肥満とお金:「太っていると損をする」は本当?医療費、保険料、日常コストの意外な関係〈医師監修〉
肥満が健康に与える影響は広く知られていますが、実は経済的な負担も無視できません。医療費の増加、保険料の上昇、さらには日常生活におけるさまざまな追加コストなど、肥満は私たちの財布にも影響を及ぼします。本稿では、肥満とお金の関係について、厚生労働省などの公的機関の資料をもとに詳しく解説します。健康と経済の両面から肥満の影響を見つめ直し、生活習慣の改善の重要性を考えてみましょう。
肥満が引き起こす医療費の増加
肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心疾患などの生活習慣病のリスクを高めます。これらの疾患は長期的な治療が必要となり、医療費の増加につながります。厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」では、生活習慣病の予防と重症化予防が医療費の適正化に重要であるとされています。
また、特定健診・特定保健指導は、内臓脂肪の蓄積に起因する糖尿病等の発症・重症化の予防により医療費を適正化するため、保険者が共通に取り組む保健事業とされています。これにより、肥満に関連する疾患の予防が医療費の削減に寄与することが示唆されています。
保険料への影響と予防への取り組み
肥満は、保険料にも影響を及ぼします。医療保険制度においては、疾病予防・重症化予防の取り組みが強化されており、肥満の解消や生活習慣病予防等のための予防・健康づくりの取組についての実証事業が行われています。これにより、肥満者の医療費増加が保険制度全体の負担となり、結果として保険料の上昇につながる可能性があります。
さらに、保険者による予防・健康インセンティブの取組への支援も行われており、健康づくりへの取り組みが保険料の適正化に寄与することが期待されています。
日常生活における追加コスト
肥満は、日常生活においても追加のコストを生むことがあります。例えば、衣服のサイズが大きくなることで特注品が必要となり、価格が高くなる場合があります。また、公共交通機関や航空機の座席が狭く感じられるため、追加料金を支払って広い座席を選ぶこともあるでしょう。さらに、肥満による体力の低下や関節への負担増加により、移動手段としてタクシーを利用する頻度が高まることも考えられます。
これらの追加コストは、日々の生活において積み重なり、経済的な負担となります。肥満を予防・改善することで、これらのコストを削減し、生活の質を向上させることが可能です。
まとめ
肥満は、健康だけでなく、医療費の増加、保険料の上昇、日常生活における追加コストなど、経済的な負担も大きいことがわかります。厚生労働省などの公的機関も、肥満の予防と改善を重要視し、さまざまな取り組みを行っています。私たち一人ひとりが生活習慣を見直し、健康的な体重を維持することが、経済的な負担を軽減し、より豊かな生活を送るための第一歩となるでしょう。
参考資料:
厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」
厚生労働省「第3期特定健康診査等実施計画期間における特定健診・特定保健指導の実施方法の見直しについて」
厚生労働省「令和6年度予算案(保険局関係)の主な事項」
監修医師/頴川博芸(えがわひろき)
浅草橋西口クリニックMo院長。東海大学を卒業後、順天堂大学医学部附属静岡病院、越谷市立病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院を経て、現職。消化器外科医として上部消化管や胆嚢、虫垂の疾患、鼠径ヘルニアの治療に携わる。日本専門医機構認定 外科専門医、日本医師会認定産業医、東京都認知症サポート医。
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