東京在住フリーランサーの「やらずにはいられないこと」とは?#暮らしの選択肢  番外編

東京在住フリーランサーの「やらずにはいられないこと」とは?#暮らしの選択肢  番外編
写真: まつし

近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市と地方の二拠点で生活する人々が増加傾向にあるということをご存知でしょうか。国土交通省の調査によれば、二地域居住等を実践する人は約6.7%に達し、約701万人と推計されているんだとか。また、複数拠点生活を行っている人は全体の5.1%に上るとの報告も。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ」二拠点生活者たちから、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる「暮らしの選択肢」の今を伝えます。

広告

今回の「#暮らしの選択肢」は、番外編。お話を伺ったのは、東京都内で2つの拠点を行き来する生活を送るまつしさん。夫と猫1匹と暮らす自宅から徒歩数分の場所に「屋上部屋」を借りて、暮らしの拠点を分けた生活を送っています。物価の高い東京都内で拠点を2つ持つことは決して容易いことではないはず。それでも尚、この暮らしを続けていきたいと話します。まつしさんの 「#暮らしの選択肢」に迫ります。

***********************************

〈プロフィール〉まつし

東京で不動産の仕事をする傍ら、個人で空間づくりを手掛ける。

改装した屋上部屋 @almosthome_tokyoで、食事会の開催や、宿泊レンタルスペースの運営も。

You Tube: ALMOST HOME

Instagram: @almostmatsushi

***********************************

二拠点生活は、やらないと気が済まないことだから続けられる

– 現在の「屋上部屋」と家族で暮らすご自宅との二拠点生活をはじめる前のイメージと、実際にはじめてから違ったことなどはありますか?

まつしさん: 今の二拠点生活は商いを絡めていますが、トントン拍子にうまくいっているわけではなくて。まだ改装費用を回収しているフェーズなので、つまりは赤字です。自分の納得できることしかやらないスタンスなので、5年ぐらいかけて初期投資を回収して、黒字化していければと考えています。需要に合わせてサービスを作るというのであればすぐにお金を稼げちゃう人もいると思いますが、私みたいなやり方だと時間がかかる。何度もトライアンドエラーをしなくちゃいけないだろうと予想はしていましたが、改めて道のりの長さを感じています。もしかしたら途中で心が折れちゃうかもしれないし、それで辞めてしまった人もいっぱい見てきているので、お金を稼ぐということに接続させるのが大変だなと感じています。

 

– まつしさんのやりたいことや好きなことが、相手の要求にマッチしないといけないわけですからね。

まつしさん: そうなんです。基本的に自分のわがままを通してやっている事業なので、それでも少なからずお客さんがいるのが奇跡のように感じます。ここからちゃんと軌道に乗せて、生計が立ったり、さらにもっと余裕ができるぐらい稼げちゃうようにするには、このまま今やっていることだけを細々と続けていても無理だろうという気はしています。

 

– それでも、半年もしないうちにすでにお客さんも来てて、常連さんもいるっていうのはやっぱりすごいですよね。まつしさんの場合は、やらずにはいられないことを発信し続けたわけで、やはり何事も続けることが大事ですよね。

まつしさん: ありがとうございます。今は全部一人でやらなきゃいけないし、発信もし続けないとお客さんが途切れちゃうような気がするので、頑張りどきだと思っています。ゆくゆくは常連さんだけである程度は回せるようになるのが理想ですが、今は企画をやったり、常に新しいことをして気にかけてもらわないといけない。ただ、ポップアップのような企画はその日限りなので、常に次の企画を考えないといけなくて。頭をずっと使わなきゃいけない感じです。今は楽しいから全然良いけれど、もう少し持続性のある事業も作って、それで回していけたらいいですね。 

– まつしさんのYoutubeを見ていると、結構ゆったりと過ごされているイメージがあったのですが、お話を聞いていると、かなりお忙しい感じですね。

まつしさん: 仕事が忙しいバリキャリみたいな感じではないんですけどね。頭の中で一人でクルクルしている感じです。ネガティブな感じではなくて、やっぱりワクワクしていますし、楽しいです。

写真: まつし
写真: まつし

– 二拠点生活を持続するためにモチベーションキープのコツはありますか?

まつしさん: どんどん新しいことをやっていこう、これもあれもやりたいって前向きに思えるのは、「やらないと気が済まないことをやっているから」だと思います。人が喜んでくれそうだからとか、憧れだったからとか、そういったゴールセッティングでやってるんじゃなくて、息を吐くようにただやっているという感じなのかもしれないです。

二拠点生活をはじめたおかげで、自分が選んできたことは絶対に間違っていなかったと思える

– まつしさんは、色々なところへ旅行に行かれていますが、それはその国の生活だったりとか、文化みたいなものを吸収して、日本での暮らしに活かすという意味合いはありますか?

