人生100年時代!抗老化研究で注目「NMN」のメカニズムを医師が解説|若返りの効果と副作用
人生100年時代と言われる今、若返りに効果があると言われる抗老化物質「NMN」が話題を呼んでいます。どんな物質で、どのような働きがあるのか、アンチエイジングに詳しいミライメディカルクリニック院長の熊澤浩明先生に教えてもらいました。
NMNに抗老化効果があると言われる3つの理由
NMNとは、Nicotinamide Mononucleotide(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)の略。アミノ酸やナイアシン(ビタミンB3)を原料として、体内で作られている成分で、年齢とともに減少していきます。この成分に、若返り効果があると言われる理由は3つあります。
第1に、NMNが脳内の視床下部を活性化させること。第2に、NMNがNADに変換されてエネルギーを作る補酵素となること。第3に、サーチュインと呼ばれる酵素を活性化することです。聞き慣れない言葉が多く、難しく感じられるかもしれませんが、それぞれ熊澤先生に詳しく解説してもらいます。
「第1の効果、『NMNが脳の中の視床下部を活性化すること』から説明しますね。NMNは、加齢とともに減少する物質で、これを補うために食べ物やサプリメントなどから摂取すると、NMNはまず血管に入り、血液の流れにのって脳に入ります。脳内には“血液脳関門”と呼ばれるフィルターがあり、ここを通過できるのは分子量が小さい物質だけ。NMNは分子量が小さいため、通過することができ、視床下部に入り、視床下部の働きを活性化します。視床下部には、自律神経やホルモンを調節して内臓機能をコントロールするなど、人が生きていくために重要な働きがあるほか、全身の組織に司令を出して老化の進行を抑える働きがあることがわかっています。そのため、NMNを摂取すると若さをキープしやすくなると考えられているのです」(熊澤先生)
第2の効果「NMNがNADに変換されてエネルギーを作る補酵素となる」とは、どういうことでしょう?
「体内にとり入れたNMNが血液の流れにのって細胞に届けられると、細胞内でNADと呼ばれる補酵素に変換されます。補酵素とは、その名の通り、酵素の働きを補助する有機化合物で、酵素と補酵素が連動して働くことで、生命活動がスムーズになります。補酵素として働くNADは“代謝の主役“とも呼ばれ、エネルギー代謝に欠かせない必須の役目を担っています」(熊澤先生)
「上の図を参考に、もう少しわかりやすく説明しますね。お昼に、おにぎりを食べたとします。おにぎりは炭水化物なので、体の中に入ると、消化酵素によってブドウ糖に変換され、さらにピルビン酸、アセチルCoAへと変換されます。ここから、学生時代の生物の授業を思い出してみてくださいね。人間の体の細胞の中には、ミトコンドリアと呼ばれる小器官があります。ミトコンドリアには、人間が生きていくための原動力となるエネルギー(ATP:アデノシンミリン酸)を作る働きがあり、そのシステムのひとつが、“TCA回路”です。アセチルCoA は、TCAサイクルのスタートとなる物質でTCA回路を巡り、化学反応を経て、最終的にエネルギーが生み出されます。これをエネルギー代謝と呼び、おにぎりを食べてエネルギーが作られるまでの、すべての過程に補酵素NADが関わっています。そのため、加齢とともにNMNが減少し、NADに変換される量が少なくなると、ミトコンドリアで作られるエネルギーが不足し、病気のリスクを高めてしまうのです。NMNを摂取してNADの量が増えると、これを防ぎ、健康で元気な体をキープしやすくなります」(熊澤先生)
NMNから変換される補酵素NADには、第3の効果である『サーチュインと呼ばれる酵素を活性化する』働きもあります。
「サーチュイン酵素が活性化されると、体にとって2つのメリットがあります。ひとつは、傷ついたDNAやテロメア末端の修復を促すことです。細胞の核の中には、体の設計図と言われるDNAがあります。DNAは紫外線や熱、活性酸素、ウィルス、タバコなどによって、ダメージ受けやすく、サーチュイン酵素が傷ついたDNAを修復してくれるのです。また、複数のDNAで構成される染色体の先端には、染色体を保護するテロメアを呼ばれる部分があります。テロメアは、細胞分裂をくり返すたびに短くなり、染色体を保護するバリアが薄くなり、病気を招きやすくなりますが、サーチュイン酵素には、これを修復する働きもあります」(熊澤先生)
