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最新研究で『プラスチックの化学物質』が心疾患や早期死亡リスクを高めると判明｜今すぐできる対策とは

山口華恵 2025-05-15

私たちの生活に欠かせないプラスチック製品。しかし最近の研究でプラスチックに含まれる「フタル酸エステル」と呼ばれる化学物質が、心臓病などによる死亡リスクを高めていることが示唆された。この物質が心臓病や早期死亡のリスクと関係していることが、最新の科学で明らかになったからだ。「便利」の裏側に潜むこの“見えない毒”に知らず知らずのうちに晒されているかもしれない。

現代人のほとんどが、毎日フタル酸エステルに晒されている

フタル酸エステルは、プラスチックを柔らかくしたり、香りを持続させたりするために使われる化学物質のこと。食品包装材、保存容器、化粧品、洗剤、柔軟剤、医療機器、子どものおもちゃや学用品など様々なものに含まれる。この物質はプラスチックと“化学的に結びついていない”ため、使用や加熱によって空気中、食べ物、水、皮膚を通じて体内に入り込みやすいのが特徴だ。国民健康・栄養調査（NHANES）では、アメリカ人の95％以上の尿から、何らかのフタル酸代謝物が検出されている。つまり、現代人のほとんどが、毎日何らかの形でフタル酸にさらされているという。

科学が示す「心臓へのダメージ」

2025年4月29日に発表された今回の研究は、ニューヨーク大学のレオナルド・トラサンデ医学博士らの研究チームが、2018年、5,000人以上の40〜64歳の成人を対象に分析を行い、フタル酸の尿中濃度と死亡リスクとの関係を調べたものである。その結果、血中に特定のフタル酸代謝物（DEHPの代謝物MEHP、MEHHPなど）が高い人は、心血管系の病気で死亡するリスクが20〜40％も高いことが判明した。研究者たちは、フタル酸エステルへの長期曝露が「動脈硬化や心筋の機能障害を引き起こしている可能性がある」としている。さらに、心拍リズムにかかわる交感神経系の乱れや、心筋細胞のカルシウム代謝への影響も指摘されており、「フタル酸エステルは単なるホルモンかく乱物質ではなく、直接的に心臓の構造と機能に作用する恐れがある」との意見も出ている。

なぜ心臓に悪いのか？3つの問題点

慢性炎症を引き起こす・・・血管内に炎症を引き起こし、動脈硬化を促進。
心筋へ直接作用する・・・心筋細胞のカルシウム調節に干渉し、心拍リズムや収縮力に異常を生じさせる可能性。
ホルモンの正常なはたらきを乱す・・・エストロゲンや甲状腺ホルモンのバランスを崩し、血管の柔軟性や心拍機能に悪影響を及ぼす。

子どもや高齢者は特にリスクが高い？

子どもや妊婦、慢性疾患を持つ高齢者は、フタル酸エステルの影響を受けやすい。発育中の子どもは解毒機能が未熟であるため、少量でも大きな健康影響が出やすく、またホルモン系がまだ安定していないため、成長や心臓の発達に悪影響を及ぼすリスクが高いのだ。また、フランスのINSERM（国立保健医学研究所）の調査では、妊婦の血中のフタル酸濃度が高いと、生まれてくる子どもの心臓や血管の発達に影響が出る可能性が示唆された。

日常生活でできる４つの対策

フタル酸エステルは完全に避けることが難しい化学物質が、次のような工夫で曝露量を減らすことが可能だ。

プラスチック容器での加熱を避けて電子レンジにはガラス製・陶器製の容器を利用する。
「フタル酸フリー」「無香料」と明記された製品を選ぶ（化粧品・洗剤・柔軟剤などの表示をチェックする）。
加工食品より手作りを意識する（包装材や保存料の影響も抑えられる。）
子ども用おもちゃ・学用品は安全基準を確認（日本ではST基準をチェック）。

「便利」の代償

プラスチックに囲まれた現代の生活では、フタル酸エステルを完全に排除することは不可能かもしれない。しかし、私たちが毎日選ぶものには、確実に健康への影響が積み重なっていく。「便利さ」と「安全性」は時に相反する。便利さと健康、どちらを優先するか。その選択は、今日の買い物カゴの中身から始まっているのかもしれない。