60代シニアライフYouTuber流・地域活動と人付き合いで大切にしている境界線の引き方|経験談
YouTubeチャンネル「60歳からの幸せライフ」を運営するライフさんは、60歳になってからYouTubeでの発信を始めました。ライフさんの著書『元専業主婦・今ユーチューバー 64歳、やめて捨てたら手に入った、幸せな暮らし』(扶桑社)では、子育てが終わってからの片付け、人付き合い、やめてよかったことなどの観点で、すてきなシニアライフの秘訣が書かれています。インタビュー後編では、地域の人付き合いで大切にしていることや、YouTubeを始めた経緯、発信の軸について伺いました。
地域のお付き合いのポイント
――YouTubeでも清掃活動の様子を載せていましたし、本書にも地域での繋がりを持っていることを書かれていました。ご近所でのお付き合いを始める前にハードルを感じることはありましたか?
私は始める前のハードルを感じにくい人間でして、地域活動もただ忙しくて行くことができていなかっただけなので、時間ができたときには、すぐに始めていきました。
昔からPTA活動もよくやっていたんです。私の時代は専業主婦はまだ多かったですが、それでも積極的に挙手する人はそんなにはいなくて。誰もいないなら私がやります!と自ら引き受けるタイプで、子どもの幼稚園から高校までずっとPTA活動を続けてきました。
新しい人のコミュニティに入っていったり、人前で話したりすることも全然平気なので、そのあたりでハードルを感じたことはないんです。
――PTA活動も大変と聞きます。
副会長を経験したこともあって、大変ではありました。ただ、役職に就くことで学校に意見を伝える機会も得られて、そこで人生経験を積ませていただけたかなと思っています。
たとえば子ども同士でいじめ問題があったとき、強く主張をされる親御さんに押されて、声の小さな親御さんが悪者にされてしまっていることもあって。よくよく話を聞いてみると、事実と主張が食い違っていることもありました。
誰かが矢面に立たないと、先生が主張の強い親御さんの言いなりになってしまうこともあるので、クラスの保護者の代表として、先生に意見を伝えたこともあったんです。それでもなかなか状況が変わらないこともあって、お役に立てたかはわからないのですが……。
――上手く伝えられなかった方からしたら、ライフさんが味方になってくれたのは心強かったと思います。地域の活動に関して、「地域の人となんでも話さない」ということも書かれていましたが、どんな線引きをされているのでしょうか?
地域の役員になったときに、何度か飲み会に誘われて、そういう集まりは久しぶりだったので楽しかったのですが、お酒が入ることで、私的な話を洗いざらい話し始める方もいて。お酒の場は感情のさらけ出しも起きやすいので、悪口みたいな話も始まってしまうんです。
その場では話を合わせてしまって、帰宅してから「あんなこと言わなきゃよかった」と後悔することもあって。なので、お互いに見せなくていい領域を守りながらお付き合いしていくことは、自分の感情を守るためにも大切なのだと思いました。
当時は地域の企画部に入っていて、飲み会自体は有志での参加だったので、だんだんと飲み会には参加せずに、会議や作業だけ参加するようにしていました。飲み会が好きな人は毎回参加しているので、人それぞれ好みもあるのだと思います。今は忙しくなってしまったので、サポート会員という形で地域と関わっています。
60歳を過ぎてからYouTuberに
――YouTubeを始めたのは60歳を過ぎてからだったのですよね。
あるとき娘から「お母さん、YouTubeやってみたら?」と言われたんです。娘は軽い気持ちで言ったそうで、本当に私がYouTubeを始めるとは思っていなかったそうなんですけどね(笑)。
それまでYouTubeは見るだけで、動画制作の知識もノウハウもない状態で、とりあえず始めてみました。無料でも使える動画編集アプリがあって、初期費用をかけずに始められたこともハードルが下がったと思います。
YouTubeに動画の作り方の解説動画があるので、それを参考にしながら、自分でも試しにつくってみることを繰り返していました。