まつしさん: 純粋に旅行が楽しくて好きというのもあるのですが、旅って非日常じゃないですか。特に海外へ行くと言葉も通じないし、常識からして違う。自分はその街に全然根付いていないし、知り合いもいない。社会から浮遊している時間を過ごすというのが、私にとってはリフレッシュになるんです。そうすると感覚が敏感になって、アイデアも浮かびやすくなるんだと思います。テラス席で仲良さそうにコーヒーを飲んでいるおじいちゃんおばあちゃんを見るだけでほっこりできたりとか、スマホ以外のところに目が向いて、小さな幸せのおすそ分けみたいなものをいただけることが多かったりして。それがすごく好きで、気づいたら行ってるって感じですね。本当は、気づいたらやっちゃっていることだけして生きていきたいです(笑)

–すでにそういうことができてるのはすごい。

まつしさん:  いや、まだまだです。労働はしっかりしているので。本当は、労働をなくしたいです(笑) 

– 以前まつしさんのYoutubeで「生きているだけで食っていけるようになりたい」ということをおっしゃっていたのがすごく印象的だったのですが、まさに労働をなくすということですよね。

まつしさん: そうですね。ただ生きてるだけで食べていけるようになりたい。スマホで時間を溶かしてしまうのは問題だと思いつつ、SNSがあるおかげでそういう暮らし方、生き方が可能な時代になってきていると思うんです。例えば、今まではブランド力がある組織に所属したりとか、カリスマみたいな人の横でおこぼれをもらうとか、東京にいなきゃ稼げないみたいな感じだったのが、もっと自然が豊かなところとか、家族の近くに住みながら、個人で自活できる時代になってきているのは間違いないと思うので。上手いこと、そっちに行きたいです。 

– 二拠点生活を続けていて、大変なことはありますか?

まつしさん: お金はかかりますよね。冷蔵庫やら電子レンジやら、全てダブルで買わなきゃいけないので。あとは、片方に滞在している時は、もう片方は使わないことになるので、お金だけが出ていく贅沢品として部屋を借りているのはしんどかったです。今はその改善策として商いができる場所にしてますけど、それでも自分が頑張らないとお客さんは来ないので、やはり、お金はかかるなと。

– お金はかかるけれど、やはり二拠点生活が良いと思いますか?

まつしさん: そうですね。二拠点生活をはじめて良かったと思います。一拠点生活に戻るってことはありえないと思います。 

写真: まつし
写真: まつし

– どんなところが良かったと思いますか?

まつしさん: 一拠点生活の頃は、完全フルリモートで働いていました。在宅時間が長かったのですが、自宅だと身が入らないことも多くて。近所のカフェに出かけても混んでいて入れない時があったり、周りがうるさくて集中できなかったり。自分好みに仕立てられているわけじゃないので、気持ちがいい空間なわけでもない。あとは、お決まりのカフェとかもなかったので今日はどこに行こうとか、それをまずは選ばなきゃいけないのが苦痛だったり、面倒くさかったり。それが、二拠点生活で書斎としての空間を手に入れたことで、自分が好きな空間を、自分が好きな時に使っていいっていうその自由さや、余計なことを考えなくていいみたいなことが自分の中に余白を生んで、自分にとって大事なことを考える時間も増えたと思います。だから「こうなりたい」と思っていた自分や人生、ライフスタイルに近づいている手応えはあるんです。二拠点生活をはじめた選択は間違っていなかったと思います。

– 自分の選択が間違っていないという手応えがあるのは、めちゃめちゃ理想ですよね。最後に、今後の展望を教えて下さい!

まつしさん: 今、色々な企画を練っているのですが、大きなもので言うと、1、2年後には毎週末、屋上部屋で「SUPPER CLUB(完全予約制で少人数の食事会)」を開きたいと考えています。料理をふるまってくれる人とタッグを組みたいんです。4〜6名程度を招いて、居合わせたお客様がひとつのテーブルを囲んで食事をするイメージ。過去に単発で何度か食事会を主催しましたが、私の集客のやり方だと興味関心の似ている人に来てもらいやすいですし、お客さん同士も話が弾んで打ち解けているように思えました。だから、「私はこういうことをやりたいんだ」とか「それならこの間インスタで見たこの人が参考になるかも」とか「このお店で似たような考えのイベントやってて面白かったよ」みたいにラリーが続くような、アイデアとクリエイティブの始発駅になる場所を作れたらと思っています。口に出して人に伝えることで頭が整理されるし、相手の話からインスピレーションを得られることもあるはずなので。一人では停滞していたアイデアも、対話を通じて前に進みやすくなるような、そんなやりとりを食卓を通してできたら面白いと思っています。

 

– 一人でもできることはあると思うんですけど、やはり複数人が集まって出来上がるものって、すごくエネルギーがあるし、価値があるものが生まれると思います。特に、まつしさんのやり方であれば、まつしさんの得意なことや良いところを最大限活かして、クリエーションできると思うので、きっと今までにないような面白いクリエーションができるのではないかと期待します!

まつしさん: そうなれたらいいなぁ。頑張ります!私自身、ずっと一人でやる仕事ばかりしてきたので、良い先輩には恵まれましたが、同期とか一緒に高めあう仲間がいなくて。世の中のクリエイターを見ていると、みなさんコミュニティに属してるじゃないですか。その人達同士でコラボして、そこで広がっていったり、完結してるというか。私は今の所そういう場所に属していなくて、アイデアを一人で悶々と反芻しているだけなので、それがすごく寂しいし、共感しつつも新しい視点をくれるような友だちが欲しいんです。だから、今やっていることも、そういう人と出会えたらもうちょっと加速するのかなと期待しています。無所属の人でも、はじめましてでも、少人数で話の弾む空間が作れたらいいなと思っています。

広告

RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

写真: まつし
写真: まつし
東京在住フリーランサーの「やらずにはいられないこと」とは?#暮らしの選択肢  番外編
東京在住フリーランサーの「やらずにはいられないこと」とは?#暮らしの選択肢  番外編
東京在住フリーランサーの「やらずにはいられないこと」とは?#暮らしの選択肢  番外編