「乳首が痒い…」を放置してはいけない?注意したい〈乳首の痒み〉と隠れた疾患とは|医師が解説

 「乳首が痒い…」を放置してはいけない?注意したい〈乳首の痒み〉と隠れた疾患とは|医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-10-19

乳首の痒みが長期的に続くときは、注意が必要です。医師が解説します。

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放置してはいけない!危険な乳首の痒み症状と隠れた疾患とは?

乳頭(乳首)や乳輪部にただれやかゆみなどの症状が続くときは、まれですが、乳がんの可能性があることを認識しておくほうがよいでしょう。

例えば、乳頭・乳輪部のただれで発症する乳がんとして、乳房パジェット病が知られていて、この疾患は、比較的高齢の女性に現れることが多く、がん細胞が乳頭・乳輪部から発生し皮膚内に拡がるという特徴を有しています。乳房パジェット病では、乳頭部の皮膚に、ただれやかゆみなどの症状を引き起こして、患部から出血したり、かさぶたができることがあります。乳房の皮膚の赤みで発症する炎症性乳がんの場合には、がんの拡がりによる皮膚の変化が、ただれや湿疹のように見えることもあります。

乳頭・乳輪部のただれやかゆみなどの症状を起こす病気は、乳がんだけではありません。

乳頭・乳輪部はもともと皮脂の分泌が多いところですが、皮脂の分泌が減ると乾燥状態から皮膚が敏感になって皮膚炎を起こす場合があります。一時的な皮膚炎であれば、ステロイドを含む塗り薬や保湿剤などで軽快してきます。

専門医療機関である乳腺外科では、必要に応じて、マンモグラフィやエコー検査を行い、画像検査で乳がんを疑う所見があれば、細胞や組織を採取して、病理検査を行うという流れになります。

一般的な乳首の痒み(皮膚の乾燥や一時的な炎症による痒み)と乳がんが疑われる痒みの違いを知っておくことは重要であり、治療を受けてもなかなか改善しない場合、病変部が悪化したり拡がっていく場合は、乳がんの除外が必要ですので、一度乳腺外科を受診しましょう。

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乳頭(乳首)や乳輪部にただれやかゆみなどの症状が続くときは、まれに乳がんの可能性があることも。photo by Adobe Stock

乳がんだと分かってからはどんな治療を受ける?

乳がんは体表に発生する悪性腫瘍であり、現在のところ乳癌治療の大きな柱は手術、抗がん剤、ホルモン療法、放射線治療の4つであると考えられています。

乳がんはその他の悪性腫瘍と比較して、薬物治療や放射線療法における治療成績が比較的高いと言われているため、早期に発見して適切に治療が実施されれば良好な予後が期待できますので、特に中年期の女性では乳がん検診を定期的に受けることが重要な視点です。

乳がんは、日本人女性がかかるがんの中で罹患率が最も高いがんであり、早期乳がんの基本的な治療法は切除手術です。

乳房を温存する場合でもメスが入るため傷痕が残りますが、早期乳がんを切らずに治す「経皮的乳がんラジオ波焼灼療法」が注目されています

乳房にメスを入れずに根治する方法として注目されているのが、ラジオ波焼灼療法であり、この治療方法はラジオ波の発熱作用を利用する治療法です。

先進医療制度下で実施した医師主導特定臨床研究である「早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法の有効性の検証と標準化に向けた多施設共同研究(RAFAELO試験)」の成果を受けて、ラジオ波焼灼療法の早期乳がんへ適応追加の薬事承認が得られ、保険適用となりました。

先進医療制度下で行われた特定臨床研究の成果を活用した医療機器の薬事承認の取得は日本初となり、早期乳がんにおいてラジオ波焼灼療法による、乳房を切ることのない低侵襲な治療選択肢が新たに加わったことになります。

まとめ

乳がんという病気は30歳代ごろから罹患率が増加し始め、早期の段階では自覚症状も乏しく発見が遅れてしまうケースも少なくありません。

乳がんを予防するためには、その発症リスクと考えられている飲酒、喫煙などの生活習慣を回避して、日常的に適度な運動を実践して肥満体形を避けることが重要な観点となります。

初期の乳がんでは無症状で経過する場合も十分に考えられるため、定期的に乳がんに特化した検診を受けて早期発見、早期治療に繋げることを心がけましょう。

また、乳がんに対するラジオ波焼灼療法は、早期乳がん(長径が1.5cm以下のものに限る)を対象にして、2013年8月に先進医療として承認されています。

心配であれば、乳腺外科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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