――動画制作自体のおもしろさはあるものの、発表する以上、見てもらいたいものだとも思います。始めたばかりですと、知ってもらうまでも大変だったと思うのですが、いかがでしたか。
最初は1本動画を出せば、そこそこの人数に見てもらえるものだと思っていたんです。でも実際には、1日3人とか、そういうところからのスタートでした。それでも3人も見てくれた人がいたのはうれしかったですけどね。
始めたばかりの頃は、動画制作にも時間がかかって、月に2、3本しか作れなかったですし、見てもらえないしで、がっかりして。最初の1か月くらいで、やる気がなくなっちゃったのですが、娘から「やめちゃったの?うちの子が楽しみにしているのに」と言われて、孫が楽しみにしてくれてるなら、やらなきゃ!と思って。
そのうち、撮影・編集・投稿の流れがつかめてきて、ルーティーンのようになって。その頃、YouTubeには毎日投稿をしている人がいることを知って、私もやってみようと思い、3カ月ほど毎日投稿もしていました。少しずつ見てくださる人も増えてきた頃です。
――YouTubeの毎日投稿を一人で続けていらしたなんて、大変だったと思います。
続けていく中でさすがに疲れてしまって。毎日投稿することは誰かに頼まれたわけでもないので、見直してもいいんじゃないかと思って、1日ごとにしたらすごく楽になりました。今も1日おきのペースは継続しています。
元々、物事を続けていくことは得意なのと、やり始めたら面白くなったこともあって、今も無理なく続けられています。
――最初から顔出しもされていたのでしょうか。
そうですね。娘から「60代で顔出ししている人はたくさんいて、お母さんは無名なんだから、顔を出さなきゃ他の人と違いを出せないよ!」とアドバイスをもらって、「そうなんだ」と思ってあまり深く考えずに顔出ししていました。
同世代で日常的にYouTubeを見る人はそんなに多くないと思うので、「近所の人に見られるかも」という心配もあまりなかったです。本名も出していないですし、髪型や洋服の雰囲気も昔とは違うので、学生時代の人も見たところで気づかないでしょうし。
ESSEのオンラインで連載をしていて、久しぶりに会った友人から「これ、そうだよね?」と聞かれたのが初めてです。それでも確信を持っていたわけではないようなので、個人のYouTubeチャンネルを知り合いが見つけるということは、私の場合、可能性としては低いと思いました。
――発信するにあたって、ご自身の中で大切にしている軸やルールはありますか?
一番大切にしていることは、ネガティブな言葉を使わないことです。「言霊」はすごく大事だと思ってるんです。特に文章で表現することもあるので、文字として残るものは前向きなエネルギーのある言葉しか使いたくないという思いがあります。
私自身が60歳になる直前に、「おばあちゃん」になるという感覚によって落ち込んだことがありましたが、60歳以降も年齢による変化や区切りによって、自己肯定感が低下する感覚を持ち続けている人は少なくないと思うんです。それに同世代は専業主婦として、家族を支えることを第一に生きてきた女性も多いと思います。言い換えれば、自分自身を中心には生きてこなかった世代です。
動画でも「つらい思いをして生きてきました」「友達が少なくて寂しいです」というコメントをいただくことも少なくありません。私自身も60歳を過ぎてから元気になれたので、「これからでも大丈夫ですし、今からだと遅いということもないですよ」と伝えたいという思いがあります。
今は80代でも元気な方はたくさんいますし、60代・70代が元気だと、日本社会自体がもっと元気になるんじゃないかとも思うんです。「落ち込んだり、元気がなくなるにはまだまだ早いですよ。体の変化はあっても、気持ちだけでも元気でいきましょう」これは自分にも言い聞かせている言葉ですね。
【プロフィール】
ライフ
元専業主婦のシニアYouTuber。「60代の暮らしって悪くないよ」をテーマに、シンプルなインテリアや生活をYouTube『60歳からの幸せライフ』にて発信。ものや人間関係に執着しすぎず、上手に手放す姿が人気。今回が初の著書となる。
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