インフルエンザの予防接種、いつ受けるのがベストなの?医師が解説
インフルエンザの予防接種は、感染ピークに備えて適切なタイミングに受けることにより、その効果が発揮されます。年齢なども考慮した方がよいかもしれません。医師が解説します。
インフルエンザとは、どのような病気なのか?
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる気道感染症であり、いまだ現代においても人類にとって最大級に注意を払う必要がある疫病と考えられています。
インフルエンザは季節性の流行性感染症で、インフルエンザウイルスは高い感染力を持っています。
そして、インフルエンザワクチンは、インフルエンザの発症予防効果のほか、重症化や合併症のリスクを軽減し、集団免疫を高める効果があります。
通常のインフルエンザワクチンは任意接種で、全額自己負担となりますが、65歳以上の高齢者などは定期接種として公費費用(一部自己負担)で接種が受けられます。
インフルエンザの予防接種によって、完全にインフルエンザの感染が防げるわけではありませんが、インフルエンザが重症化するのを防ぐといわれています。
そのため、合併症を起こしやすいハイリスクの人(高齢者、免疫不全など基礎疾患のある人など)は、特にインフルエンザの予防接種を受けるメリットが大きいといわれています。
インフルエンザの予防接種、いつ受けるのがベストなのか?
インフルエンザには何種類かの型がありますが、毎年流行するタイプが異なるため、世界保健機関が流行する型を毎年予測して、それに基づいて日本も製造するワクチンの型を決定し、ワクチンを製造しています。
決定した型のウイルスを鶏の卵に注射しウイルスを増殖させ、感染力を持たないように処理したものを不活性ワクチンと呼びます。
日本におけるインフルエンザの流行シーズンは12~4月頃であり、例年一番の流行のピークは、1月末~3月上旬となることが多いため、インフルエンザの予防接種を受けるベストタイミングとしては、12月中旬までにはワクチン接種を終えておくのが理想的です。
大人の場合
インフルエンザの予防接種は、1回接種が原則であるため、健康な成人の場合には、12月中旬までにワクチン接種をしておくとよいでしょう。
13歳未満の子どもの場合
インフルエンザの予防接種は2回行うのが原則であり、通常の流行のピークでインフルエンザに罹患しないようにするなら、10月中に1回目を接種、それから3~4週間あけて11月中に2回目を接種するのがよいでしょう。
生後1年までの乳幼児の場合
免疫の働きがまだ十分ではなく抗体ができにくいため、保育園や幼稚園などで集団生活をしていない場合にはインフルエンザの予防接種をするよりも、感染を回避する生活をすることを推奨します。
高齢者の場合
例年12月中旬までには1回接種を受けておき、基礎疾患があり、重症化しやすいなど特別な理由がある場合には、10月と11月など2回接種することも検討できます。
受験生の場合
ちょうど受験シーズンとインフルエンザの流行期が重なるため、一番大事な受験シーズンにインフルエンザに感染しないよう、10月や11月に1回接種するなど、適切にスケジュールを合わせて予防接種しましょう。
妊婦さんの場合
妊娠時の母体の状態はそれぞれ違うため、主治医と相談してインフルエンザの予防接種を受けるか受けないか、受ける場合にはいつ受けるかを決める必要があります。
一般的に、インフルエンザの予防接種は、接種後1~2週間たつと抗体が現れ、約1ヶ月でピークに達しますが、その後は3~4ヶ月かけて徐々に低下していくため、ワクチンの効果が期待できるのは接種後2週間から約5ケ月までと考えられています。
万が一、インフルエンザの予防接種をする時期が早すぎた場合、早めに抗体も減ってしまうため、春先に流行するインフルエンザに効果が期待できないことがあります。
一方で、インフルエンザの予防接種をする時期が遅すぎた場合、あるいはインフルエンザの流行が始まってからインフルエンザの予防接種を受けた場合、抗体が充分にできる前に感染してしまうリスクは高まると考えられます。
まとめ
通常、ワクチンは、子どもだけでなく、大人の健康を守るためにも重要な手段であり、インフルエンザなどの感染症は、大人も子供もワクチン接種を受けることによって有効に予防することが可能です。
インフルエンザの予防接種は、インフルエンザに対する抗体ができる期間が必要なことや、その効果が持続する期間に限りがあるために、接種するタイミングが重要になってきます。
早く流行する年もあれば、春先になってから流行する年もあるため、自分の健康状態などに加えて、そのシーズンの流行する兆しや感染症の動向を確認しながら、もっとも効果的なタイミングを見極めて、インフルエンザの予防接種をするように心がけましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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