「もうひとつ、サーチュイン酵素には、体に不都合な遺伝子情報を守る働きがあります。DNAは、ヒストンと呼ばれる球体のタンパク質に巻きついた状態で存在していますが、年齢を重ねると、DNAの巻きが緩くなります。DNAには、親から子に伝わる遺伝子情報のほか、過去に侵入されたウイルスなど、体にとって不都合な情報もあり、DNAの巻きが緩むと、そうした情報がむき出しに。すると、DNAのまわりにいるメッセンジャー・mRNAが、体にとって不都合な情報をコピーして有害な物質を作り出し、生活習慣病や癌を招く原因になります。サーチュイン酵素には、ヒストンへのDNAの巻きを強める働きがあり、NADがサーチュイン酵素の働きを活性化することによって、体に不都合な遺伝子情報を守ることができるのです」(熊澤先生)
こうしたことから、NMNを摂取し加齢による不足を補うことで、代謝が高まり、体の内側から老化を防ぎやすくなると考えられています。
NMNを効果的に摂取するポイント
体内で作られるNMNは、30代後半から少しずつ減少し始めます。そのため、40歳頃からNMNを摂取するのが効果的と考えられています。
「1日に推奨されるNMNの摂取量は約100mg〜200mg(個人差あり)。NMNは、枝豆やブロッコリー、きゅうり、アボカド、トマト、マッシュルーム、エビなどに含まれていますが、食べ物に含まれるNMNはごく微量。そのため、良質なサプリメントと合わせて摂取するのが効率的です」(熊澤先生)
サプリメントを選ぶときに、チェックしたいのは品質。純度99%以上のもので、ロッドごとの純度を毎回、確認しているものを選びたいものです。
「特に、注意したいのが抽出法。NMNの抽出法は、発酵法、酵素法、化学合成法の3種類あり、このうち、化学合成法で抽出したNMNは不純物が混入している可能性が高く、リスキー。また、NMNにはα型とβ型があり、効果があるのはβ型のみです。こうした情報が明記されているサプリメントを選ぶことが大事ですが、見極めるのはなかなか難しいもの。そのため、値段をひとつの基準と考え、4000円以下の安価な商品は避けたほうが安心。さらに、NMNの摂取法は、経口摂取と点滴の2種類あるため、できればNMNを扱っている医療機関やクリニック等で、医師と相談をして選ぶのがおすすめです」(熊澤先生)
その上で、NMNを効果的に摂取するポイントはありますか?
「NMNは、午前中に摂取するのが効果的です。前述の通り、NMNはNADに変換されますが、そのために必要な酵素が午後に多く分泌されるため、午前中に摂取しておくとスムーズに変換できます。また、女性は不足しがちな鉄やビタミンC、ビタミンD、亜鉛などを、NMNと一緒に摂取すると、ミトコンドリアのTCA回路の回転がよくなり、より効果的です。NMNを摂取して得られる効果は、熟睡できる、朝の目覚めがよくなる、足取りが軽くなる、筋力・体力のアップ、運動中の呼吸がラクになる、代謝がよくなる、肌のキメが整う、頭がスッキリする、思考・集中力が高まるなど。副作用も気になるところですが、「NMNは過剰摂取をしない限り、副作用の心配はほとんどありません。万一、過剰に摂取した場合は、顔面紅潮、躁状態、多弁などの症状が、副作用として現れる場合があります」(熊澤先生)
NMNはまだ研究段階の点も多く、今後も注目していきたい成分と言えます。
教えてくれたのは…ミライメディカルクリニック院長 熊澤浩明先生
医学博士。宮崎大学医学部卒業。公益社団法人福岡医療団・千鳥橋病院、喜悦会社会医療法人・那珂川病院にて外科医として勤務後、ミライメディアクリニック院長に。ビジネスパーソンの心と体の様々な悩みを解決するため、血液検査を通じて劣化・酸化・糖化・病化の予防・改善に努めている。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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