なぜ、考えても考えても抜け出せないのか? 反芻思考の「悪循環」を断ち切る方法とは|心理師が解説
ぐるぐると考え続ける反芻思考に悩んでいませんか?反芻思考と抑うつは相互に影響しあいます。今回は反芻思考から抜け出す方法をお伝えします。
1. 「反省」ではなく「反芻」
過去の失敗を悔やむ「反省」は成長のために必要です。しかし、「なぜ、あんなことを…」と同じことを繰り返し考え続け、気分が落ち込む一方なら、それは「反省」ではなく「反芻(はんすう)思考」かもしれません。反芻思考は、ネガティブな出来事や感情を何度も心の中で「噛み直し」てしまうことを言います。
2. 反芻思考と抑うつ「負のスパイラル」
反芻思考と抑うつは、相互に影響し合います。反芻はネガティブな感情を何度も再体験させ、気分を落ち込ませます。「なぜ私はダメなんだろう」と「なぜ」ばかりを問うため、具体的な「どうするか」という問題解決に進むエネルギーを奪ってしまいます。そして、一度抑うつ的になると、それがさらに反芻を強固にします。
3. 反芻している時は意識が「今、ここ」にいない
「あの時こうすれば…」と過去のことをいくら後悔しても、過去は絶対に変わりません。また、「もし、こうなったらどうしよう…」と未来のことをいくら心配しても、未来がどうなるかは誰にも分かりません。私たちが唯一、手を加えられるのは、たった今、この瞬間の「現在」だけです。
4. 反芻思考を断ち切る3つの方法
どうすれば意識を「今」に取り戻せるのでしょうか。
① 感覚に意識を向ける(マインドフルネス)
反芻が始まったと気づいたら、「思考」ではなく、「身体の感覚」に注意を向けましょう。
例:
• 足の裏が床に触れている感覚
• お尻が椅子に触れている圧迫感
・呼吸の感覚
ポイントは、浮かんでくる思考を無理に消そうとしないことです。「あ、また考えてる」と気づいたら、再び感覚に意識を戻す。これを繰り返すことで、思考と距離を置く練習になります。「考えないようにする」のではなく、「感覚に注意を戻す」ことを意識してください。
② 具体的な行動に移る
「行動」によって物理的に思考を中断させることです。意欲が湧かない時こそ、「5分だけ」「これだけ」と決めて、あえて小さな行動を起こしてみましょう。
例:
• 立ち上がって、コップ一杯の水を飲む
• シンクにあるお皿を1枚だけ洗う(水の冷たさや泡の感触に集中する)
• 窓を開けて、3回だけ深呼吸する
ポイントは、行動の「結果」ではなく「行動すること自体」を目的とすることです。行動が始まると、脳のスイッチが入り、次の行動への意欲が少し湧いてくることもあり、より切り替えやすくなります。
③ 思考の合間に「ふーん」と相槌を打つ
反芻思考に苦しむとき、私たちは「浮かんでくる思考=事実」だと信じ込みやすくなります。ネガティブな思考が浮かんできたら、それを深刻に受け止めず、心の中で「ふーん」等と適当な相槌を打ちましょう。
例:
思考:「私はなんてダメなんだ…」
相槌:「ふーん」
思考:「使えないやつって思われたかも…」
相槌:「そうねー」
連なる思考に相槌を打つことで、思考が途絶え、加速する負のループを止めることができます。そして、適当な相槌を打ち続けることで客観的になったり、だんだんと思考の真実味が和らいでいきます。
反芻思考と抑うつの悪循環は強力ですが、抜け出す道は必ずあります。大切なのは、「あ、今、私は反芻思考をしているな」と気づくこと。その「気づき」こそが、自動運転だった思考のループから抜け出し、意識を「今」に取り戻すための、最初の一歩となります。
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