【男の子と性の会話はハードルが高い?】専門家が解説!思春期男子の「性教育」で気を付けるべきこと

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【男の子と性の会話はハードルが高い?】専門家が解説!思春期男子の「性教育」で気を付けるべきこと

ここ数年で社会における包括的性教育への関心は高まり、性に関する話は少しずつタブー感が薄れつつある。一方で、男子・男性の性の悩みは「悩みを打ち明けるのは男らしくない」等のジェンダーバイアスも影響し、話しにくさは残っているのではなかろうか。 性教育は「性暴力の被害者・加害者・傍観者にならないためにも必要」とも言われるが、「加害者=男性、被害者=女性」のイメージも強い。『マンガでわかる オトコの子の「性」 』(合同出版)の著者で、性の啓発活動を行うNPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さんに、男の子の性の悩みや男の子への性教育での注意点について伺った。

包茎・ペニスの大きさ・マスターベーション……男の子の性の悩み

——男の子からはどのような性の悩みが聞こえてきますか。

ピルコンで行っているメール相談や性教育講演前のアンケート寄せられる声として、思春期の男の子からは生殖器に関することが多いです。包茎についてや、性器の大きさ、マスターベーションの頻度についての質問や相談をいただきます。また、大人の男性になると、性行為のときの射精や避妊、性感染症の悩みが増えます。

——貴著『マンガでわかる オトコの子の「性」 』(合同出版)でも包茎で悩む主人公のエピソードがでてきます。

包茎とは、性器の先端(亀頭)を覆う包皮を引っ張ってもむけない「真性包茎」を指します。引っ張れば皮がむけるいわゆる「仮性包茎」は、病気ではなく、治療や手術の必要はありません。日本人男性の6~7割が仮性包茎と言われていて、珍しいことでもないのですが、悩む人が多くいます。大人になっても皮をむくのが難しい場合には、雑菌がたまりやすく炎症を繰り返す原因になったり、排尿時に方向のコントロールが難しかったりという悩みにも繋がりますので、保険適用で相談のできる泌尿器科の受診をお勧めします。また、無理に皮をむこうとして戻せなくなり、亀頭を締め付けて鬱血してしまう「カントン包茎」の場合には、すぐに泌尿器科を受診する必要があります。

包茎の場合には、皮と亀頭の間に垢が溜まりやすく、それが臭いや炎症の原因になります。毎日お風呂のときに少し皮をむいて洗って戻すようにして清潔に保つことが重要です。「亀頭が出たままの方がカッコいい」と思っている人もいるのですが、カントン包茎にならないために包皮を必ず元に戻すのも大切ですので覚えておいてください。

生まれた時、男の体を持つ赤ちゃんはほぼ真性包茎です。思春期を過ぎた頃から皮がむけるようになる人が多く、子どもの包茎について治療が必要ではと心配する必要はありません。幼いときから自分の性器を自分で洗って清潔に保つことを伝えることが大切ですが、既にお子さんが思春期を迎えていることもあると思います。異性の親からは言いづらい時は、パートナーや身近な大人の男性から言ってもらう方法もありますし、本や動画などのコンテンツを利用して伝える方法もあります。

——なぜ男の子は「包茎は恥ずかしい」と思っているのでしょうか。

書籍でも描いたのですが、男子・男性向けの雑誌には「包茎はカッコ悪い」「包茎は大人のペニスではない」「包茎だとモテない」などのメッセージが載った美容クリニックの包茎手術の広告が掲載されていることがあります。

美容整形の手術で、最初は10万円と聞いていたにもかかわらず、手術をするとなった場合に痕が残らない方法や亀頭を大きくする注射が必要などとオプションで加算され、結果的に数十万円、人によっては100万円以上かかったという話も聞きます。また手術を受けた後で、日常生活の中での痛みや性感が落ちてしまうことに悩む声も聞きますので、包茎について相談したい場合には泌尿器科の受診を勧めています。必ずしも手術を必要としない場合もあります。

