型糖尿病の治療のための医療用医薬品です。美容や体重管理の目的で安易に使用することは避け、必ず医師や専門機関による診断と慎重な判断のもとで使用する必要があります。
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