「相手のちょっとした表情が気になる」…脳は「現実」を見ていない?最新脳科学から“理由のない不安”について考察する
なぜ、人は理由もないのに不安になるのでしょうか。「なんとなく悪いことが起きそう」「相手のちょっとした表情が気になる」今回は、「予測符号化」という理論から解説していきます。
人は何故不安になるのか
「なんとなく悪いことが起きそう」「相手のちょっとした表情が気になる」・・・こういう “漠然とした不安” に押しつぶされそうになった経験、ありませんか?多くの人は「性格のせい」「私が弱いから」と自分を責めてしまいます。しかし、脳科学の最前線では 別の答え が出ています。不安とは、あなたの心が弱いから起きるのではなく、「脳の計算ミス」にすぎないと、最新の脳科学は説明しています。本記事では、カール・フリストン博士らの「予測符号化」という理論を、心理師の視点から解説します。
1. 脳は「カメラ」じゃなくて「予言者」
脳は目に見えたものを、そのまま受け取っているわけではありません。脳は、情報を受け取る前から「次はこうなるはず!」という予測を作り続けています。例えば階段。段差をいちいち確認しなくても足が出ますよね?あれは脳が先に“予言”しているからです。
つまり私たちは、ありのままの現実を見ているのではなく、脳がシミュレーションした“予測”を見ている。世界は “脳の予言フィルター” を通して知覚されているのです。
2. 予測が外れたときは不安になる
では、その予測が外れたらどうなるのでしょうか。階段があると思って足を出したのに、実は段がなかった…。足が「ガクッ」として心臓がドキッと跳ねますよね。このとき脳では、「予測エラー」=警報が鳴っています。
「メールはすぐ来るはず」→来ない
「上司は挨拶を返すはず」→返さない
こうした“予想外”が起きると、脳はサイレンを鳴らし、そのサイレンが「不安」ともいえるでしょう。
3. 慢性的な不安は「悪い予言を直さないバグ」
本来はすぐ消えるはずのアラート。でも不安が続くとき、脳のシステムに“バグ”が起きています。それは、「悪い予測」を修正せず、ひたすら信じ続ける状態。たとえば、「私はいつも人に嫌われる」という強いスキーマ(思い込みや信念)があるとします。相手が笑顔だったとしても、「これは作り笑いだ」「本当は嫌なんだろう」と、脳が“自分の予測の方を採用”してしまう。
その結果、現実とのズレ(予測エラー)がずっと続き、脳は延々と不安サイレンを鳴らし続ける。これが慢性的な不安や気分の落ち込みに繋がっていきます。
4. 脳の「不安サイレン」を止めるには?
脳の予測エラーを消す方法
方法①:現実を変える(行動する)
上司の顔色が気になり不安 → 声をかけてみる
連絡が来なくて不安 → 電話で確認する
行動することで現実を動かし、脳のエラーを強制終了させます。
方法②:予測を更新する(考え方を変える)
現実を変えられないときは、古い予測モデルをアップデートします。
「連絡が遅い=嫌われた」
↓
「忙しいだけかも」に書き換える
現実は同じでも、脳内の“予測と現実のズレ”がなくなるため、不安は小さくなります。これがCBT(認知行動療法)の仕組みそのものです。
不安を感じるのは、あなたの脳が未来を一生懸命シミュレーションしている証拠です。予測が外れることで不安でいっぱいになっているのなら…「おっと、脳の予測が外れたな。これはデータを更新するタイミングだ。」と捉え直せると、世界との付き合い方がとてもラクになります。脳の予言を柔軟にアップデートすること。それこそが、不安とうまくつき合う鍵かもしれません。
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