面倒の壁は今日が一番低い。「明日やろう」を卒業する整理収納の考え方【経験談】
『理系夫の減らせる!整理収納術』(はちみつコミックエッセイ)作者のくぼこまきさんにお話を伺いました。一度片付けた家も、生活の変化で物は増えていくもの。「面倒の壁は今日が一番低い」と語るくぼさんは、明日に先送りせず狭い範囲から片付け始めることを勧めます。整理収納は「映える部屋」とは別物で、使いたいものがすぐ取り出せる「暮らしやすさ」を追求する設計のような考え方とのことです。
一旦片付けたものの、新たな課題が
——前作『理系夫のみるみる片付く! 整理収納術』にて、家の片付けや整理収納の過程を描かれていました。一度片付く仕組みができたうえで、どんな課題が出てきたのでしょうか?
以前の課題は物がどんどんと増えていくのに捨てられず、家に何があるかわからなくなることでした。片付けたい意欲はあったのですが、どうしたらいいかわからなかったんです。
そんな中、ただの理系エンジニアの夫が整理収納アドバイザーの資格を取得し、家の片付けを先導して行ってくれました。そして、家の中に何があるか把握する方法を身につけられたので解決することができたんです。全部出してみて、分析し、何を残して何を捨てるかを見極められるようになりましたし、どう収納したらいいかもわかるようになりました。
そのようにして、一度片付いたと思っていたのですが、生活が変わる中で物が増えていきました。たとえば、娘の塾のプリントやテキスト、あと私の推し活グッズもですね。
増えたものの片付けや収納が考えられなくなり、また散らかってしまいました。
——生活スタイルが変わり、気づいたら物が増えているということはよくあることですよね。
生きている限り、ずっと同じ状況で暮らしていく人は、ほとんどいないと思うんです。結婚や家族が増えるとか、家族も年を取っていく中で、必要なものは変化しますよね。
新しく必要になった物があるのと同時に、必要なくなったり古くなったりする物もあります。そういったものを定期的に見直していかないと、物は増えていく一方です。
ライフステージとともに必要な物も変わっていくので、整理収納はずっと続いていくものだと改めて感じました。
——片付けや整理収納に必要なことを知ったうえでも、手放すことが難しかった、ご自身の思考の癖や習慣はありましたか。
「もったいない」「いつか使えるんじゃないか」という思いはなかなか手放せませんでした。急に買ったときのことを思い出して、使ってなかった期間のことを忘れちゃうんですよね。
使ってなかったのには理由があって。例えば洋服だったら、一度着てはみたけれど、そんなに似合わなかった。でも、返品するのも面倒で放置していたなんてことはありますよね。
粗大ごみのように処分が面倒な物や、捨て方を調べないとわからない物もあります。そうして「また今度」と先送りにしていくと、どんどんと物が増えていってしまいます。片付けの最初の一歩を踏み出すことがなかなかできないことが、悪い癖だと思います。
——くぼさんは、詰め込むことが得意とも描かれていましたね。
そうですね。テトリスが好きで、隙間なく入れるのが得意です(笑)。
ただ、入れるだけ入れてしまうと取り出すのが大変になってしまいます。取り出しにくいので、手前の物ばかり使おうとしますし、結局はそこに何が入っているか把握できなくなってしまうんです。
ある場所に詰め込んで収納することは、ぱっと見は片付いているのですが、実際には片付いていないのと同じだと思います。
「面倒」を乗り越えるために
——作中でも「面倒」という言葉がたくさん出てきていました。片付けや整理収納を先送りしてしまうのは「面倒だから」という心理があると思うのですが、乗り越えるためにはどうすればいいのでしょうか?
何かしら自分でアクションを起こし、一歩踏み出さないと何も変わりません。何か問題が起きたときも、そのまま放置していて解決することって、ほとんどありませんよね。
「面倒の壁」は、今日が一番低いものです。日ごとに高くなっていくので、明日の方がもっと面倒になってしまいます。「明日やろう」をどのくらい繰り返してきたかを思い出していただきたいんです。
「今日が一番低い」と意識して、踏み出しやすい簡単なところからまず片付け始めてみてください。
——前作でも「一日で全て片付けようとしない」ということを描かれていましたね。
整理収納アドバイザー1級を取った夫からは「一日で全てを片付けられることは絶対にない」と何度も言われました。
何年もかけて散らかし続けてきたものが、一日で全て解決し、雑誌に載るような家になるなんてことは、まずあり得ないと思います。
とはいえ、何かしら「片付けた!」という実感を得られないと、続かないものだとも思うので、狭い範囲を決めて少しずつ達成感を得ていくことをオススメします。
使っていない文房具や、着ていない服などをゴミ袋に集めてみると、いらない物でこれだけの体積を占めていたことに驚きます。
——捨てる量が可視化されて、生まれたスペースがわかると、やる気が出てくる気がします。
そうですね。玄関から始めることはオススメで、底が擦り減ってしまった靴や、ボロボロになっている靴、ゴムの部分が劣化してしまった靴など、履いていない靴が出てきやすいです。
靴は1足でもスペースを取るので、2、3足捨てただけでも、それなりのスペースが生まれてスッキリすると思います。
そうやってスペースごとに進めていくと、片付けのコツが掴めるようになってくると思います。
整理収納ができている部屋と「映える部屋」の違い
——「整理収納」と「映え」といったものは、どう違うのでしょうか?
前作で、家の中の写真を本の中に何枚か載せたのですが「全然おしゃれじゃない」「憧れる家ではなかった」といったことがレビューで書かれていました。
その感想はおっしゃるとおりだと思いました。しかし、実は整理収納とおしゃれな部屋づくりは別のものなのですよね。
2つの違いは何かというと、整理収納は、家に何があるかを把握し、必要なものがすぐに取り出せたり、出したものがすぐに片付けられる環境を作ること。また、家の中で人間が動ける空間を作るために、物の動線を確保することです。
家の中で快適に過ごすために、使いたいときにすぐに使える方法や配置を考えます。毎日使う物はすぐに出してしまえる場所にないと不便ですし、1年に数回しか使わない物がすぐ手に届く場所にあるのは非効率的ですよね。
限られた時間を有効に使うためにも、物をどこに置くかを考えるという設計の考え方に近いのだと思います。夫はメカエンジニアで設計の仕事をしているのですが、「メカ設計と整理収納の考えが近い」と話していました。
一方インテリアにこだわったり、自分の好きなもので飾りつけをしたり、整理された空間を綺麗に見せることが「映え」なのだと思います。
——整理収納は「暮らしやすさ」の話をしているのですね。
荒れた土地を耕作できる土地にする作業が、物を探したり取り出すのにかかる時間を減らす「整理収納」にあたるのだと思います。そして、花の種を植えて育てていくことが「映える部屋」や「ていねいな暮らし」というイメージです。
もちろん、「映え」や「ていねいな暮らし」で行っている、より心地よい生活や、人に見せたくなるような部屋に整えていく工程を楽しむことはすごく素敵だと思います。
※後編に続きます。
【プロフィール】
くぼこまき
クルーズ・ビュッフェ好き漫画家。
著書に『お金の不安すっきり解消! 理系夫の家計大作戦』『理系夫のみるみる片付く!整理収納術』『東京23区 ご利益! 参道めし』『クルーズ、ハマりました! 』等
■公式サイト
http://www.kubokomaki.com/
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