「朝のむくみ」は老化じゃないかも?隠れた腎臓病の可能性とは|医師が解説

「朝のむくみ」は老化じゃないかも?隠れた腎臓病の可能性とは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-06-22

そのむくみ、腎臓病を疑うべきサインかもしれません。医師が解説します。

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「朝のむくみ」は老化じゃないかも?隠れた腎臓病の可能性とは

「朝のむくみ」は、年齢のせいだと見過ごされがちですが、実は腎臓病のサインである可能性があります。

腎臓は体内の余分な水分や老廃物を尿として排出する重要な臓器であり、この機能が落ちると、水分や塩分が体内に溜まりやすくなり、むくみが現れます。

特に「朝のむくみ」は要注意です。

寝ている間は横になっているため、水分が顔やまぶた、手などに移動しやすく、腎機能に問題があると朝にむくみやすくなります。

腎臓病を疑うべきサインとしては、以下が挙げられます。

  • 朝方にまぶたや顔、手がパンパンにむくむ
  • 身体のむくみが数時間以上とれない
  • 尿の量や色に変化がある
  • 常に疲れやすくて疲労感やだるさが続く
  • 血圧が高めになる

など。

身体のむくみが気になる場合は、腎機能低下やネフローゼ症候群などの病気が鑑別として考えられるので、早めに腎臓内科などの専門医療機関を受診しましょう。

尿検査(たんぱく尿・潜血など)、血液検査(クレアチニン、eGFR)、血圧測定などの結果によって、腎機能を評価することができます。

ネフローゼ症候群とはどのような病気か

ネフローゼ症候群とは血液中に含まれているアルブミンというタンパクが大量に尿中に漏れ、血液中のアルブミン濃度が下がることで低タンパク血症になり、全身の浮腫や様々な症状が発生する病気です。

分類

主に、一次性ネフローゼ症候群と二次性ネフローゼ症候群に分類されます。

一次性ネフローゼ症候群とは腎臓に主に原因がある指定難病のひとつである一方で、二次性ネフローゼ症候群の発症原因は、代謝性疾患・膠原病・悪性腫瘍・感染症・アレルギー・非ステロイド系抗炎症薬など様々挙げられます。

一次性ネフローゼ症候群には、微小変化型ネフローゼ症候群・膜性腎症・巣状分節性糸球体硬化症・膜性増殖性糸球体腎炎があります。

検査

一次性ネフローゼ症候群の場合、失われたタンパクの量を測定する方法として24時間にわたって尿を採取する方法が有効です。

しかし、1日かけて尿を集めるのは困難なので、1回の尿検査で老廃物の濃度に対するタンパク濃度の比を確認することで、失われたタンパク量を推定できます。

また、尿検査で、脂肪円柱などネフローゼ症候群の特徴が出ていないか調べます。

血液検査によって、ネフローゼ症候群の背景にある病気を特定できる場合もあるので、過去に罹患した感染症・自己抗体について調べます。

特に、ネフローゼ症候群をきたす原因は様々なので、腎臓超音波検査や直接腎臓に針を刺し組織を採取して調べる腎生検も、病型の確認・診断に有効です。

血液検査以外にも、超音波検査やCT検査・内視鏡検査も悪性疾患の探索を行うのに有効です。

診断基準

ネフローゼ症候群に関する診断基準については、タンパク尿3.5g/日以上が持続する、低アルブミン血症(血清アルブミン値3.0g/dL以下)、浮腫、脂質異常症(高コレステロール血症)の2点を同時に満たす必要があります。

その中でも、明らかな原因疾患がないものは一次性ネフローゼ症候群の診断がつき、明らかな原因疾患がある場合は二次性ネフローゼ症候群の診断となります。

対策

ネフローゼ症候群の浮腫への対策としては、塩分の制限があります。

ネフローゼ症候群に伴う尿タンパクに対する治療法は原則的には副腎皮質ステロイドの投与です。

内服薬か点滴投与を行いますが、点滴の場合は高用量のステロイドを3日間かけて投与するステロイドパルス療法を行います。

ステロイド投与で効果が乏しかったり、再発を繰り返したりする場合は免疫抑制剤・生物学的製剤・LDLアフェレーシスという治療を追加で行うこともあります。

二次性ネフローゼ症候群の場合は、原因となる病気に対する治療が中心です。

治療

特に、浮腫という症状に対しては悪化しないように、日々の食生活における塩分制限と安静保持が治療の基本になります。

塩分制限に関しては酷い浮腫が生じている場合、0〜4g/日の塩分制限を行い、症状が改善されるようであれば6〜7g/日まで制限を緩和することもあります。

塩分
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塩分を多く摂りすぎると高血圧にもつながるので、日常的に塩分の過剰摂取には注意しましょう。

ネフローゼ症候群の場合は、血液が固まりやすくなっているので、適度なマッサージや軽労作の歩行運動などが大事です。

セルフケアでも浮腫が改善せずに体重増加がみられる場合は、利尿剤を使用することがあります。

血中アルブミン濃度が過度に低下する、あるいは利尿剤を使用しても体に水が溜まって浮腫が悪化する場合は、一時的に透析治療を実施しなければならない可能性もあります。

まとめ

「朝のむくみ」は単なる老化ではなく、ネフローゼ症候群や腎機能低下を含めて、腎臓病の初期症状の可能性があります。

身体のむくみが続く・強い・他の症状もある場合は、自己判断せずに、腎臓内科など専門医療機関でチェックしてもらいましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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