不足すると高齢者の筋力が低下?老化も進む?もう一度見直したい「ビタミンC」の効果【研究から考察】
サプリメントの中で最も多く摂取されているものの1つであるビタミンC。抗酸化作用があり、美肌づくりに良いイメージで知られていますが、不足すると高齢者の筋力低下が確認され、また的確に摂取すると血液中のDNA保護作用が高まるなどの様々な働きがある事がわかりました。
ビタミンCの筋力と運動能力への効果
ビタミンCは、ヒトの生存や健康に欠かせない栄養素の1つです。皮膚や骨、血管などの重要な成分であるコラーゲンは、ビタミンCが重要な働きを担っています。また、がん、心臓病や脳卒中などの心血管疾患の発症に関わるとされる体内の細胞傷害因子(活性酸素)を消去する作用もあります。
2019年、東京都健康長寿医療センターなどの研究グループは、これまでに東京都板橋区在住の70~84歳の高齢女性を対象とした横断調査により、血漿ビタミンC濃度の高い高齢者女性は、握力や開眼片足(片足で立っていられる時間)、通常歩行速度などの筋力や身体能力が高い事を確認しました。
同研究センターの石神部長らは、オス・メス雌雄のマウスを用いた研究から、血液中のビタミンC濃度が高いほど握力や歩行能力が高く、ビタミンCの投与が運動能力の機能に良い効果がある事が確認されたと報告。また、「ビタミンCは性別に関係なく、筋肉の機能維持に不可欠だと分わかりました。ヒトでも同様に働く可能が考えられます。ビタミンCの豊富な食品を摂る事は、運動機能の面からもメリットが大きいです。ビタミンCの摂取により、骨格筋の萎縮、および身体能力の低下を回復できる可能性がある。ビタミンCは手軽に摂取できる栄養素であり、その機能を解明する意義は大きい」と述べています。高齢者の健康寿命のため、筋肉の重要性が見直される中、ビタミンCのこうした働きにも注目が集まっています。
ビタミンCが多く含まれる「オレンジ」がDNA保護を高める
2013年、香港船長教育学院(沙田分校)の研究者は、老化の原因となるDNA損傷からの保護効果を検証するための臨床研究から、オレンジジュースを飲むと血液中のDNA保護作用が高まる事を確認しました。この効果は、オレンジジュースを飲んだ2時間後には現れていたと報告しています。
オレンジには多くの生理活性物質が含まれており、その中には、ナリンゲニンやヘスペリジンといった抗酸化物質もあります。また、ビタミンCをサプリメントから摂るよりも、果物から摂取する方が抗酸化の相乗効果が得られ、ジュースにするよりも、果物をそのまま食べる事によってさらなる健康効果が得られることがわかっています。
身近な果物で美味しく取り入れる事ができるビタミンC。加齢による筋力低下が気になる人、アンチエイジングに関心が高い人は、ビタミンCの効果について今一度見直し、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
参考文献:
東京都健康長寿医療センター「ビタミンCが足りないと老化が進む!?」
Vitamin C deficiency causes muscle atrophy and a deterioration in physical performance(Scientific Reports 2019年3月20日)
「健康食大全 がん、認知症、生活習慣病は食事で防げる」(早川書房)
AUTHOR
鈴木七代
オーストラリア・ブリスベン在住。イラストレーター。ヨガを始めライセンス取得後ヨガイラストやヨガ漫画をスタート。オーストラリアから健康にまつわるあれこれをイラストやエッセイ漫画で発信中。アスリートの食指導を行う管理栄養士の妹の影響で、現在、健康的な食べ方や栄養学についても学んでいる。
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