偏差値30台の娘が成績向上。整理収納で変わった学習環境と親のサポート術【体験談】
『理系夫の減らせる!整理収納術』作者のくぼこまきさんへのインタビュー後編です。偏差値30台だった娘さんの成績向上の鍵は、整理収納の考え方を学習環境に応用したこと。教材の仕分けから始め、何をすべきか把握し、くぼさんご自身にとっても負担のない方法でのサポートの工夫をしました。また地震や火災の経験から、日頃より物が少ない状態を保ったり、必要な物の場所を把握したりすることが、快適さだけでなく安全な暮らしにもつながる実感を得たとのことです。
娘の偏差値が30台。改善のために始めたこと
——整理収納によってお子さんの成績が上がったとのことですが、もともとお子さんは勉強が苦手だったのでしょうか。
そもそも私も学生時代ずっと成績不振だったんです。中学のときは10段階評価で主要教科は大体4か5、高校でも成績は下の上くらい。家庭での学習習慣は全くありませんでした。
親も結果だけ見て怒ることはありましたが、学習の過程にはあまり興味がなかったように思います。自分自身、ちゃんとやっていなかったという実感がありました。
娘は小学校のときは本当にのんびりしていましたが、中学からテストが増え、塾に通うようになってからはプリントの配布も増えました。ただ、塾に通っていても成績がすごく悪くて……。模試を受けたところ偏差値は30台でした。
「このままでは娘は私と同じ道を歩んでしまう」と危機感を覚えました。
——改善のために、何から始めたのでしょうか?
今子どもが何をやっているのか把握するところからです。プリントは私にとってただの紙の山だったのですが、塾のものなのか学校のものなのか、その分類から始めたんです。
そうしていくうちに、整理収納と重なる部分が多いと感じました。整理収納の基本は、対象の物を全部出して、今自分の家に何があるのかを把握することなんですね。
それで娘と話しながら、それぞれの教材やプリントをどう使っているのかを確認していきました。使わないものは奥にしまっても構わないのですが、いつも使うものはすぐ取り出せる場所に置く必要があります。
教材の置き場所を何も意識していなかったので、「このプリントって何に使っているの?」「これは今後どうするの?」と一つずつ確認していく作業をしました。
——膨大な教材の仕分け作業は大変そうです。
子どもも面倒だったと思いますが、整理収納と同じで、もう使っていないもの、使っていないけれど保管が必要なもの、今も使っているものなどの仕分けは本人に聞かないとわかりません。
整理していく中でわかったことは、うちの娘の場合、授業で今日何をやるのかという事前確認が全くできていなかったことです。予習が必要なものや小テストに対しての準備を全くしていませんでしたし、授業の復習も0。ただ塾に行っているだけの毎日だったとわかりました。
また塾のカリキュラムを私自身も確認できていませんでしたし、娘が何ができているか、点数は何点取っているのかも全く知りませんでした。その辺りは私自身も反省しています。
学習環境の整備と工夫
——お子さんの勉強にどう関わっていったのですか。
前提として、娘には勉強の習慣がなく、何をしたらいいかわからなくて、ただ机に向かっているだけの時間が結構ありました。
「勉強してるの?」と声をかけると「してる」と言うのですが、鉛筆の芯が上になっていることもあって(笑)。
まずは何をすべきか知るところからスタートしました。クリアファイルにパンパンにプリントが挟まれていて、どの順番で勉強したかもわからないので、「授業で最初に使ったのはどれ?」「これでどんなことをやったの?」と一つずつ確認し、理解できたのか、できてないのかを聞きました。
塾で渡される問題集があって、「授業でわからないことがあったら自分で復習してください」と言われていたそうですが、全くやっていなかったそうです。でも問題演習をせずにテストで点をとるのはまず無理ですよね。
——問題演習の自宅学習については、どう工夫されたのでしょうか?
