「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(2)東京の父が突然の夜間の徘徊!どうすればいいの?

「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(2)東京の父が突然の夜間の徘徊!どうすればいいの?
写真/野口さとこ
Saya
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2025-07-15

親の老いに向き合うというのは、ある日突然はじまるものです。わたしの場合、それは父の“夜間の徘徊”というかたちでやってきました。これまでは京都での暮らしや移住生活のことを書いていましたが、その裏では東京にいる父の認知症が進行し、家族で介護体制をどう整えるかに奔走していました。介護というと、大変そう、重たそう…そんなイメージがあるかもしれません。でも、わたしにとっては、家族とのつながりを見つめ直し、人の優しさに心動かされることが増えた、そんな時間でもありました。 この連載では、認知症介護の体験を通して、わたしが出会った「幸せの秘密」を、少しずつ綴っていきたいと思います。

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始まりは、2024年2月中旬のこと。朝方、東京の母から携帯に着信があり、折り返すと、「お父さんが昨日の夜、2時か3時くらいだと思うけど、寝巻きのまま家を出ていっちゃって、わたしは2階で寝ていて知らなかったんだけど、パトカーで警察の人と一緒に帰ってきて、それで起きたの」と言います。

その前年から、「お父さんの物忘れが激しくなってきて、認知症だと思うの。病院に連れていかないと」とは何度か同居の母に言われていたのですが、父自身が嫌がっていたこと。母方の不動産を処分する話が出て、そちらの手伝いに時間を取られていたことで、対応が遅れてしまっていました。コロナ禍で会えない数年のうちに両親も80代になり、急激に歳を取ったように感じてはいましたが、いきなり徘徊するほどだとは思いもせず、まさに青天の霹靂でした。

聞けば、父は時折、睡眠導入剤を服用していたようで、現役の看護師の三女いわく、「睡眠導入剤が合わずに、意識が飛んだのではないか」とのこと。夜中、トイレに起きたときに左に行けば、リビングと寝室があるのに、なぜか右手の玄関に向かい、二重ロックを開けて、さまよい出してしまったと言うのです。

半年ほど経ったとき、父本人から聞いたところによると、意識が戻ったときには暗闇のなかを歩いていて、「遠くで太鼓の音が聞こえていた」と言います。小雨が降るなか、パジャマ姿で、足元は素足にサンダル。自分がどこにいるかもわからないまま、トボトボと歩いていると、遠くにオレンジ色の光が見えてきた。そちらに向かって歩くと、大きな通りで車も走っている。道路沿いのベンチに座っていると、店から女の人が出てきて、声を掛けてくれたのだそうです。深夜の徘徊老人に慣れているのか、彼女が警察署に電話してくれたとか。幸い、その頃には正気に返っていた父は住所を言えたので、パトカーによる帰還となったのでした。しかも父が心細いだろうと、その方は、自宅までパトカーに同乗してくれたそうです。

野口さとこ

そう、ここにも天使がいたのでした。この時間に営業していたということは、24時間のファミリーレストランか、ネットカフェでしょうか。次女などはお礼を言いたいと、警察署はもちろん、道路沿いのいくつかの店に電話をしてくれたのですが、結局、わからずじまい。一度、ある健康ランドのようなところに次女が電話したときに、向こうで「いい、いい、いないって言って」という女性の声が聞こえたらしいので、その方なのかもしれません。夜遅くまで働いて、徘徊老人のことまで気にかけてくださる方がいるから、社会はまわっているのだなあと、改めて、人の優しさについて考えたことでした。

→【記事の続き】「父の認知症から学んだ幸せの秘密」(3)看護師の三女のアドバイスのもと、認知症外来を予約こちらから。

文/Saya

東京生まれ。1994年、早稲田大学卒業後、編集プロダクションや出版社勤務を経て、30代初めに独立。2008年、20代で出会った占星術を活かし、『エル・デジタル』で星占いの連載をスタート。現在は、京都を拠点に執筆と畑、お茶ときものの日々。セラピューティックエナジーキネシオロジー、蘭のフラワーエッセンスのプラクティショナーとしても活動中。著書に『わたしの風に乗る目覚めのレッスン〜風の時代のレジリエンス』(説話社)他。
ホームページ sayanote.com
Instagram     @sayastrology

写真/野口さとこ

北海道小樽市生まれ。大学在学中にフジフォトサロン新人賞部門賞を受賞し、個展・グループ展をはじめ、出版、広告撮影などに携わる。ライフワークのひとつである“日本文化・土着における色彩” をテーマとした「地蔵が見た夢」の発表と出版を機に、アートフォトして注目され、ART KYOTOやTOKYO PHOTOなどアートフェアでも公開される。活動拠点である京都を中心にキラク写真教室を主宰。京都芸術大学非常勤講師。
ホームページ satokonoguchi.com
Instagram  @satoko.nog

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