“旅行”には心身の健康を保ち、老化を遅らせる効果があることが明らかに！【最新研究結果】

老化を遅らせるカギは「エントロピー」

オーストラリアにあるエディス・コーワン大学（ECU）の研究チームは、旅行と健康の関係を調査し、「エントロピー」という物理学の概念を適用した。エントロピーとは、簡単に言えば「無秩序な状態」であり、宇宙におけるあらゆるものが無秩序に向かう法則を指す。このエントロピーが人間の健康にも影響を与え、特に老化のプロセスと密接に関連していると研究者たちは指摘している。この研究は、2023年8月に学術誌「ジャーナル・オブ・トラベル・リサーチ」に発表された。研究のリーダーであるファングリ・フー氏は、「老化は避けられないプロセスだが、遅らせることは可能」と述べている。ネガティブな体験はエントロピーを増大し、健康に悪影響を与える可能性がある一方、（旅行などの）ポジティブな体験は、エントロピーの増大を抑え、健康を維持するという。

旅行は心身の健康を保つ重要な手段

旅行が老化に与える影響とは具体的にはどのようなものだろうか？ファングリ・フー氏の研究によれば、旅行は心身の健康を保つための重要な手段であり、次のような具体的なメリットがある。

身体活動の増加

旅行中、特にハイキングや水泳などのアクティビティに参加することで、身体が自然と多くの運動を行うようになる。旅行中に身体活動を行うことは、血液循環を改善し、栄養の運搬を効率化し、老廃物の除去を促進するため、体内の自己修復システムが活性化される。

免疫機能の向上

旅行中に新しい場所を訪れることで、体は新しい環境に適応しようと反応する。この過程で免疫系が活性化し、外的な脅威に対する防御能力が向上する。研究では、旅行中に得られるポジティブな体験が免疫システムの機能を強化し、体の自己防御能力を高めることが示されている。フー氏は、「ホルモンが分泌されることで、組織の修復や再生が促進され、自己治癒システムが正常に機能するようになる」と説明する。

ストレスの軽減

慢性的なストレスは免疫系の過剰な活性化を引き起こし、体のバランスを崩す原因となる。旅行中のリラクゼーションや楽しい時間が、ストレスを和らげ、免疫系を正常な状態に戻す手助けをする。例えば、ビーチでのんびりと過ごすことや、温泉で体を休めることは、体の自己防御システムの働きを助け、ストレスを軽減する効果がある。

旅行中は歩数が増え、ストレスレベルが下がる

この研究が示す旅行の効果は、実際に数値でも表れる。例えば、旅行中に平均的な成人が1日に行う歩数は、通常の生活よりも約30%増加することが多いと報告されている。さらに、旅行後にストレスレベルが平均20%低下するという調査結果もあり、これは心身のリフレッシュに加え、免疫システムの働きを改善する一因となっている。また、別の調査では、旅行後にポジティブな感情が持続する期間が約2週間に及ぶことが確認されている。これは、旅行のリフレッシュ効果が単なる短期間のものではなく、体と心に長期的な影響を与えることを示している。

心身の健康に効く「旅セラピー」という新たな概念

研究者たちは、この結果から「旅セラピー」という新しい概念を提唱している。これは、旅行が単なる娯楽ではなく、心身の健康を保つための重要な介入手段であるという考え方だ。フー氏は「旅行はレジャーやレクリエーション以上のものであり、心身の健康に積極的に寄与するもの」と強調している。観光を通じて得られるポジティブな体験は、エントロピーの増加を抑え、健康を維持するのに役立つと考えられる。これは、旅行中の活動が老化の進行を遅らせるだけでなく、体の自然な修復システムを強化し、長期的な健康を促進するためである。次の休暇は、心も体もリフレッシュできるだけでなく、老化を遅らせる一歩となるかもしれない。

出典：
The best excuse to take a vacation: Study reveals how travel slows aging
Hit the road: New study suggests travel could delay aging, improve physical and mental health