女性に聞くと「包茎がどういう状態なのかもわからない」という方は多いです。大人から子どもに包茎について伝える場合には「女性は包茎かどうか気にしない人も多いし、そもそも包茎が何か知らない人も多いんだよ」と伝えるのも一つの方法ですね。

——貴著でも包茎や性器の大きさについての悩みが取り上げられています。親や周囲の大人はどう教えるべきでしょうか。

まずは性について安心して話し合える関係性を築くことが大事です。本人が「恥ずかしい」「話すのが嫌」と思っているときに話したり聞かせたりすると、「無理やりプライベートに踏み込まれた」と逆に関係性が悪くなってしまう場合があります。ですので、伝え方としては「どう思う?」と聞いてみるとか、普段の会話の中で「こういう悩みってよくあるらしいよ」とか、お子さんから話しやすい雰囲気を作ってみてください。いきなり個人の抱えている悩みの核心に迫るよりは、よくある話として一般論から入った方がハードルが低いと思います。

最近では性教育関連書籍も複数刊行されていますし、Webサイトや動画でも性教育の情報がありますので、ツールを会話のきっかけにする方法もあります。面と向かって渡すのは抵抗があるという場合には、トイレに本を置き、トイレに入っている間に読めるよう工夫をしている声も聞いたことがあります。

なお、悩むことや恥ずかしいと思うこと自体が悪いことや、正さなければいけないことではありません。お子さんがそのように感じている背景として、メディアや社会から発せられた「性はタブー」というメッセージがあるのかもしれません。焦らず、子どもの感じている率直な気持ちにまずは寄り添ってみることが大切だと思います。

よりハードルが高い「男の子の性の相談」

——男の子への性教育で特に気を付けたほうがいいことはありますか。

性に関する相談自体がハードルを感じやすいものですが、男の子は女の子以上に身近で性に関する相談をする人がいないと思う人が多いことが様々な調査からわかっています。たとえば、2021年のジョイセフの調査では、性の悩みについて相談相手がいないと答えた若者男性は3割以上という結果があります。男の子が性について悩むこと自体「男らしくないのでは」「男として魅力的ではない」といったジェンダーの問題とも組み合わさって、相談が困難であることは大人が知っておくべきことです。意識的に「相談してもいい」「悩んでもいい」というポジティブなメッセージを伝えていく必要があると思います。

また、男の子は性に関することを下ネタ・笑いの対象として受け取っている場合もあれば、タブーとして学んでしまっているケースもあります。性に関する話は、嫌なこと・恥ずかしいこと・面白おかしいことではなく、すごく大切なことであり、健康や幸せな人生に繋がるということを、大人自身も意識しながら伝えていくことが重要です。

ただ、大人側も性について学ぶ機会が乏しく、日常会話の延長線上として真面目に性の話をしてこなかった人や恥ずかしいと感じる人も少なくないと思います。一度に全部伝えきる必要はないので、大人も書籍などの表現を参考に少しずつ話す練習をしたり、最近のニュース等から徐々に会話の中に織り交ぜてしたりしていくといいと思います。

——社会全体で見ると、依然として教育は母親に負担が偏りがちです。「父親が一緒に性教育に関わってくれない」という悩みは聞こえてきますか。

「性教育の必要性を伝えても『自然に学ぶものだから』と協力が得られない」といった声もあります。「自分が今まで困ってこなかった」と仰る方もいるのですが、無意識のうちに誰かを傷つけていることもありますよね。ただ、性教育を避ける背景には、性教育によって子どもの性行動を促進し「寝た子を起こす」という誤解や、性教育によって自分の罪悪感やコンプレックスが掘り起こされ、それと向き合う怖さもあるのではと思います。

