深刻な病気の早期発見につながることも。尿検査でわかることって?医師が解説

 深刻な病気の早期発見につながることも。尿検査でわかることって?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-01-15

尿検査で調べる病気の可能性について、医師が解説します。

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尿検査とは?

尿は、腎臓によって血液がろ過されて作り出されます。

血液には、全身の臓器に栄養素や酸素を運ぶ役割だけでなく、代謝によって作られた老廃物や有害物質を集めて腎臓に運ぶ役割もあります。

ひとつの腎臓には「ふるい」のような構造をしている糸球体(しきゅうたい)が約100万個あり、全身を巡ってきた血液がこの糸球体を通ると不要なものがろ過され、原尿(おしっこの元)が作られます。

健康であれば、赤血球やタンパク質などはろ過されず、きれいになった血液が腎臓から全身へと戻ります。

尿検査は、尿についての多くの検査項目を含み健康診断の最も一般的な方法の一つであり、尿中の蛋白や糖などを調べて、様々な病気やその兆候を知ることができる検査です。

尿中の蛋白は腎臓の病気、潜血は結石や腎炎等、糖は糖尿病関連の病気の可能性があります。

尿検査でわかることとは?

健康診断の尿検査では、主に「尿蛋白」「尿糖」「尿潜血」「尿沈渣(にょうちんさ)」について調べて、それぞれ基準値の範囲内であれば陰性(-)、基準値を超える量が検出されれば陽性(+)と判定されます。

これらの項目の結果から、腎臓病や膀胱・尿管・尿道、糖尿病などの病気の可能性を調べることができます。

尿蛋白

尿中のタンパク質の量を調べる検査であり、正常であればタンパク質は腎臓ですべて再吸収されますが、腎機能が低下するとタンパク質が尿中にもれ出てきます。

尿糖

尿中のブドウ糖の量を調べる検査で、血糖値が高いと再吸収しきれなくなり、尿中に糖がもれ出てきます。

尿潜血

尿中に血液(赤血球)が混じっていないかを調べる検査となっていて、結果が陽性の場合、尿の通り道のどこかに出血の原因がある可能性があります。

尿沈渣(にょうちんさ)

尿を遠心分離器にかけて、尿の沈殿物に赤血球や白血球、粘膜由来の細胞、細菌、円柱などの成分が増加していないかを調べる検査です。

主に、腎臓や尿路などの泌尿器系の臓器の異常を見つけることができます。

慢性糸球体腎炎や腎硬化症などの腎臓の病気や糖尿病、高血圧などの全身の病気の影響で慢性的に腎機能が低下していく状態を「慢性腎臓病」といいます。

近年、慢性腎臓病の患者数は増加しており、患者数は約1500万人と推計されています。

成人の7~8人に1人が慢性腎臓病を患っており、重症の場合は人工透析が必要となり、生活が制限され、「慢性腎臓病」は、がんや生活習慣病と並んで新たな国民病ともいわれています。

特に、慢性腎臓病を早期発見するには、定期的に尿検査を受けることが最も大切です。

腎臓は一度機能が失われてしまうと回復することがほとんどないため、いかに早く発見し、治療を受けて悪くなるスピードを遅くするかが重要となります。

まとめ

尿検査は体の状態を調べる臨床検査の中でも検体の採取が簡単で、検査を受けるときの負担が少ない検査です。

健康診断の尿検査では、起床してすぐの朝一番の尿(早朝尿)を提出するように指示されることがほとんどです。

毎年の健診で何気なく受けている尿検査は、慢性腎臓病や糖尿病などの病気の早期発見につながる大切な検査ですので、その検査結果は意識して確認するようにしましょう。

健康診断や人間ドックで繰り返し尿蛋白が陽性になっている場合や、「要精密検査」と判定された場合は、自己判断せずにできるだけ早めに泌尿器科や腎臓内科など専門医療機関を受診しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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