更年期不調に悩み「筋肉量が90歳」と言われた私が「スロージョギング」で人生が変わった話【経験談】
コミックエッセイストのまきりえこさん。デスクワーク歴が長く、もともと運動不足気味。40代前半に閉経し、早く更年期がきて、体調不良にも悩まされていました。更年期の不調が落ち着き、運動を始めたところ、膝を痛めてしまい病院を受診。そこで「筋肉量が90歳」と衝撃の事実を告げられます。1日8000歩を勧められますが、なかなか続かず……。そんな中、とあるきっかけで「スロージョギング」に出会い、見えていた未来に大きな変化が。その経験を描いた『お金もかからず体調万全!! ゆる走りスロージョギング』(はちみつコミックエッセイ)に関連して、お話を伺いました。
「早発閉経」と告げられた後、謎の不調に苦しめられた約10年
——40代前半で閉経されて、更年期症状もつらかったと描かれていました。
まずあるとき生理がピタッと止まりました。当時、基礎体温もつけていて、特に違和感を覚えるようなことはなかったですし、妊活をしていたのですが、妊娠したわけでもなくて。
比較的早い段階で婦人科を受診し、血液検査を受けたところ、「数値としては閉経と言っていい状態」と言われました。このとき「2人目を望んでいますか?」と聞かれたのですが、とっさに「望んでいません」と言ってしまいました。閉経するような状態なのに、妊活してたことを恥ずかしいと思ってしまったんです。
それでお医者さんから「もしあなたが30歳ならホルモン治療を提案していますが、もう妊娠を望んでいないなら、更年期症状がつらくて自殺してしまう人もいるくらいですし、スパって終わってよかったと考えませんか?」と言われ、そのまま受け入れました。
閉経・更年期の症状は妊娠に関わる問題だけではないので、もう少しじっくり考えてもよかったと思いますし、私が希望していれば医師も治療をしてくれたとは思うのですが、当時はよくわかっていないまま決断をしました。
——その後、結果的には更年期の症状に悩まされることになったのですよね。
少し経ってから、更年期症状が出始めました。ホットフラッシュで大汗をかいたり、だるかったり、腹痛があったり。色々な不調に悩まされる中、原因がはっきりとわからなくて、複数の病院を受診しました。抑うつ状態で、心理的不調が長く続き、起き上がれなくなったこともありましたね。ジョギングやウォーキングをしてみたこともあったのですが、積み上がっていく感じがしなくて、ますます寝込んでしまいました。
当時は、今ほど更年期に関する情報を得られないですし、世間の見方も違ったので、気力の問題にされたり、だるくて起き上がれないという話をしたときに「動ける人もいるのに」といったことを言われて、傷つくこともありました。
結局、数年間苦しんだ後に受診した更年期外来でホルモン補充療法(HRT)を受け、よく効いて改善しました。この辺りは『オトナ女子の謎不調、ホントに更年期?』(集英社)で詳しく描いています。
スロージョギングと出会って
——本作では最初に「筋肉量が90歳」と言われたことが描かれていました。言われたとき、どう思いましたか?
