「昔はいい子だったのに」思春期の子供とうまくいかないのはなぜ?専門家が教える、親子の距離の取り方
「小さい頃はとてもいい子だったのに、中学生になってから反抗されるようになった…どうすればいいんだろう?」子どもが思春期を迎えると、子どもの言動がガラリと変わり、親子関係に悩む方も少なくありません。そこで今回は、なぜ思春期の子どもとうまくいかなくなるのか、どう関わればいいのかを解説します。
そもそも思春期とは?
私たちも経験したはずの「思春期」ですが、どんな時期だったかはっきり覚えている人は少ないかもしれません。
まずは思春期について簡単に確認しておきましょう。
「自分」について考える時期
思春期は中学生から高校生ごろ、心も身体も子どもから大人へと変化していく「第二次性徴」の時期に該当します。
この時期の子どもはとても不安定。大人びた物言いで親を言い負かそうとするかと思えば、驚くほど子どもっぽく甘えてくることもあります。
周りに合わせたいと思いながらも、一方で「自分にしかできないこと」を探して、とんでもない行動をとることもあります。
「自分」の軸が不安定で、子ども本人も周囲も落ち着きません。
前頭前野が未発達
思春期になると、何かと親に反抗する「反抗期」を迎える子どももいます。
これは、脳の「前頭前野」が十分に発達していないから。
前頭前野は、
・感情をコントロールする
・意欲を高める
・理性的に判断を下す
・行動の結果を予測する
などの役割を担っています。
思春期の時点では、記憶や思考などの脳機能は発達しており、一見すると「大人に近い」ように見えます。
しかし、前頭前野が未熟なため、
・突然怒り出す
・いつもだるそうにしている
・感情だけで動く
・後先考えず危険な行動をとる
といった「反抗期」の状態が生じます。
前頭前野が発達するまで、本人も「なぜかムシャクシャする」「なぜかだるい」と原因不明の衝動や気だるさに襲われ、うまく自分の心と身体をコントロールできない状態が続いてしまいます。
親と子どもの距離の取り方
親は思春期の子どもとどのように距離を取っていけば良いのでしょうか。
少しずつ「大人扱い」を増やす
思春期は大人への入り口です。
反抗的な態度に対して「ダメでしょ!」「こうしなさい!」と子ども扱いでコントロールしようとするほど、子どももヒートアップしてしまいます。
少しずつ「大人」として接しましょう。「いちいち『宿題した?』とか聞かないで!」と言われたときに「あなたがしっかりしてれば聞かないでしょ!」と怒るのではなく、「わかった。自分でやってね」と任せるのです。
そして、子どもが多少失敗しても、「大人としては初心者だから失敗しても仕方ない」と受け止めましょう。あなたが宿題について注意しないことで、子どもが宿題を忘れても「初心者だから」と見守るのです。
もちろん「大人扱い」では、結果の責任も本人が背負います。「お母さんが宿題のことを言ってくれなかったから忘れた!お母さんのせいだ!」と責めてきても、その責任を負う必要はありません。
ただ、失敗したあとに子どもが「やっぱりお母さん、宿題の確認してくれない?」と依頼してきたら協力は惜しみません。
これが「大人扱い」です。
ただし、失敗を許すのは「取り返しがつくこと」だけ。
取り返しのつかない危険が予想される行為は、子どもが反発したとしても、理由を説明してはっきり止めましょう。
「大人」と「子ども」の両方を大切に
思春期の子どもは「大人みたいにできる!」という気持ちでいっぱいのときもあれば、「子どもだからできない」と甘えたい気持ちのときもあります。
そのときに「あんなに偉そうに言ってたんだから」「もう大人になったんだから」とつきはなすと、子どもは「大人」に近づくために新しいチャレンジをすることが怖くなってしまいます。
子どもが「大人」と「子ども」の両方の顔を持っていることを認め、そのときそのときの顔に合わせて対応しましょう。
親の気分転換を最優先に!
前頭前野が未熟だから仕方ないとはいえ、思春期の子どもの言動に振り回されるのは、なかなか苦しいものです。
「思春期だから」とずっと我慢していると、しんどくなって感情が大爆発し、気づいたときには親子関係が悪化…ということもあるかもしれません。
子どもが思春期の間は、子どもをどうにかしようとするよりも、親の気分転換やストレス解消を最優先に過ごしましょう。
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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