お金が飛んでいく…女性に多い乳がん治療費の現実。仕事と子育てとの両立で感じた苦悩とは?【経験談】
女性で最も罹患数が多い乳がん。40代から50代の閉経前後の女性に多いと言われています。がんの治療といえばお金がかかるイメージ。どのくらい必要なのかわからなくて不安な人も多いと思います。『乳がんにまつわるお金の話』(KADOKAWA)ではそんな疑問を解消してくれます。作者のうだひろえさん、担当編集で乳がん罹患経験のある宮崎さんに乳がんに関する不安や、治療と仕事・子育ての両立をテーマにお話を伺いました。※本ページにはプロモーションが含まれています。
乳がんに対する当初のイメージ
——乳がんについて、どのようなイメージを抱いていましたか。
うだひろえさん(以下、うだ):私の場合は、女性特有のがんであることと、漠然と「全摘出」というイメージしかありませんでした。他のがんと特に違った認識もなく、もともとはそれほど身近に感じていなかったんです。
数年前、タレントの方の乳がん公表が続いていた時期がありました。その頃から自分も少し身近に感じるようになって、ちょうど40歳になったタイミングだったこともあり、定期的な検査を受けるようになったんです。自治体のがん検診のクーポンでマンモグラフィと、自費でエコー検査を年1回受けるようになりました。
——担当編集者である宮崎さんという身近な方の乳がん経験を聞いて、認識に変化はありましたか?
うだ:宮崎さんから聞くことすべてが衝撃的で、とにかく大変だったということが伝わってきました。特にお金の問題についてはリアルに感じることができ、自分自身でも危機感を持つようになりました。
それまでは定期的な検診を受けることや、医療保険に入っていることで、満足していた部分もあったんです。それだけでは不安は解消されないと、身を切るようにわかりました。
——乳がんというものに向き合ったとき、どのような不安を感じましたか。
うだ:そもそも病気に対する不安がある上で、お金の不安がこんなに大きいということを痛感しました。私自身がフリーランスで、共働きで私の収入も生活に影響する状態なので、働けなくなったら、それに加えて医療費がかかったら、どれくらいの負担が生まれるのだろうと、考え込みました。
一番大きかったのは家族に対する心配です。フリーランスだからこそ、子どもたちのさまざまな用事に付き合いながらでも仕事ができているのですが、病気になったときに、治療でお金もかかるし、子どもたちのお世話もしてあげられないとなったとき、どうすればいいのか。もう真っ暗になるくらい、頭の中がごちゃごちゃになるくらいの不安を感じました。
宮崎さんからお話を伺ったときは、子どもたちはまだ小学生でした。習い事の送迎や、体調が悪いときの通院など、細々と毎日やることがある中で、それをすべて夫に仕事をしながら負担してもらうのか、誰かに頼めるのかと、本当に直面したらどう対応していけばいいのだろうと大きな問題でした。
治療と仕事の両立
——宮崎さんは、治療と仕事を両立していくにあたって、いかがでしたか。
宮崎さん(以下、宮崎):仕事面については、初期段階で休暇を取らせてもらったので、それほど大変ではなかったかもしれません。上司や編集部、社内のシステムに助けられました。
実は検査で引っかかった本当に初期で、結果的にそのときはまだがんではなかったのですが、私はびっくりしてしまい、上司に相談していたんです。その時点ですでに病院について調べて教えてくださったので、その後の流れはスムーズでした。その段階から仕事量の調整や、テレワークにも対応していただいたので、とても助かりました。
ただ、テレワークができないお仕事だと大変だと思います。抗がん剤治療を始めてから私も1、2か月仕事をしましたが、主にテレワークでした。ときどき会社に行くことがあったのですが、通勤の負担は大きかったです。
病院での待ち時間がとても長いので、ノートパソコンを持参して合間に仕事ができるようにしていました。そのときはまだ精神的にも体力的にも余裕があったので、なんとかできていたと思います。
その後、治療開始から1か月半ほどで抗がん剤治療中に肺炎になってしまい、入院することになりました。仕事復帰も難しい状態で、そのまま傷病休暇を取ったんです。そこで一度、仕事から離れることになったので、それほど大変なことはなかったかもしれません。引き継ぎもスムーズにしてもらい、本当に周りに助けられました。
個人的にお付き合いのある作家さんたちには「ついに私、乳がんになりまして、がーん!」というご連絡をしました。このテンションで休みに入ることができたので、それは良かったと思います。
——がんの治療をしながら働き続けるという点では、会社の仕組みもとても大切なのだと思いました。
宮崎:私は制度について全然分かっていなくて、本を作りながら知ったことも多かったんです。でも、よくよく見ると企業でこういう支援があるということが結構あって、お金を出してくれて、周りの方のサポートもあって、本当にありがたかったです。
うだ:友人の話ですが、最初は夫の扶養に入っていたので、夫の会社の健康保険からいろいろと支給がありましたが、治療の途中で元気になって「バリバリ働くぞ」と扶養から外れて、支給がなくなってしまったそうです。制度の仕組みを理解していなかったので、支給されなくなるまで気づかなくて「そこまで頑張らなくてもよかった…」と言っていました。
そういうことも聞いたので、現時点で利用できる制度とその条件について調べておくことはとても大事なことだと思います。
治療と子育てとの両立の困難
——子育てしながらの治療という面で、大変だったことはありますか。
宮崎:子どもが小学1年生のときに治療を始めたので大変でした。抗がん剤治療を始めてから、副作用でずっと調子も悪くて起きるのもつらいのですが、小1なので日々の生活で、ほぼ全てにおいてお世話が必要です。
夫は朝から夜まで仕事だったことに加えて、頼れる人ではなかったので……。乳がん経験の方のブログを見ていると、協力的なご家族の話が多くて、読んでいてうらやましくて、自分の状況と比べて寂しい気持ちにもなっていました。この時期のワンオペはよく乗り越えたと自分でも思います。
実は抗がん剤治療中に激しいケンカをして、夫と1ヶ月ほど距離を置いたことがありました。でも距離を置いたことで落ち着いた部分もあって、お互い取り戻せる何かがあったような気がしました。一時的に離れるのは正解だったと思います。
ご飯を作れない・子どもの世話もできない時期があったのですが、私は実家が近かったので、父と母に頼りながらなんとかやっていました。実家からご飯を届けてくれたことも本当に助かりました。
※後編に続きます。
【プロフィール】
うだひろえ
2009年 携帯コミック「ラスチル 昭和さいごのコドモ」が文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に入選。コミックエッセイ「誰も教えてくれないお金の話」が20万部のヒットに。
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