【弁護士に聞く】独身偽装を見抜くコツと騙されたときに絶対にやってはいけない復讐行為

【弁護士に聞く】独身偽装を見抜くコツと騙されたときに絶対にやってはいけない復讐行為
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最近聞くことの多い「独身偽装」。独身であると偽って、交際を続けて、既婚者であることが判明した際に、訴えられているケースもあります。もし独身偽装をされてしまった場合、どんな法的な対応がとれるのでしょうか?逆にしてはいけないことや、弁護士に相談するときのポイントとは?恋愛に関するトラブルに詳しい三輪記子弁護士にお伺いしました。

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許せなくても「これはNG」な行動とは

——独身偽装をされて「許せない」という思いも沸くと思いますが、してはいけない行為の例を教えていただけますか。

「配偶者や会社にばらす」「ばらされたくなかったら○○しろ」と言うことは脅迫に該当しますので、その行動自体が不法行為になる可能性があります。

相手の会社に直接突撃してしまうのも、絶対にNGです。名誉毀損やプライバシー権の侵害として別の不法行為になりえますし、会社側は対応する義務がないので、業務妨害になる可能性もあります。

穏当な内容の書面の送付のように、正当な手続きをもって訴えたことで、結果的に妻に知られるということはあります。ただ、中には訴えられても妻に隠し通しながら対処する人もいます。それはケースバイケースですから、訴える側にはコントロールできないこともあると思います。

独身偽装に気づくためにできること

——あくまで騙す方が悪いですが、独身偽装に気づけるかもしれないポイントはありますか?

恋愛は私的なことなので、誰にも相談しない人もいるのかもしれませんが、友達と話すことは、「あれ?」と気づける大事なポイントだと思います。

たとえば、「今こういう人と付き合ってて」と話して、「どんな人?」となるじゃないですか。そういう中で「絶対に家に上げてくれない」「平日しか会ってくれない」と話していたら「え?どういうこと?」ってなりますよね。

恋愛はどうしても客観性が失われがちなものですが、「もし友達が自分と同じ状況だったら、なんてアドバイスするか?」という視点は持っておいた方がいいと思います。

独身偽装
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——単身赴任しているなどで、家に上げてくれるし、土日も会ってくれるので、疑いやすい部分のないケースもあると思います。きちんと確かめたい場合に、どんなことができますか?

マッチングアプリなど、相手の身元が明らかでない形で出会うのであれば、独身証明書を提示してもらうことは一つの方法だと思います。独身証明書は本籍地のある自治体に申請することで取得が可能です。だけど、なかなかそこまで相手に求めるのは難しいですよね。

ただ、最近は独身偽装のニュースを見ることも多くなっているので、「念のため確認をしたい」と言って、断られたりはぐらかされたりしたら、怪しいと思ってもいいぐらいだと思います。それと、自分自身が「結婚を前提とした真剣な交際をしたい」と伝えることは躊躇しない方がいいと思います。それを伝えることを恥ずかしがったりしているのはよくないと思いますので、結婚を前提とした真剣な交際をしたいのかどうかという自分自身の本心をきちんと開示できるようにしておくことをおすすめします。

独身証明書は高額な費用がかかるわけでもないので、本当に独身ならば、「見せてほしい」と言われても非協力的なのは理解が難しいです。

あとは、長く付き合っていたら、ご両親にご挨拶するという話もあるかもしれないですよね。

——「疑ってるの?」などと言われることが怖くて、強く要求できない人もいると思いますが、独身偽装の問題が明らかになっている中で、独身証明書に協力してくれない人は、たとえその人が本当に独身だったとして、結婚した後に、話し合いができる関係性が築けるのかも疑問です。

結婚することそのものがゴールになっていないかを自分に問うことは大事な視点です。結婚すれば幸せになれるわけではなく、どんな人と結婚するかが大事なので、話し合いや歩み寄りのプロセスをおそろかにしない方がいいと思います。

弁護士としては、相手がどんな人か確認できない出会い方をしたうえで、トラブルが起きている事例をいくつも見ているので、相手の身元を確認しないまま付き合うのは、正直恐怖心もあるくらいです。マッチングアプリどころか、実名で登録しているSNSで既婚者が出会い目的で使用している場面を見ることもありますので……。

マッチングアプリのように、元々の関係性がない形での出会いは、真剣に交際相手を探している男性からしても、相手が既婚者であるリスクがありますので、お互いに独身証明を確認すればいいと思います。

弁護士に相談するときのポイント

——弁護士に相談する場合の探し方のポイントを教えていただけますか。

独身偽装のことでしたら、家族問題を得意としている弁護士がいいと思います。信頼できる知人からの紹介があるなら、その弁護士に相談するのもいいでしょう。

市区町村で行っている弁護士相談でも、独身偽装について聞いてくれる場合もあると思いますが、一概に「こうです」とコメントするのは難しいです。

弁護士事務所は、まずは1回30分といった形で相談を受けているところもあります。今はオンラインで相談を受けている弁護士もいますが、どうしても近くに相談しやすい弁護士がいないとかでなければ、直接訪問して相談した方がいいと思います。

——なぜ直接会える弁護士の方がいいのでしょうか?

こういった独身偽装のような事案の場合、「感情」が大切な要素ですし、感情などの心理面はオンラインだけではなかなか伝わりにくいと思うからです。

また、費用が安すぎる弁護士も私は注意した方がいいと思います。

——安いと「親身な弁護士さん」と思ってしまいます。

お金を取らない弁護士の方が「良い人」に見えるかもしれませんが、正当な費用をいただかなければ、弁護士業が回らなくなってしまいます。

「安かったものの、適当な仕事をされた」という話を聞くこともあるので、安いからといって飛びつくのはオススメしません。弁護士費用はある程度はかかるつもりでいた方がいいと思います。

なお、最初から1人しか相談しないつもりでなく、違和感があれば別の弁護士にも相談するつもりでいた方がいいとも思います。

——独身偽装の被害実態を見て、課題に感じることはありますか?

貞操権侵害の慰謝料の相場が低すぎるのは問題だと思います。

個々のケースで悪質性が高ければ情状的に考慮はされるものの、日本には懲罰的損害賠償がないので、ひどい方法で人を傷つけてもその点は反映されません。

「貞操権」だけではありませんが、目に見えないもの(感情など)が侵害されたときの金銭的評価が日本の司法では低すぎるとも感じます。独身偽装をしたときの経済的リスクはもっと大きくていいのではないでしょうか。

【プロフィール】
三輪記子(みわ・ふさこ)

第一東京弁護士会所属。
東京大学法学部、立命館大学法科大学院卒業。
2010年に弁護士登録し、2021年3月には「三輪記子の法律事務所」を開設。
著書に『これだけは知っておきたい男女トラブル解消法』(海竜社)。

■YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@MiwaFusako_B
 

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