たった1５分でも寝不足は“脳”が縮む！？思春期の子供の睡眠時間と脳の驚くべき関係｜最新研究が示唆

思春期の若者たちを対象にした研究において、睡眠時間が15分長くなるだけでも、脳の構造や活動、タスク遂行能力に違いが見られることがわかった。

睡眠習慣と脳の機能

イギリスのケンブリッジ大学と中国の復旦大学の研究者は、「思春期脳認知発達（ABCD）研究」（脳の発達と子どもの健康に関するアメリカの最大規模の長期追跡調査）の3,222人のデータを活用し、9~14歳の子供の脳画像、認知機能テスト結果、睡眠パターンの情報を分析した。睡眠パターンは、睡眠や運動量等を計測できる装着型デバイスFitbitを使用し、測定された。

この分析により、最も良い睡眠習慣を持つ若者でも、専門家の推奨よりも睡眠時間が短いことが判明した。アメリカ睡眠医学会によると、13~18歳の若者は一晩あたり8~10時間の睡眠が必要とされている。

また、参加者である思春期の若者たちは、概ね3つのグループに分類できることがわかった。

• グループ1：全体の約39%を占め、平均睡眠時間は7時間10分。就寝時間と入眠時間が最も遅く、起床時間が最も早かった。
• グループ2：全体の24%を占め、平均睡眠時間は7時間21分。このグループは、すべての睡眠特性において平均的なレベルを示していた。
• グループ3：全体の37%を占め、平均睡眠時間は7時間25分。就寝時間と入眠時間が最も早く、睡眠中の心拍数が低かった。

グループ間の学業成績に有意な差は見られなかったものの、語彙、読解力、問題解決能力、集中力など認知機能を測定するテストでは、グループ3がグループ2より優れ、グループ2はグループ1より優れていた。グループ3は脳の体積が最も大きく、脳機能も最も良好で、グループ1は脳の体積が最も小さく、脳機能も最も低かった。

「各グループの睡眠時間の差は比較的小さく、最も良い睡眠と最も悪い睡眠の差はわずか15分強でしたが、脳の構造や活動、タスクの遂行能力に違いが見られました。これは、人生の重要な時期に十分な睡眠を取ることがいかに重要であるかを改めて示しています。」とケンブリッジ大学精神科部門のバーバラ・サハキアン教授は言う。さらに「睡眠時間の小さな違いが時間とともに蓄積され、結果、大きな差を生むことを示唆しています。」と述べた。

研究の筆頭著者である復旦大学のマ・チン博士は、「この研究は、より良い睡眠を取る若者が優れた脳機能やテスト成績を示すという証明ができるものではない」としながら、「しかし、この仮説を支持する複数の研究が存在します。例えば、睡眠が記憶、特に学習において重要となる記憶の定着に有益であることが示されています。」と述べている。

睡眠習慣と睡眠の質

研究チームは参加者の心拍数の測定も行った。グループ3が睡眠状態全体で最も低い心拍数を示し、グループ1が最も高い心拍数を示した。低い心拍数は通常、健康状態が良好な兆候であるのに対し、高い心拍数は不眠症や頻繁な覚醒、日中の過度の眠気など、睡眠の質が悪い場合に伴う傾向がある。また、睡眠パターン、脳の構造と機能、認知機能の差は調査時点の2年前と2年後にも確認された。

若者の睡眠に向けた専門家からのアドバイス

サハキアン教授は、青少年の睡眠の質の改善と認知機能の向上のためには、定期的な運動を推奨している。定期的な運動は睡眠の質の改善の手助けとなる。また、スマートフォンやパソコンを夜遅くに使用しないようアドバイスする。オックスフォード大学睡眠医学教授コリン・エスピー氏は「社会として、睡眠にさらに重点をおくべきです。中学校での教育に睡眠の健康に関する内容をより多く取り入れることなどが挙げられます。」と述べている。

出典

https://www.cam.ac.uk/research/news/adolescents-who-sleep-longer-perform-better-at-cognitive-tasks

https://www.theguardian.com/science/2025/apr/22/teenagers-bed-early-sleep-longer-sharper-brains-study

https://www.sciencealert.com/just-15-extra-minutes-of-sleep-is-linked-to-brain-benefits-in-young-people

https://www.bbc.com/news/articles/cvg7j0pg1e2o