加熱しても死滅しない?冬の食中毒「ウェルシュ菌」気をつけたいポイントは|管理栄養士が解説
冬ではノロウイルスによる食中毒が注目されがちですが、実はウェルシュ菌による食中毒にも注意が必要です。ウェルシュ菌はノロウイルスとは違った特性を持つため、注意すべき食品や予防法が異なります。 そこで、ウェルシュ菌による食中毒の特徴や感染しないための予防ポイントを詳しく解説します。
ウェルシュ菌ってどんな菌?
ウェルシュ菌は細菌の一種で、ヒトや動物の腸内、土や水など自然界に幅広く生息している菌です。酸素が少ない環境で増える性質を持っています。また、芽胞という殻のような構造を作るため熱に強いといわれています。多くの菌は熱に弱い性質を持っていますが、ウェルシュ菌は芽胞を形成することで生き残ります。そのため、通常の加熱調理ではウェルシュ菌を死滅させることは難しいといわれます。
ウェルシュ菌による食中毒の症状や原因
ウェルシュ菌の食中毒は、菌の産生する毒素(エンテロトキシン)により引き起こされます。ウエルシュ菌のなかでも毒素を産生するウエルシュ菌が食品中で大量に増え、その食品を食べることで腸管内に感染し、芽胞を形成する際に毒素を放出しその毒素により食中毒の症状を引き起こします。
ウェルシュ菌に感染するとどのような症状が現れる?
ウェルシュ菌の食中毒は6〜18時間の潜伏期間を経て症状が現れます。主な症状は下痢と腹痛で、食中毒のなかでも比較的軽い症状とされます。
注意すべき食品は何?
ウェルシュ菌による食中毒の主な原因食品は、魚介類や肉類を使用したカレーやスープなどの煮込み料理です。特に集団給食が行われている施設(学校や旅館など)で大量に作られたものが、食中毒の原因となりやすいとされます。そのため、ウェルシュ菌による食中毒は1度に多くの人が感染してしまう特徴があります。
ウェルシュ菌に感染しないためのポイントとは?
ウェルシュ菌による食中毒は飲食店や給食施設などで起こるケースが多いですが、家庭でも注意が必要です。では、ウェルシュ菌に感染しないためにはどのようなことを意識すれば良いでしょうか。
食中毒予防の基本となる3原則として、「つけない」」「増やさない」「やっつける」が挙げられます。そのなかでも、ウェルシュ菌の食中毒では「増やさない」ことが予防につながります。ウェルシュ菌には自然界に広く存在しており、加熱によって死滅しない特徴があることから、ウェルシュ菌による汚染を防いだり加熱したりすることで予防するのが難しいとされます。そのため、食中毒の予防にはウェルシュ菌の増殖を抑制することが重要なのです。
増殖を抑えるためのポイントは、以下の3つです。
・喫食までの時間を短くする
・すぐに食べない場合は、加熱調理後に小分けにし速やかに冷やして保存する。
・よく混ぜながら調理する
調理した食品を常温で置いておくことで、ウェルシュ菌による食中毒のリスクが高まります。そのため、調理後の食品の扱いに注意が必要です。常温で保存せず、小分けにして冷蔵保存するか早めに食べるように心掛けましょう。
【参考文献】(2024年1月4日閲覧)
・東京都保健医療局, 食品衛生の窓|ウェルシュ菌
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/uerusyu.html
・厚生労働省, 食中毒統計資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
AUTHOR
一ノ木菜摘
管理栄養士/ライター。短大卒業後、病院で栄養士として働きながら管理栄養士免許を取得。その後は病院の管理栄養士やコールセンターなどの経験を経てライターとして活動を始める。ダイエットや食品、メンタルなどのヘルスケアについて論文などの科学的根拠をもとにコラムを執筆している。
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