似合うって誰が決めたの?『GALS!』と考えるファッションの偏見 | 連載 Vol.22
社会起業家・前川裕奈さんのオタクな一面が詰まった連載。漫画から、社会を生きぬくための大事なヒントを見つけられることもある。大好きな漫画やアニメを通して「社会課題」を考えると、世の中はどう見える? (※連載当初は主にルッキズム問題を紐解いていたが、vol.11以降は他の社会課題にもアプローチ。)
突然だが、私の服装は多分世間一般的に「イタい」のだろう、と自覚してる。好きなアニメキャラがデカデカとプリントされたトレーナーはもはや制服だし、推しキャラの缶バッジで埋め尽くされた「痛バ」だって堂々と持ち歩く。推しと一心同体でいれることで心が潤うなんて、最高の機嫌の取り方だ。ちなみにアラフォーだけど、ミニスカもルーズソックスも年中愛用している(というか、ルーズソックスなんて、冷えが進行するこの世代にこそもってこいのアイテムすぎるからオススメ)。ちなみに髪型は前髪が定規級に揃ったぱっつんで金髪で、若干遅れてきた厨二病感はある。そして先日、某番組に「年齢x服装」をテーマに出演した時に、この話をしたらコメント欄の一部で「痛い女だw」と定型文のようなものが飛んできた。
でも、それでいい。だってこれが、私の好きな自分だから。
もちろん冠婚葬祭をはじめとしたTPOは大切だし、「結婚式にTシャツでいこう」とか言われたらそれは一旦止めようか、ってなるし、登壇の時はそれなりにバシっとジャケットを着ていってる(カラーだけど笑)。でも、日常の中で「その格好、もう若くないんだからやめたら?」「そんな派手な格好してるから軽く見られるんじゃない?」と、善意を装ったダメ出しをされた経験は、一度や二度じゃない。
私は文筆以外の仕事だと、ブランドを運営しているが、初めて会う人に「経営者です」と伝えると、「えっ、その見た目で?!」と驚かれることもある。いざ話し始めると「思ったよりちゃんとしてるんですね」とか「見た目とのギャップがすごい」と言われてきた。結果的に褒め言葉として言ってくれてるのかもしれないけど、相当バイアスがかかってたんだろうなといつも感じる。
私はここ数年、ルッキズムについてたくさん発信してきた。ファッションによる偏見がルッキズムに含まれるかどうかはまだ議論の余地はあるとはいえ、“外見で偏見をもたれる”という構造自体は同じじゃないかなって思う。たしかにルッキズムというと「顔のつくり」や「体型」からくる差別の話がメインだけれど、「ファッション」や「ヘアスタイル」などの“自己表現”からも偏見は生まれる。そんなイメージ、どこからきたん?となることだらけ。派手=中身がない、地味=真面目すぎ、とか。私たちって、そこまで単純じゃないはずなのに。そこに加えて、一定の年齢になったらこれは着たらダメ、何歳だから似合わない、母親だからこういう格好じゃなきゃ、みたいな話もどんどん出てきて、ひたすら表現の幅が狭まっていくだけだ。誰得?
この話でいつも思い出す、大好きすぎる漫画がある。
平成女児ならもはや知らない人はいないだろう、藤井みほな先生の『GALS!』だ。
『りぼん』で1999年〜2002年に連載され、近年はビックリマークの数が足されて『GALS!!』として続編も出た。平成のギャルにとっての教科書だ。主人公・寿蘭は、当時の「ギャルといえば!」の要素てんこ盛り。そして、正義感が強く、数々の言葉で友人たちの背中を押し、恋愛に関してもかわいいくらいに硬派で、最終的には警察官になるという最高にかっこいい女の子。ちなみにこの連載でも過去に、続編『GALS!!』を取り上げたコラムも書いたことがある(「今こそ心に『GALS!!』のギャル哲学を!」)。
そんな蘭ちゃんのセリフには、現代を生きる私たちにも刺さる名言が多い。
「真のギャルっつーもの、『本気(マジ)で楽しく生きる』これ鉄則」
「誰のためでもねぇ、自分のために生きるこったな!」
10代の頃はなんとなく「蘭ちゃんたちは校則なくていいな」くらいに思っていたけれど、大人になってから再び読んだ今、脳内でギャルピースしながら「自分のために”本気(マジ)で”生きよう」と自分に誓った。見た目が派手でも、しっかりしてる人はいる。年齢を重ねたら着てはいけない服もない。大事なのは外見じゃなくて、“どう生きるか”なのに、私たちはつい無意識に視覚的なものでまずラベリングしてしまう。
でもそのラベル、ほんとに必要?
それに「若くないからこの服はもう着られない」って、誰が決めた?もしも「もう若くないから…」というナンセンスな理由だけで自分の好きな服や表現に蓋をしてしまう人がいたら、私は声を大にして伝えたい。似合うかどうかは、“自分が好きかどうか”で決めていい、と。蘭ちゃんが言うように、誰のためでもなく自分のために生きていれば、どんな服装も結局勝手に似合うんだってば!
平成のギャルが教えてくれたシンプルで大事なこと。自分の好きで、自分を満たしていいんだって。さっ、今日も堂々と好きな服を着て、推しTシャツで”痛々しく”自分のために生きていこうっと。
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