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秋は喘息に要注意！研究からわかった「果物」が大気汚染による肺機能低下を和らげる可能性

山口華恵 2025-10-27

秋が深まると空気が乾燥し、空気中の微細な粒子が増えることから、喘息や呼吸器トラブルを訴える人が増える。特に都市部では、車や工場から排出されるPM2.5などの大気汚染物質が、肺にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られている。近年の研究では、こうした大気汚染による肺機能の低下に対し、「果物」が一役買う可能性があることが明らかになってきた。

果物を積極的に摂取すると大気汚染の影響を和らぐ？

2025年の欧州呼吸器学会（ERS）で発表された研究では、英レスター大学のピンピカ・カウェスリ博士らが、約20万人の成人を対象に、食生活と肺機能、大気汚染への暴露の関係を分析した。この研究では、UK Biobankという大規模データベースを活用し、参加者の食事内容（果物、野菜、全粒穀物の摂取量）と、1秒間に吐き出せる空気の量（FEV1）を比較。さらに、自宅周辺のPM2.5濃度をモデル化して算出した。この「FEV1」は、1秒間にどれだけの空気を勢いよく吐き出せるかを示す指標で、単位はミリリットル（ml）。つまり、「1秒で吐ける空気の量」を表している。健康な成人のFEV1はおよそ2000〜3000ml（2〜3リットル）ほどだ。

その結果、果物の摂取量が多い女性は、大気汚染による肺機能低下が緩やかであることが分かった。具体的には、PM2.5濃度が5 µg/m³上昇するごとに、少量しか果物を食べない女性のFEV1は平均78.1ml減少するのに対し、果物を多く摂取している女性では57.5mlの減少にとどまった。わずかな差に見えるが、FEV1の変化は呼吸機能に直結するため、この差は臨床的にも意味のある違いといえる。つまり、果物を積極的に食べることで、大気汚染の影響をある程度和らげる可能性が示されたのだ。

果物に含まれる抗酸化成分や抗炎症成分が良い影響をもたらす

この効果は、果物に含まれる抗酸化成分や抗炎症成分が関係していると考えられている。PM2.5などの微細粒子は肺に炎症や酸化ストレスを引き起こすが、果物に豊富なビタミンCやポリフェノールなどが、それを緩和する働きを持つのだ。特に女性は男性よりも果物の摂取量が多く、今回の研究ではこの違いが保護効果の差に影響している可能性も指摘されている。

さらに今回の研究は、「果物だけでなく、全体的な健康的な食生活が肺の健康に寄与する」ということも示唆している。健康的な食事パターンに従っている人は、肺機能が高く、慢性的な疾患リスクも低い傾向が見られた。つまり、秋の季節だけでなく、日常的に果物や野菜を積極的に取り入れることが、呼吸器の健康維持につながるというわけだ。

毎日手のひらサイズの果物1個を摂取

では、どのように果物を取り入れればよいのだろうか。研究では、1日4ポーション以上の果物摂取が効果的であると示されている。ポーションはおおむね、手のひらサイズの果物1個分や、カットフルーツカップ1杯程度。朝食にフルーツを加えたり、間食として果物を摂ったりするのが手軽だ。リンゴ、キウイ、オレンジ、ベリー類など、色とりどりの果物をバランスよく摂ることで、抗酸化物質の種類も増え、より効果的に肺を守ることができる。さらに、果物だけでなく、野菜や全粒穀物、豆類なども含む「植物中心の食事」を心がけることで、肺だけでなく全身の健康にも良い影響がある。秋の季節は果物や根菜が豊富に手に入る時期。旬の食材を活用することで、美味しく、効率よく栄養を摂ることができる。

毎日の果物習慣で肺機能サポート

今回の研究は、果物の摂取が大気汚染による肺機能低下をある程度和らげる可能性を示すもので、特に女性で顕著な効果が見られた。もちろん、果物を食べれば大気汚染の影響を完全に防げるわけではない。しかし、毎日の食生活で果物を意識的に取り入れることは、肺を守る有力な手段のひとつとなりそうだ。秋は空気が乾燥し、微細な粒子が舞いやすい季節。喘息や呼吸器の不調を感じる方は、果物を積極的に食べることで肺機能のサポートにつなげよう。加えて、マスクや換気、空気清浄などの対策も併せて行うことで、より安全に秋を過ごすことができる。健康的な食生活と生活習慣の見直しで、秋の肺も守りながら、季節の美味しい果物を楽しんでみては？