——父親に一緒に性教育に関わってもらうためにできることはありますか。

最近は、保護者向けの性教育講演で男性の参加も増えてきました。まずは「性のことを大事にしたい」というスタンスをパートナー間で共有できると、なぜ性教育をするのかが明確にできます。性教育は自分の体や人間関係を守る大切なツールの一つだと考えています。「子どもが自分らしく、相手のことも尊重しながら、安心して生きていくために必要なこと」という共通認識を持つことが大切です。

子どもへの伝え方としては、自分がお手本になる方法があります。たとえば、子どもがお風呂上りに裸で歩き回っているときに「大事なところだからパンツで守ろうね」と声をかけていたら、パートナーも言い方を真似するようになったという話を聞きました。一方で、パートナーが「恥ずかしいところだから早く隠しなさい」と言ったときに、「恥ずかしいというよりは大事なところだよね。自分だけの大切なところだから、人前では見せないのがマナーだよ。」という肯定的な声かけをし、そういうきっかけでパートナー間での会話に繋げていく方法もあります。

ただ、どうしても理解を得られない場合には、パートナーに頼らず別の人と協力することも一つかもしれません。理解のある人でないと、性について恥ずかしさやタブーを強調する話をされ、逆効果になってしまうこともあり得るからです。性教育のイベントで保護者同士で繋がったり、ネット上で親同士で交流したりしている人もいます。

——子どもから性に関する相談をしてもらえる親であるために、どのようなことを心がければよいでしょうか。

普段の会話から話しやすい関係性を築こうとする意識は必要です。具体的に言えば、子どもの気持ちを聴くことを大事にしてほしいです。いつも一方的に親の言うことを聞かないといけない関係性ですと、何か悩みがあっても言いづらいですよね。性に関することでなくとも、日頃から悩みを打ち明けてくれたときには「よく話してくれたね」「ありがとう」「一緒にどうするか考えよう」と受け止めることで、「話せてよかった」という安心感に繋がると思います。

——女性に対しては「かかりつけの産婦人科があるといい」と言われますが、男性もかかりつけの泌尿器科があったほうがいいのでしょうか。

できればあると安心です。若い男性でも睾丸が腫れたり、ペニスに炎症が起きたりで性経験の有無に関わらず泌尿器科の受診が必要なこともあります。「性器について何か困ったことや悩みがあるときは、泌尿器科に相談するんだよ」と伝えていただけるといいでしょう。

男の子にも関係のある性暴力の話

——性暴力に関して、被害者は女性というイメージを抱きがちで「うちは男の子だから関係ない」と思っている保護者の方もいるかもしれませんが、保護者としてどのように考えるべきでしょうか。

性暴力は性別にかかわらず誰にでも起こりうることです。「男の子だから女の子を傷つけないように育てないと」と思う方もいるかもしれませんが、男の子が被害者になることもあります。性の悩みと同じく男の子の方が言いづらい部分もあると思うので、その点は注意したほうがいいでしょう。アメリカでは6人に1人の男性が幼少期に性暴力被害を受けているという調査があります。性加害は性的な欲求によってだけで行われるものではなく、支配のツールとして使われているという認識も持っていただきたいです。

性暴力被害に遭うと「恥ずかしい」「自分が悪いのでは」と思うことは珍しくないことです。「被害に遭った方が悪いのではなく、悪いのは加害者」「何か困ったり嫌なことがあったりしたら、相談してほしい」「相談してくれたときにはあなたの味方でいるし、秘密を守る」と日頃から繰り返し伝えておくことも重要です。

——子どもから被害の兆候を感じとることはできますか。

被害の兆候は一概には言えませんが、学校や外に行けない・ご飯を食べない・眠れないといった体調の変化は一つのサインかもしれません。一人になることを怖がったり、急に大人にべたべた接するようになったり、自分を傷つけたりすることもあります。また、被害に遭ったことがきっかけで、別の誰かに加害行為をすることがあります。突然、攻撃的・暴力的な言動が見られる場合は、もしかしたらその背景に被害の経験があるかもしれないと頭の片隅に置いておいてほしいです。

