「むくみ」は塩分だけじゃない。腎臓や心臓が関係することもあるって知ってた?医師が解説
朝起きたとき、顔やまぶたが腫れぼったく感じたり、夕方になると靴がきつくなる・・・。そういった「むくみ」は一見、日常的で軽い症状に思えますが、放置すると重大な病気のサインを見逃すことにもつながります。また、むくみは「塩分のとり過ぎ」や「水分のとり過ぎ」が原因だと思いがちですが、実はそれだけではありません。医師が解説します。
「むくみ」は塩分だけが原因じゃない
体の中の水分バランスを保つ仕組みには、腎臓や心臓、血管、リンパ系などが深く関わっており、そのどこかに異常があると、むくみが現れることがあります。
塩分の摂取が多いと、体は血液中のナトリウム濃度を一定に保つため、水分を余分に抱え込む結果、血管から水分が漏れ出し、皮膚の下にたまってむくみが起こります。
しかし、むくみの原因はそれだけではなく、以下のような要因が考えられます。
腎臓の機能低下
腎臓は体の老廃物や余分な水分を尿として排出する重要な臓器です。
慢性腎臓病や急性腎障害などで機能が低下すると、水分や塩分が体内にたまりやすくなります。
特に、腎臓のフィルターである糸球体に異常が生じる「ネフローゼ症候群」では、血液中のたんぱく質が失われ、血管内の水分保持力が低下してむくみが全身に広がります。
心臓のポンプ機能低下
心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割を担っています。
心不全や心筋症などでその力が弱まると、血液がうまく循環せず、特に下半身の静脈に血液が滞りがちになります。
静脈の圧力が上がると水分が血管の外へしみ出し、足やくるぶし周りにむくみが現れます。
肝臓疾患
肝硬変などで肝臓の機能が低下すると、血液中のアルブミン(たんぱく質)の合成が減ります。
アルブミンは血管内に水分をとどめる役割があるため、その量が減ると水分が漏れやすくなり、むくみや腹水が生じます。
静脈やリンパ管の異常
足の静脈の弁が壊れて血液が逆流する「下肢静脈瘤」や、がん治療後のリンパ節障害による「リンパ浮腫」も、慢性的なむくみの原因です。
これらは片足だけが腫れることもあり、左右差が大きい場合は要注意です。
「むくみ」があるときの対処法とは?
むくみの背景には、軽度の生活習慣要因から重篤な疾患までさまざまなものがあるため、まずは原因を見極めることが大切です。
生活習慣の見直し
塩分を控える
1日の食塩摂取量は成人で6g未満が推奨されています。加工食品や外食は塩分が多くなりやすいので注意しましょう。
水分バランスの調整
水分を過剰に制限する必要はありませんが、就寝前の大量摂取は避けます。
適度な運動
ふくらはぎの筋肉は「第2の心臓」と呼ばれ、血液やリンパ液を押し戻す役割があります。ウォーキングやストレッチが有効です。
長時間同じ姿勢を避ける
デスクワークや立ちっぱなしの場合は、1時間ごとに軽く足を動かすと良いでしょう。
医療機関での検査
血液検査
腎機能・肝機能・心臓関連マーカーを確認する。
尿検査
たんぱく尿や腎障害の有無を調べる。
心エコーや腹部エコー
臓器の構造と働きをチェックする。
原因不明のむくみや、急激に悪化する場合は早期受診が必須です。
自宅でできるケア
下肢挙上
横になって足を心臓より高く上げると血液やリンパ液が戻りやすくなります。
弾性ストッキング
医療用の着圧ソックスは静脈の血流をサポートします(医師の指示で使用)。
温冷交互浴
血管の収縮と拡張を促し、循環を改善します。
まとめ
むくみは一時的な体調変化で起こることもあれば、腎臓や心臓、肝臓など重要な臓器の病気のサインである場合もあります。
特に、足のむくみが朝より夕方に強くなる、片足だけに現れる、息切れや体重増加を伴う場合は、早急な診察が必要です。
「塩分を減らせば治るだろう」と自己判断せず、日常的なケアと医療的評価を組み合わせることで、むくみの背景にある原因を早期に見つけ、適切に対処できます。
今回の記事が参考になれば幸いです。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





