女の子を育てる上での不安。「SNSの脅威・性被害」からどう守る?
エコーチェンバー現象や排外主義の台頭により、視野狭窄になりがちな今、広い視野で世界を見るにはーー。フェミニズムやジェンダーについて取材してきた原宿なつきさんが、今気になる本と共に注目するキーワードをピックアップし紐解いていく。
2021年、『SNS 少女たちの10日間』という映画が公開されると、日本でも大きな話題を呼びました。
本作は12歳の少女がSNSアカウントを開設したという設定(実際は童顔の18歳以上の少女)で、どのようなメッセージが届くのかを観察した、ドキュメンタリー映画です。児童への性的搾取の実態を白日の下に晒した本作は、世界的なヒットとなりました。
『SNS 少女たちの10日間』はチェコで作られたドキュメンタリーですが、少女に対する性的搾取は、日本でも他人事ではありません。NHKの「クローズアップ現代」が行った調査では、SNS上に架空の中学3年生の女の子のアカウントを作成し、「友達がほしい」と呟くと、わずか2分で12人からメッセージが送られてきたといいます。その内容は、「下心ありありのエロ垢だけど、大丈夫かな?」や男性の下半身が露わになった動画などが含まれました。つまり、もしこれが実際の中学3年生のつぶやきだったとしたら、彼女はたった2分で性被害に遭ったのです。
また、性犯罪はSNS上だけで起こるものではありません。電車での痴漢や、リベンジポルノ、意に沿わない性的行為の強要など、あげればキリがないほどです。
女の子を育てる親としては、あまりにありふれている性犯罪からどうやって娘を守るべきか、悩ましいところでしょう。
娘をSNSの脅威や性被害から守るためにできること
2024年10月、文筆家の犬山紙子さんは、「娘を女性であることの痛みからどうにか守りたい」という思いから、『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカバー・トゥエンティワン)を上梓されました。
本作では、女の子を育てる上でも様々な不安と、不安との向き合い方が示されていますが、「女の子を育てる上での不安」として、SNSの脅威や性被害についても大きくページが割かれています。ここでは、本作で紹介されている女の子を育てる上で知っておきたい「SNSの脅威や性被害から娘を守るためにできること」を紹介していきます。
1.アカウントを作ったら保護者と相互フォローにする
未成年の娘がSNSアカウントを作成したら、保護者と相互フォローに設定するのがおすすめです。
セクハラやグルーミング・犯罪は基本的に他人から見える場所ではなく、DMで行われがちです。そして、DMは相互フォローでないと送れない場合が多いです。
少女たちを狙う加害者は、DMを送るために、いくらでも自分を偽ります。どこかからプロフィール画像を拾ってきて、同年代を装い、少女に近づき、相互フォローを目指します。怪しいアカウントは、やたらと色々な女の子をフォローしているなど、危険な兆候が見られることもあります。
保護者と相互フォローにしておけば、そういった怪しいアカウントの動きを見つけやすくなります。
また、SNSアカウントのプロフィール欄に、「DMは親が管理しています」などの一文を明記するのも効果的でしょう。
2.フィルターやアプリを入れる
フィルタリング機能やアプリなどを活用しましょう。
インターネット上の性被害の一つに、意図せずにアダルト広告を見てしまうことなども挙げられます。現在、成人向けの広告に関するネット上の規制が十分ではないため、エロと全く関係のない漫画アプリやレシピサイトなどを見ていても、アダルト広告を目にしてしまうリスクがあります。アダルト広告を目にしないためには、広告をブロックするアプリを使うのもいいでしょう。
また、『コドマモ』というアプリを使うのもひとつの手です。このアプリは、子供が危険なチャットや猥褻な自撮りをしたら、AIが自動で検知し、子供に画像削除を促したり、保護者に通知を送ったりする、というものです。
フィルタリング機能をかけた上で、こういった子供を守るアプリをスマホやタブレットに入れましょう。その際、子供にきちんと説明し、同意を取った上で入れるのが大切です。
3.あなたは悪くない、と伝えておく
本書の中で、タレントのSHELLYさんは、子供の性被害に対応する方法として、最も大切なのは、「万が一何かあったときは、それは加害者のせいであって、あなたのせいじゃないというのを起きる前から話すこと」だと述べています。
性被害は、被害を訴えにくい犯罪です。なぜなら、世の中には、「お前に隙があったからじゃないか」「そんな服を着ているから」「男の家に行ったから」など、被害者の落ち度を責める声で溢れているからです。
「被害にあったと告白したら、責められるのではないか」と思うと、誰にも被害を申告できなくなります。被害に遭った際になるべく早く打ち明けてもらうためにも、家庭内で打ち明けやすい空気を作っておくべきでしょう。そのためには、性犯罪のニュースなどが流れた際に、被害者を疑ったり、責めたりすることは絶対に避けるべきです。
万が一、性犯罪被害を子供から報告されたら、「言ってくれてありがとう。よく話せたね。すごく勇気がいることだったね」と寄り添う心づもりが必要でしょう。
こんな社会で女の子を育てるのが不安……でも、少しずつ変えていける
女の子を育てることに不安を感じるのは、心配のしすぎではないと考えています。現実に女性が大学入試で長年にわたって差別されたケース、同じポジション、同じ時間を働いていたとしても男女の賃金格差があったり、痴漢が日常茶飯事だったりする世界に生きている今、不安を感じるな、というのは無理な話でしょう。娘の未来を憂いて、絶望的な気持ちになってしまうこともあるかもしれません。
ですが、時代は変わっていきます。本書では、社会学者の上野千鶴子さんが、おばあちゃん世代では女が大学に行くのが当たり前ではなかったこと、また現代は女性だからという理由でお茶汲みをしなくて良くなったことを引き合いに出し、時代は少しずつ良くなっている、と述べています。また、この変化は自然発生したものではないことに言及しています。
「勝手に変わってきたわけではありません。誰かが変えてきたのです。私たちが変えてきたのですから、あなたたちにも変える力があるのです」と上野さんは言います。
今、娘を育てることに不安を感じているのなら、その不安を娘への愛情と行動力に変えましょう。そうすることで、彼女たちをより良い未来へと導くことができるはずです。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