ヒアリングをしていく中でわかったのですが問題集を開きながらノートに答えを書くよりも「書き込む問題集の方がやりやすい」と言われました。でも間違えたところを振り返る必要がありますよね。
直接書き込むと、答えが見えているからやり直しになりません。最初は毎回コピーをとっていたのですが、だんだんと私も面倒になってきました。
そこで、私が面倒にならずに娘をサポートできる方法を考えようと思いました。娘の要望を聞きながら、どういう勉強はやりづらくて、どういう方法ならやりやすいのかを全部書き出して整理してみたんです。
その中で、私がサポートできそうな整理整頓された学習環境を一緒に考える作業をしました。勉強習慣が整うまではいろいろと試して、娘に感想を聞きながら進めていきました。
我が家は狭いので、紙類でスペースが溢れかえってしまっていました。そこでこれ以上紙を増やさないために、スキャナを活用しました。今のスキャナはOCR機能(スキャンしたものをテキストデータに変換する機能)があるので、テキスト検索もできます。スキャンしたファイル名も工夫して、子どもが希望したときに必要なファイルをすぐに出力できるようなルール作りを整えました。
勉強のペースができるまでの間は、その日の授業で使う範囲のオリジナルノートを作っていました。授業のテキストをもう1冊ずつ買ってスキャナでデータ化し、ルーズリーフに印刷しました。テキストの中に出てくる問題の下には空白を作って直接書き込める形式にしたものです。
——勉強の環境や学習方法をサポートされたのですね。
口コミで評判の良い問題集を買って渡している親御さんは多いと思いますが、渡したからといって子どもがやるとは限りません。勉強するまでの道筋も一緒に考えるために、何が原因で勉強できなかったのかを一度整理することが必要です。
娘自身も勉強がしやすくなってくるので、授業がだんだんわかるようになり、得意な分野ができてきました。
漫画では一話でまとめていますが、短期間で成績が伸びたわけではありません。少しずつ、スモールステップを上がっていくような状態でした。最終的に、得意なものが増えていって、良い点が取れるようになったんです。一気に完璧にできるわけではないというのも、整理収納と同じですね。
人それぞれ自分に合った整理収納方法が違うように、勉強方法も人それぞれ相性がある。娘には、何がやりやすいのか、何が向いているのかを聞いて洗い出し、その中でやりやすい方法を探しました。
今回ご紹介した方法も、うちの娘と私自身がサポートしやすいやり方を考えたもので、絶対にこれが正解というよりは、「ヒントになれば」という気持ちです。「これをやれば成績が上がる」というものではなく、何か問題にぶち当たっても打開策はきっとあるということをお伝えしたかったんです。
——お子さんがやっていることを把握し、サポートしていくことは大変だと思うのですが、いかにやりやすくするかという仕組みを整えたことで、日常としての負担を減らせているということでしょうか。
そうですね。とにかく私自身が面倒にならないようにすることは意識しました。私も仕事をしているので、一緒に横にみっちりついてやるなんてことは絶対に無理です。
子どもが求めていることで、かつ私が短い時間でサポートできる方法を考えるのが大変でした。
ただ、「こうしたい」というゴールがあるのであれば、そこまでの道筋をできる限り近づけていくことは可能だと思います。
整理収納でも、しまうことのできないものがあるという課題があるならば、何が問題かを洗い出します。そして物理的に必要ないものを減らして、新しくそこにしまうという解決をしていきます。
「全体像を把握し、問題点を分析して、解決策を見つけていく」という整理収納の考え方が、子どもの学習サポートにおいても私にはマッチしていました。
地震や火災を通じて感じた整理収納の重要性
——地震や火災を通じて整理収納の重要性を感じたご経験があったそうですね。
2024年のお正月、能登半島地震があった際に、ちょうど旅行に行っていたんです。以前、地震体験車で震度7を体験したことがあったのですが、実際の揺れは自分が考えていたものとは全く違っていて、「激しい」という言葉では表せないぐらいでした。
立てないというより、安定して座り続けるのが難しくて、座っていてもひっくり返っちゃうぐらいの揺れでした。
泊まっていた旅館の部屋は、テレビがあり、床の間には絵と花が飾られていて、テーブルの上にお茶と少しお菓子があるくらいのすっきりした空間でした。でも揺れが少し収まったときに目を開けたら、部屋の中がめちゃくちゃになっていたんです。
テレビは遠くに吹っ飛んでいて、コードが断線した状態でした。額縁に入った絵や花瓶も全部落ちてバラバラになっていました。天井についていたエアコンのホコリがごっそり落ちてきたり、ふすまも全部外れて倒れていて、経験したことのないような状態でした。
——物の少ない旅館でもそんなことになるのですね。
自宅は旅館の100倍ぐらいの物があると思うので、同じような地震が起きたらどうなるんだろうと不安になりました。
それもあって、私は推し活グッズを飾ろうという気が全くなくなりました。大事なものだからこそ、大地震があったときに壊してしまうことを避けたい。
それと、腰よりも低い位置に置いてあった金庫も、遠くにに飛んでいたので、低い位置に置いているから大丈夫なんてことはないのだと思いました。
——火災は何があったのですか。
住んでいるマンションの1階にある店舗でボヤが起きたことがあったんです。うちはマンションの上階の方に住んでいるのですが、黒い煙が上がってきていました。
避難するとき、私と娘だけが家にいました。もし以前のように家が魔窟状態だったら、何を持っていったらいいかわからずパニックになって、全く必要のない物を持って避難していたと思うんです。
でもそのときには、何が必要で、これは絶対持っていくべきだというものを、場所も含めて把握していました。なので、手早く準備して、娘にも「これは持ったほうがいいよ」とすぐに言えたんです。娘も言われた物の場所をわかっていたので、スムーズに避難できました。
——日頃の整理収納が大切になってくるのですね。
地震では物が少ない状態をキープすることが大事だと思いました。大事なものを飾っていたとしても、それが自分や家族を傷つける凶器になる可能性もある。一番大事なのは人命なので、人命を守るためにも、物をどこに置くかをよく考えるようになりました。
能登の地震では、避難先が地元の小学校だったのですが、小学校も目も当てられないような状態になっていました。お正月だったので学校もお休みでしたが、もし子どもがいたら危なかったと思います。
火災に関しては、何がどこにあるのかをすぐに思い出せるようにしておくことの大切さを感じました。
快適に暮らしたり、効率よく暮らすという点だけじゃなくて、安全に暮らすという点でも、防災の観点を整理収納に入れることの重要性を感じた出来事でした。
【プロフィール】
くぼこまき
クルーズ・ビュッフェ好き漫画家。
著書に『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』『理系夫のみるみる片付く!整理収納術』『東京23区 ご利益! 参道めし』『クルーズ、ハマりました! 』等
■公式サイト
http://www.kubokomaki.com/
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