脳梗塞の後遺症とお金:突然やってくる「リハビリ費用」と「介護の現実」|医師監修

 脳梗塞の後遺症とお金:突然やってくる「リハビリ費用」と「介護の現実」|医師監修
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脳梗塞は突然発症し、命を脅かすだけでなく、後遺症によるリハビリや介護の必要性から、長期的な経済的負担をもたらします。急性期の治療から回復期のリハビリ、さらに在宅復帰後のケアまで、各段階で発生する費用は決して少なくありません。本稿では、脳梗塞後の医療・介護にかかる具体的な費用と、制度を活用して出費を抑える方法について解説します。

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急性期治療にかかる費用:命を救うための初期対応

脳梗塞発症直後は、血栓を溶かすt-PA療法や脳血管内治療、集中治療室(ICU)での管理など、迅速かつ高度な医療が求められます。これらの治療には高額な費用がかかり、入院期間が1〜2週間の場合、総額で約50〜100万円が必要とされています。保険適用後の自己負担額は、3割負担で約15〜30万円、1割負担で約5〜10万円となります。高額療養費制度を利用することで、自己負担額をさらに抑えることが可能です。

回復期リハビリテーション:社会復帰への重要なステップ

急性期を乗り越えた後は、回復期リハビリテーション病棟での集中的なリハビリが行われます。1日あたり6〜9単位(2〜3時間)のリハビリが提供され、入院期間は2〜3か月が一般的です。この期間の総費用は約100〜200万円で、保険適用後の自己負担額は3割負担で約30〜60万円、1割負担で約10〜20万円となります。高額療養費制度を活用することで、月ごとの自己負担額に上限が設けられ、経済的な負担を軽減できます。

在宅復帰後のリハビリと介護:継続的な支援の必要性

退院後も、外来リハビリや訪問リハビリ、通所リハビリ(デイケア)など、継続的なリハビリが必要です。外来リハビリの場合は医療保険で受けられ、発症から180日以内に限って保険適応となる事が多く、自己負担額は1割負担で1回あたり約600〜1,000円程度です。訪問リハビリもしくは通所リハビリの場合は介護保険の適用を受けることができ、自己負担額は1割負担で1回あたり約300〜1,300円程度です。また、要介護認定を受けることで、介護サービスや福祉用具のレンタル、住宅改修費用の助成など、さまざまな支援を受けることが可能です。これらの制度を活用することで、在宅での生活を支え、経済的な負担を抑えることができます。

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経済的負担を軽減するための制度活用

脳梗塞後の医療・介護にかかる費用は高額ですが、日本の医療・介護制度を適切に活用することで、自己負担を大幅に軽減することが可能です。高額療養費制度をはじめ、介護保険制度や障害者手帳の取得による各種助成制度など、利用できる制度は多岐にわたります。これらの制度を活用するためには、医療ソーシャルワーカーやケアマネージャーと連携し、早期に情報収集と手続きを行うことが重要です。

まとめ

脳梗塞は突然発症し、命を脅かすだけでなく、長期的なリハビリや介護が必要となるため、経済的な負担も大きくなります。しかし、日本の医療・介護制度を適切に活用することで、自己負担を大幅に軽減することが可能です。早期の情報収集と制度の活用により、経済的な不安を少しでも和らげ、安心して治療とリハビリに専念できる環境を整えることが大切です。

参考資料:

AViC THE PHYSIO STUDIO「脳梗塞後遺症のリハビリにかかる費用はいくら?」
ニューロテックメディカルリハビリセンター「回復期リハビリテーション病院の費用について」
リバイブあざみ野「脳梗塞の入院期間とリハビリ日数」

監修医師/林祥史(はやし・よしふみ)

林医師

脳神経外科医。東京都目黒区にある「けやき脳神経リハビリクリニック」院長。所属学会・資格は、日本脳神経外科学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、日本脳卒中学会、日本リハビリテーション医学会、日本頭痛学会など。漫画『宇宙兄弟』医療監修やカンボジアでの医学教育活動など、活動は多岐にわたる。未来世紀ジパング(テレビ東京)の出演経験あり。

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