「十分な加熱」の基準とは?管理栄養士が教える、加熱で食中毒を防ぐコツ
食中毒を防ぐために十分な加熱をしましょう、というのはよく耳にしますが、いったいどれくらい加熱したらよいのでしょうか。 今回は加熱で食中毒を防ぐために「十分な加熱」の基準や食中毒を防ぐ加熱のコツをお伝えいたします。
「十分な加熱」の基準とは?
厚生労働省の出している病院や保育園など食事を提供する施設を対象とした「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、中心部の温度が75℃で1分間以上の加熱をするようにと記載されています。
加えて、牡蠣(かき)やアサリ、シジミといった二枚貝など、ノロウイルスに汚染するおそれのある食品の場合では、中心部を85〜90℃で90秒間以上加熱するようにと記載されています。
加熱で食中毒を防ぐコツ
多くの食中毒菌は熱に弱いという特徴があり、十分な加熱で食中毒を防ぐことができます。そこで、加熱によって食中毒を防ぐコツをご紹介いたします。
生の肉は中心部まで加熱
ステーキや焼肉など厚みのあるお肉はおいしいですよね。しかし、厚みがある分、中心部まで火が通りにくいためしっかりと加熱をしましょう。
お肉やレバーなどの内臓は生で食べると細菌や寄生虫などに感染する可能性があります。特に豚肉はE型肝炎ウイルスや食中毒菌による重い食中毒が発生する危険があるため、中心部までしっかりと加熱が必要です。また、最近人気のジビエ(野生鳥獣の肉)も同じで細菌や寄生虫などの危険があるため、食べる前に十分な加熱をしましょう。
肉の加工品にも注意!
ハンバーグやメンチカツはひき肉を使っていますが、お肉をひき肉に加工する際、表面にいろいろな菌が付いてしまいます。
ハンバーグをフライパンで焼く際には1cm程度の厚さで火が通りにくい中心部をくぼませると中まで火が通りやすくなります。中まで火が通っているか心配なときは、中を割って焼けているか見る、焼いた後にレンジで再加熱する、煮込み料理としてよく煮込むなど工夫しましょう。
加工用の二枚貝はしっかり加熱を!
加熱調理用の二枚貝は食中毒の原因となるA型肝炎ウイルスやノロウイルスがついている可能性があるので、中心部までしっかりと加熱する必要があります。特に、冷凍や殻付きの二枚貝は熱が通りにくいため注意しましょう。
また、加熱前の二枚貝に触れた手でサラダや調理済みの料理に触れると、ウイルスや菌が移ってしまう可能性があります。手をしっかりと洗う、ボールや食器を使い分ける、洗浄・殺菌して使用するなど菌を移さない工夫が大切です。
まとめ:「十分な加熱」で食中毒を防ごう!
「十分な加熱」は「中心の温度が75℃で1分間以上(ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85〜90℃で90秒間以上)」が基準となります。
火が通りにくいステーキやハンバーグ、殻付きの二枚貝などでは中心部までしっかりと火を通しましょう。食中毒にかからないためにも、十分な加熱をするように意識していただければと思います。
【参考資料】
厚生労働省:豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう
厚生労働省:大量調理施設衛生管理マニュアル
厚生労働省:お肉はよく焼いて食べよう
内局務事会員委全安品食:加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?
AUTHOR
津端奈緒美
管理栄養士/ライター。大学卒業後、病院の管理栄養士として栄養指導などに従事しながら社会人学生として修士課程を修了し、現在は博士課程を履修中。ライターとして栄養や健康に関する分野で科学的根拠に基づいた記事やコラムを執筆している。
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