「能天気な人」と何が違う?悩みがまったくない人、悩みに強い人の考え方とは|臨床心理士が解説

「能天気な人」と何が違う?悩みがまったくない人、悩みに強い人の考え方とは|臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2025-07-21

「悩みがまったくない人」と聞くと、何も気にせずのんびり生きている「能天気な人」を思い浮かべるかもしれません。でも実際には、そうした人たちは悩みがないのではなく、日頃から悩みを生みにくくする工夫をしたり、悩みにとらわれすぎない考え方を身につけていたりします。今回は、そんな「悩みに強い人」が実践している習慣や考え方についてお話しします。

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なぜ「悩み」は生まれる?

悩みの原因は、つらい出来事そのものだと思われがちですが、実は「その出来事をどう受けとめるか」という考え方によって生まれます。

たとえば、「友達から連絡が来ない」という出来事に遭遇したときの、AさんとBさんの様子を観察してみましょう。

・Aさん:「嫌われたのかな?」と不安になり、何も手につかなくなる

・Bさん:「まぁそのうち来るだろう」と考え、自分のやるべきことに集中する

このように、同じ状況に置かれても「考え方・とらえ方」によって、気分や行動は大きく変わります。

つまり、悩みを減らすカギは、出来事そのものではなく、自分の「考え方」「とらえ方」に気づき、それを見直すことにあるのです。

悩みがまったくない人の考え方

悩みがない
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悩みを減らすカギが「考え方」や「とらえ方」にあることがわかりました。
では次に、悩みにとらわれない人たちは、ふだんどのように考え、どんな行動をしているのかを見ていきましょう。

規則正しい生活で悩みに強い心身をつくる

生活が不規則になると、自律神経が乱れて気分も不安定になり、些細なことでも悩みやすくなってしまいます。
悩みにとらわれにくい人は、そんな状態を防ぐために、次のような生活習慣を大切にしています。

・睡眠: 睡眠不足はメンタル不調の大きな要因です。「よく眠れた」と感じる睡眠が得られると、感情が安定し、心身の不調も感じにくいとされています。

・運動: ウォーキングやスクワットなどの軽い運動でもストレスを軽減する効果があり、幸福感や意欲向上に役立つ脳内物質「セロトニン」の分泌を促進します。

・食事: 栄養バランスが整った食事、特にセロトニンの材料となる「トリプトファン」を含む食品(大豆製品、乳製品、卵など)を意識すると良いでしょう。また「噛む」という行為がセロトニンを活性化させるともいわれています。。

考え方の幅を広げる

悩みやすい人は、気づかないうちに自分の感情や気分に振り回されて、悩みを悪化させてしまうことがあります。
たとえば、プレゼンの準備中に「不安」が浮かぶと、「この資料では不十分かも」「失敗したらどうしよう」といった考えが頭を支配し、動けなくなることもあります。その結果、やらなければいけない準備さえ手につかず、ますます「プレゼン失敗」に近づいてしまいます。

一方で、悩みがまったくないように見える人たちは、感情や思考を整理し、冷静に対処することを大切にしています。
そのための手順は次のとおりです。

1.まず、感情が浮かんできた【出来事】を明確にします
 例:プレゼン資料を修正して読み返していた

2.次に、その出来事に対して生じた【感情】を書き出します
 例:不安、緊張

3.最後に、そのとき浮かんだ【思考】を整理します
 例:「この資料では不十分かも」「失敗したらどうしよう」

ここまで整理できたら、「本当にその考え方しかないか?」と視点を広げてみましょう。

たとえば、

「もう十分に準備はできている」

「少し失敗しても、伝えたいことが伝われば大丈夫」

「これまでのプレゼンも大きなミスはなかった」

このように他の考え方にも気づけるようになると、ネガティブな思考や感情に引っ張られにくくなり、悩みにもとらわれにくくなります。

とりあえずやってみる

私たちは悩みを「すべて解消できる方法」や「これさえやれば完璧という方法」を求めがち。

でも、どんな悩みにも「完璧な対処法」があるとは限りません。いろいろ方法を思いついても、「でもこれじゃ全部は解決できないし…」と考えこんでしまい、何も行動できないまま、悩みが長引くこともあります。

一方で、悩みにとらわれない人は違います。「まずは、できそうなことからやってみよう!」と考え、行動に移すのがとても早いのです。

1.対処法をたくさん見つける

たとえば、「資格勉強の時間がない」という悩みにぶつかった場合は、

・通勤電車で参考書を読む

・起床時間を30分早める

・1分でも勉強すればOKルール

など、思いつくままにアイデアを出してみましょう。

2.取り組む対処法を決める

次に、どの対処法から取り組むか検討するため、1で見つけた対処法の「効果」や「実行可能性」を検討します。

たとえば、

・通勤電車で参考書を読む(効果:30%、実行可能性:70%)

・起床時間を30分早める(効果:90%、実行可能性:50%)

・1分でも勉強すればOKルール(効果:10%、実行可能性:90%)

のような形です。

このなかで、効果があり、実行できそうなものから取り組んでいきましょう。

大切なのは、悩みを一気にゼロにしようとしないこと。

「できることから少しずつ取り組む」ことが、悩みにとらわれない第一歩です。行動することで、悩みの輪郭がはっきりしたり、新しいヒントが見えてきたりすることもあります。
悩みがまったくない人は、「考えすぎて止まる」のではなく、「やってみてから考える」柔軟さを持っているのです。

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