——被害を打ち明けられたとき、特に身近な大人からの被害だった場合、聞いた大人も動揺してしまいそうですが、どのようなことを心がけるべきでしょうか。

難しいかもしれませんが、あまり狼狽えずに冷静に受け止めることが大事です。「誰に」「何をされたか」を簡潔に聞き取り、必要に応じて警察や性暴力被害者ワンストップ支援センター(#8891)、児童相談所(189)など専門の相談機関に繋げていきます。

してはいけないことは、「あなたが悪い」「不用意だった」と責めたり、「加害者がそんなことするはずない」と疑ったりすることは二次被害につながります。「このくらいでよかった」「早く元気になって」という言葉も被害者を傷つけることがあります。また、加害者に直接確認をすることも避けましょう。加害者は絶対に否定しますし、子どもが仕返しされるかもしれません。まずは被害を打ち明けてくれた子どもの話を信じてください。先述の専門機関に相談しながら進めていくのが望ましいです。適切な相談機関に早い段階で繋がることで、お子さん自身の被害を少なくできますし、別の被害を防ぐことにも繋がります。

大人から子どもへの性暴力のほか、男の子同士でズボン下ろしが行われたり、先輩から性器を触られたりという性暴力もあります。男同士の絆を深めたり、上下関係を示したりするために性が使われることがありますが、誰かを傷つけて力を示すことは間違った方法です。

最近では男の子同士の「エンゲージメント」……連帯することの重要性も指摘されています。先頭に立って引っ張っていくというリーダーシップの発揮だけでなく、他の人の意見を聞きながらみんなで合意形成を図っていく姿勢や、相手がどういったことを考えているのか共感的な姿勢が素敵ということを強調し、「男ならこうすべき」の価値観に変容を促すことも大切なことだと考えています。

『マンガでわかるオトコの子の「性」』(監修:村瀬幸浩、マンガ:みすこそ、合同出版)
『マンガでわかるオトコの子の「性」』(監修:村瀬幸浩、マンガ:みすこそ、合同出版)

【プロフィール】

染矢 明日香(そめや・あすか)

染矢明日香さん
染矢明日香さん

NPO法人ピルコン理事長。石川県金沢市出身。自身の経験から日本の思いがけない妊娠・中絶の多さに問題意識を持ち、大学在学中より学生団体ピルコンを立ち上げ、性の健康の啓発活動を始める。その後民間企業でのマーケティング職を経て、2013年にNPO法人ピルコンを設立。自分事として性の健康を伝える若者ボランティアの育成をしながら、中学校、高校、大学等で300回以上、4万名以上の対象者に性教育講演を実施。イベントや啓発資材の企画、動画コンテンツの製作・発信、政策提言を行い、思春期からの正しい性知識の向上と対等なパートナーシップの意識醸成に貢献している。保護者や教育関係者向けの性教育講座も定評があり、自治体からも多く要請を受けている。現在は海外の性教育動画Amazeの日本語翻訳プロジェクトの統括も行う。

NHKやTBS、朝日新聞、読売新聞、日経新聞などの大手メディアにも数多く出演・掲載。慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科公衆衛生専攻在学中。日本家族計画協会ピア・コーディネーター養成講座、SEE(Sexuality Education and Empowerment)性教育アカデミー2018、WAS(世界性の健康学会)2021におけるSexual Attitude Reassessment (SAR)などを修了。日本思春期学会性教育認定講師。思春期保健相談士。緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト共同代表。NPO法人デートDV防止全国ネットワーク理事。一般社団法人性と健康を考える女性専門家の会理事。中高生のための性のモヤモヤ解決サイト「セイシル」アドバイザー。著書に『マンガでわかるオトコの子の「性」』(監修:村瀬幸浩、マンガ:みすこそ、合同出版)、監修書に『10代の不安・悩みにこたえる「性」の本』(学研プラス)。twitter:@asukasuca

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雪代すみれ

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フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。

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