【脳科学者が解説】仕事がうまくいく!何回言っても伝わらない相手に確実に「伝わり行動させる」伝え方

 【脳科学者が解説】仕事がうまくいく!何回言っても伝わらない相手に確実に「伝わり行動させる」伝え方
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「国語に関する世論調査」(文化庁)によると、「自分の言いたいことが、相手にうまく伝わらない」という経験がある人は6割以上にのぼります。実際、職場で部下とのコミュニケーションに悩んでいる人は多いのではないでしょうか。今回は脳科学者の西剛志先生に、脳科学を活用した伝え方がうまくなる方法をうかがいました。

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コミュニケーション力を高めると公私ともに好転する

仕事がうまくいく人は、コミュニケーション力が卓越しているという特徴があります。仕事に限らず、夫婦関係、子育て、スポーツでのチームワーク形成においても同様のことが言えます。 コミュニケーション力を高めるには、言語化する能力が最も重要と思われがちですが、それは大きな誤解です。言葉を駆使してきちんと伝えたつもりでも、全然伝わっていないことは多く、これを専門用語で「認知のズレ」と言います。認知とは物事の捉え方を意味し、そのズレがコミュニケーションの壁を生み出しているのです。

また伝えるための言葉の力は、生まれもった能力かというと、答えはノーです。言葉の力における遺伝率は20%~50%にすぎず、後天的な環境要因によって鍛えられることがわかっています。 

「認知のズレ」を修正する3つの方法とは?

「認知のズレ」が伝わらない要因だとすれば、コミュニケーション力が高い人は「認知のズレ」を修正するのがうまいと考えられます。ここでは修正するうえで大切な3つの要素を紹介します。 

1.相手のバイアスを知る

バイアスとは偏った考え方のこと。人は「安定バイアス」が強いか、「不安定バイアス」が強いかの2タイプに大別されます。前者は安定欲求が高くルーチンを好み、後者は新しいことや刺激を好む特徴があり、バイアスを考慮したうえで伝え方を変える必要があります。 

【例えば、仕事を依頼する場合】

・安定バイアスが強い人に依頼するなら…

×「誰もやったことがない仕事だから、ぜひあなたにお願いしたいです」
〇「ちょっと工夫が必要だけど、以前にお願いした仕事と似ているからまかせてもいいですか」 

・不安定バイアスが強い人に依頼するなら…

×「誰でもできる仕事だから、難しくないのでやってもらえますか」
〇「以前にお願いした仕事と似ているけど、工夫するとすごくおもしろくなるから頑張ってもらえますか」

2.脳タイプを知る

人には3つの脳タイプがあります。脳タイプによって伝わる伝え方が変わるので、自分と相手の脳タイプを知っておく必要があります。

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・視覚タイプ:見えている情報が優位に働く。
・聴覚タイプ:聞こえるものの情報が優位に働く。
・体感覚タイプ:体の動きや感覚(香り、気温、気持ちなど)が優位に働く。 

【脳タイプを知る方法】

「好きなお店の情報を、どのように人に説明しますか?」と質問し、その答えで脳タイプがわかります。

・お店の外観や内観を説明する⇒視覚タイプ
効果的な伝え方:言葉を並べるより写真や映像、実物を見せると理解が早い。 

・料理をつくる音、店員さんとの会話などの音声情報が多い⇒聴覚タイプ
効果的な伝え方:話し言葉だけでも伝わりやすいですが、「パパッと整理できますか?」や「バダバタして申し訳ないけど」など音を表現する言葉を使うと反応がよくなる。

・料理の味や食感、店の雰囲気を説明する⇒体感覚タイプ
効果的な伝え方:説明書を見せるより、実際に体験してもらうと理解が早い。また場所を変えて伝えると快感を覚えやすく脳が活性化して伝わりやすくなる。

3.相手の価値観を知る

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人間の価値観は無数にありますが、そのなかでも大きいものに「ゴール主義」と「プロセス主義」の2種類あります。相手の価値観に応じた伝え方を意識してみましょう。それ見分けるには「手帳」が鍵になり、予定をびっしり書く人は高確率でゴール主義に該当し、書き込みが少ない人はプロセス主義と言えます。 

・ゴール主義:結果を出さないと意味がないという価値観
効果的な伝え方:理屈を好むため、大きな成果を得るには、プロセスがいかに大切か論理的に説明すると納得度が高まる。

・プロセス主義:過程が大切で結果は後からついてくるという価値観
効果的な伝え方:小さな努力の積み重ねの重要性を解くと、やる気をアップさせられる。 

互いの「自己中心バイアス」を知り、他者目線を養って

「認知のズレ」をなくすには、自分と相手が見ている世界は違うと理解することが大切です。その人が持つバイアスがわかる、「ひたEテスト」を行ってみましょう。 

【「ひたEテスト」のやり方】

額に指でアルファベットの「E」という文字を書いてください。「E」の字の縦棒部分が自分から見てどちら側にきていますか?

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・左側に縦棒がきている⇒自分から見た「E」を書いている
自分視点が強く自己中心バイアスが優位。自分の考えは常に正しいと思いがちで、人の話をちゃんと聞かない。命令されると「私のほうが正しい」と反発心が生まれるので、「すごいですね」など相手の自己中心バイアスを刺激し、そのタイミングでお願いをすると受け入れられる可能性が高い。

・右側に縦棒がきている⇒相手から見た「E」を書いている
自己中心バイアスが低い。他者視点に立って物事を考えられる。 

自己中心バイアスが高い人は、他者目線で物事を考える意識を養いましょう。先に紹介した3つの要素は雑談のなかで知ることができます。

確実に伝わり、行動させるには「解像度」を高める伝え方を

最後にお伝えしたいのは、言葉の「解像度が低いと伝わらない」ということです。「認知のズレ」は言葉に対するイメージが互いに異なるために生じ、何度伝えても相手が理解してくれないのは、相手がイメージできていないからです。なので、相手のイメージを具体的にしてあげることが、伝わることにつながります。それが解像度を高めるということです。 

次の例文では、「旅行」の解像度は3が最も高く、1が最も低くなり、解像度が高いほどイメージが鮮明になり行動につながります。

1. 旅行に行きませんか?
2. ヨーロッパ旅行に行きませんか?
3. イタリアの5つ星ホテルのレストランで、世界遺産を眺めながら極上のトリュフ料理を堪能しに行きませんか?

より具体的な情報を盛り込むことに加え、言葉の解像度を上げるには「比較法」も有効です。説明をする際、いい例だけを見せるのではなく、いい例と悪い例の両方見せて比較してもらうとその差が明確になり、相手の解像度を上げられます。 

【例えば、サービス業の接客指導の場合】

・いい水の出し方と悪い水の出し方を見せる。
・いい料理の盛り方と悪い料理の盛り方を見せる。


伝わるコツをおさえて「認知のズレ」をなくすと、コミュニケーション力が高まりよりよい人間関係が築けるはずです。職場の人間関係の構築などに活用してください。

結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ
『結局、どうしたら伝わるのか? 脳科学が導き出した本当に伝わるコツ』(アスコム)

〈プロフィール〉西 剛志先生

脳科学者(工学博士)、分子生物学者。東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。 30代で難病を宣告されるも、脳の研究を通してストレスをなくすことに成功し、半年で病気が完治。この出来事をきっかけに、「うまくいく人と、うまくいかない人との違い」を本格的に研究するようになる。 現在は、世界的に成功している人たちのコミュニケーションや脳のしくみ、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、3万人以上に講演会を提供。著書多数。

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取材・文/北林あい

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