「90歳」という単語が出たときはびっくりしました。漫画家という仕事柄、とにかく座りすぎだったとは思うんです。今ほど、座りっぱなしがよくないから立ち上がりましょうという情報もなかったので、何時間も座り続けて仕事をしていました。
でも生活している中で「90歳」という感覚はなかったので、先生に「検査もしないで、なんでそんなこと言うんですか?」と聞いたら、レントゲンの写真に定規をあてて、筋肉量を測ったと説明されました。「自分では足が全部筋肉と思っているかもしれないけれど、脂肪ばかりだよ」と。自覚がないまま筋肉量が落ちてしまう人もいることも知りました。
——その後、「スロージョギング」に出会われたのですよね。
元々は提唱者である田中宏暁先生の本を読んでいて、やってみたのですがうまくできなくて、放置していました。その後、スロージョギングの講習を受ける機会があって、真面目に取り組んでみたらやれそうと思って。
講師の先生は「歩ける人なら走れます」と繰り返しおっしゃっていました。福岡大学病院では心臓病のリハビリとしてもスロージョギングが導入されていると伺って、それなら体力に自信のない自分でもできるかもと思いました。帰宅後、自分でもやってみたら結構走れて、そのまま生活に取り入れています。
普段走るとき、かかとで着地していると思うのですが、スロージョギングでは「フォアフット着地」といって、足の指の付け根の辺りで着地をします。この着地法によって膝を痛めることなく、走ることができるんです。
ペースとしては、1分間に180歩を目安としていて、科学的にも乳酸がたまらないペースがわかっているそうです。息があがらないので、おしゃべりもできます。それまでは25mを走るだけでも息が切れて大変だったのですが、スロージョギングだと初めてでも1kmくらい走れたうえに、全然疲れませんでした。
私は本当に体力がなかったので「一日一タスク」の方針で生活してきましたし、運動した日は仕事ができないくらいの心構えが必要だったのですが、スロージョギングは疲れなくて、走っても生活に影響が出ることがなかったので、取り入れやすかったです。
スロージョギングがもたらした変化
——スロージョギングを始めてどんな変化を感じましたか。
信号を走って渡ると息切れしたり、バスを追いかけられないような状態から1キロ走れたので、最初は「何が起きたの?」っていう感じで。自分の人生に「走ること」が入ってきて嬉しかったです。
自分の生活はこんなに変わったのに、思ったよりダイエットに効果が感じられなかったのは残念でした。でも見た目は、キュッと絞られてきましたし、検診の数値が改善されたんです。
今までは健康診断の結果って頑張ったところで良い方向に大きく変化することはないと思っていたのですが、目に見えて数字が変化したので、効果を実感できた出来事でした。
——睡眠も改善されたそうですね。
明らかに改善されました。長い期間、色々なことを試しても寝つきの悪さや眠りの浅さなど睡眠の質の悪さに悩んでいたのですが、スロージョギングを始めてから、7時間気持ちよく眠れるようになりました。
——メンタルヘルスの面での変化は感じましたか。
土台の部分で自分を好きになることができました。「スポーツができるようになって鼻高々」というのとは違って、走れるようになって、子どもの頃走っていたなと思い出したり、実際には行きませんが、狩りにも行けるような野生の感覚のようなものを得たりして、自分を誇らしく思いました。
早くに閉経して、長期間謎の不調にも苦しめられ、セルフイメージでは「終わった人」という感覚で、「もうおばあちゃんなんだから優しくしてよ」「この先、空元気で若い人についていかなきゃいけない」と暗い気持ちでいました。
スロージョギングに出会って、できることが増えて、世界観が変わったと言いますか、年をとっても意外とやれるじゃんという感覚も持てるようになりました。健康寿命をふまえて、どう人生を閉じていくかということばかり考えていたのですが、スロージョギングを始めて元気になってからは、「まだ先が長いから、趣味も増やしていいし、仕事も意欲を持っていい」という感覚になっています。
——新しく始めてみたいことはありますか?
スロージョギングを始める前から卓球をやっていて、体力がないので、みんなの後ろをついていこうという温度感だったのですが、元気になってきたので、ちゃんと戦いたいなって。地域には高齢でも鋭いスマッシュを打ったりと、丈夫で元気な方がたくさんいるので、そういう人たちに鍛えてもらっているところです。
※後編に続きます。
【プロフィール】
まき りえこ
アラ還のコミックエッセイスト。ブログ「ちくわの穴から星☆を見た」でアメブロ育児カテゴリー1位。著書に「小学生男子のトリセツ」(扶桑社)、「オトナ女子の謎不調、ホントに更年期?」(集英社)など。夫と猫と共に福岡市在住。
ブログ
https://tikuwanoanakarahosiwomita.blog.jp/
※「スロージョギング®」は一般社団法人日本スロージョギング協会の登録商標です。
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