骨折リスクが上昇する可能性！？ランナーに警告したい「栄養不足の落とし穴」適切な栄養摂取量は？

新たな研究では、約6,000人のランナーのデータを含む10件以上の先行研究の分析が行われた。その結果、摂取するカロリー、脂肪、食物繊維の量が怪我のリスクに影響を与える可能性があることが判明した。特に女性においてその傾向が顕著だった。

食事内容と怪我の関係

この分析では、以下のことが明らかになった。

• 怪我をしなかった同年代のランナーに比べて、怪我をした女性ランナーは、1日あたりのカロリー摂取量が449キロカロリー少なく、脂肪の摂取量が20グラム少なかった。
• 女性ランナーにおいて、摂取カロリー、及び脂肪の摂取量が少ないことは、骨への負荷による怪我のリスク上昇と関連していた。
• 怪我をしなかったランナーに比べ、怪我をしたランナーは、男女ともに1日あたりの食物繊維の摂取量が3グラム少なかった。

意外なことに、タンパク質、アルコール、炭水化物、及びカルシウムの摂取量は、怪我のリスクに影響を及ぼさなかった。

分析対象である先行研究それぞれにおいて、怪我の定義や研究対象集団、食事の評価方法が多様であったため、「研究間の結果を比較したり、結論を導き出したりすることに苦労しました。」と、この研究の著者で南オーストラリア大学研究者エリン・コールバッチ氏は話す。そのため、今後の研究では、統一された怪我の定義と確証された測定方法を用い、より精度を高めた調査を長期的に行うことが必要だと述べている。

カロリー、脂肪、食物繊維と怪我のリスク

カロリーや脂肪の摂取不足が、ランニングによる怪我のリスクを高めるのは理にかなっているとカリフォルニア大学サンディエゴ校のサラ・メリル医学博士は言う。

カロリー

ランナーは、筋肉量や余分な脂肪が少なく、エネルギー不足の際に体がエネルギー源として利用するものが少ない傾向にあるとメリル医学博士は言う。「筋肉を修復しようとしても、食事からの十分な栄養摂取がない場合、体は栄養を骨から取り込むようになり、これが怪我のリスクを高める可能性があります。」と説明する。

脂肪

脂肪は骨と筋肉の健康の鍵となるビタミンの吸収のために不可欠であり、ホルモンの生成や細胞膜の形成を助け、炎症の制御にも関与するとコールバッチ氏は述べる。そして、脂肪の摂取量が不足するとこれらの機能が乱れ、怪我のリスクが高まる可能性があると言う。

食物繊維

適切な量の食物繊維の摂取は腸内細菌叢の生態系を健やかに保ち、炎症の軽減につながる可能性があるという。バランスの取れた腸内細菌叢は免疫機能のサポートや、痛みの感受性の調節にも役立つため、「これらのプロセスの乱れは、骨への負荷による怪我のリスクを高める可能性があります。」とコールバッチ氏は述べた。

怪我を防ぐために

食事はランニング関連の怪我のリスク要因の一つに過ぎないが、安全を最優先に考えるなら、やはり考慮すべき要素だと専門家らはアドバイスする。走行距離を伸ばしたいランナーは、ナッツやアボカドなどの食品から食物繊維と健康的な脂質を補給する必要があるかもしれないとメリル医学博士は述べる。

米国登録栄養士ヤシ・アンサリ氏はトレーニングを継続するための十分な食事を摂ることが大切だと強調し、「バランスの取れた食事を心がけ、十分なカロリー、健康的な脂質、果物や全粒穀物などの食物繊維が豊富な炭水化物、適切なタンパク質を摂取し、回復を促すことが重要です。これにより、怪我のリスクの軽減が期待できます。」と話す。ランナーの目標や活動レベルによって必要な栄養は異なるものの、アメリカスポーツ栄養士協会（ASPA）は、1日の総カロリー摂取量の50~65%を炭水化物、20~35%を脂質、10~20%をタンパク質から摂取することを推奨している。それでも、活動レベルや生活スタイルを考慮した栄養計画を立てるために、医療専門家に相談することが重要だとアンサリ氏は言う。「栄養は、パフォーマンスだけでなく、長期的な健康にも強い影響を及ぼします。」と述べている。

出典

https://unisa.edu.au/media-centre/Releases/2025/running-on-empty-poor-nutrition-increases-injury-risk-for-female-athletes/

https://www.health.com/study-shows-link-between-diets-and-sports-injury-risk-11718335