秋冬こそ油断大敵！寒くなる季節の【食中毒対策】夏との違いと予防法を管理栄養士が解説

季節によって異なる食中毒の原因

温かい季節の食中毒 ：細菌性食中毒

湿度や気温が高い夏は、細菌が繁殖しやすく、細菌性の食中毒が多く発生します。代表的な原因菌は、サルモネラ菌・黄色ブドウ球菌・カンピロバクターなどです。加熱不足の肉や魚、調理後の常温放置が主な原因で発生します。

寒い季節の食中毒：ウイルス性食中毒

11月〜3月は、ノロウイルスなどのウイルス性の食中毒が多く見られます。感染すると嘔吐や下痢、腹痛などの症状が1〜2日続きます。特に体力のない子どもや高齢者は重症化しやすいため注意が必要です。

 その他の食中毒

春や秋は山菜・きのこ・ふぐなど自然毒による食中毒が増える季節です。誤った知識による誤食が原因で、重篤化する例もあります。また、アニサキスなど魚介類に寄生する寄生虫による食中毒は年間を通して発生します。

細菌性食中毒の予防法

細菌性食中毒の予防には、「つけない」「増やさない」「やっつける」の3原則があります。

① つけない

細菌は手や調理器具などを介して食材に付着します。トイレ、掃除、ペットに触った後などあらゆるシーンで菌が付着する可能性があるため、「手洗い」の習慣化が最も大切です。また、食材や調理器具も清潔な状態を保ちましょう。

「つけない」予防法

・手洗い：石けんを使い、手のひら・甲・指の間・爪の間・手首まで丁寧に洗う
・食材を洗う：生野菜や果物は流水でしっかり洗浄する
・清潔な調理環境：まな板や包丁は食材ごとに使い分ける

② 増やさない

温かい季節は食材の温度が上昇しやすく、細菌が増殖しやすい環境を生み出しやすくなります。食材や、調理後の食べ物管理を行うことが、細菌を増やさないポイントです。

「増やさない」予防法

・生ものは長時間持ち歩かない（保冷バッグや氷を活用）
・消費期限を守る、早めに食べる
・大鍋料理は小分け保存し、粗熱を取ってから冷蔵・冷凍する
・お弁当は完全に冷ましてから蓋を閉める
・テイクアウト食品の常温放置を避ける

③ やっつける

細菌は一定の温度に達すると死滅します。調理の加熱により細菌を死滅させることができるため、食材の中心部までしっかり加熱しましょう。

「やっつける」予防法

・食材は中心部75℃以上で1分以上しっかり加熱する。

ウイルス性食中毒（ノロウイルス）の予防法

寒い季節の食中毒対策は、「持ち込まない」「広げない」「つけない」「やっつける」の4原則がポイントです。「つけない」と「やっつける」は細菌性食中毒と同じ原則ですが、「もちこまない」と「広げない」がウイルス性食中毒の特徴的な原則となります。

① 持ち込まない

ノロウイルスの感染経路は、ウイルスの感染者が調理した食品を食べることで感染する例が多く上がっています。ウイルスに感染しないように体調管理を徹底することも大切ですが、体調が悪いと感じたら、調理に従事しないことも大切です。

「持ち込まない」予防法

・体調不良時は調理を避ける
・下痢や嘔吐などの症状がある場合は食品を扱わない
・日常的に手洗いを徹底する

② 広げない

ウイルスは少量でも感染力が高いです。ノロウイルス身近で発生した時は、感染を広げないために食器や環境の消毒を徹底することが大切です。

「広げない」予防法

・感染者の嘔吐物などを処理する時は、マスクやビニール手袋を着用する
・塩素系の消毒剤で食器や床を消毒する

③ つけない

細菌性の食中毒と同様に、こまめな手洗いを徹底しましょう。指先や爪の間、手首や手の甲など汚れが溜まりやすいところをしっかり手洗いします。

「つけない」予防法

・調理前、調理中、食事前、トイレ後など、こまめな手洗いを習慣にする

④ やっつける

ノロウイルスを死滅させるためにも加熱が有効です。特に2枚貝は高温での加熱により死滅させましょう。

「やっつける」予防法

・二枚貝は、中心温度85〜90℃で90秒以上加熱する

まとめ：寒くても油断せず「持ち込まない」意識を

気温が下がると食中毒のリスクは減るように感じますが、冬はウイルス性食中毒が増える季節です。「持ち込まない」「広げない」「つけない」「やっつける」の4原則を意識して過ごしましょう。

【参考文献】

食中毒は年間を通して発生しています：農林水産省

冬に食中毒？ノロウイルスの予防と対処法：農林水産省

ノロウイルスに関するＱ＆Ａ｜厚生労働省

家庭でできる食中毒予防！冬は特にご注意！ノロウイルス【第５回】｜厚生労働省