【日本人女性の9人に1人が疾患リスク】医学博士が教える、乳がんを予防する「最強野菜」トップ3

 【日本人女性の9人に1人が疾患リスク】医学博士が教える、乳がんを予防する「最強野菜」トップ3
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日本だけでなく世界的に見ても乳がんの罹患数は増えているのが現状です。がんは複合的な要因で発生しますが、その一つである食事や運動などの生活習慣を見直すことは予防につながると考えられます。そこで、乳がんの予防効果が期待できる食事と最強野菜について医学博士の岩崎真宏さんに伺いました。

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危険因子は、エストロゲン分泌の長期化や欧米型の食事

― 現在、日本人女性が生涯で乳がんに罹患する割合は10.6%、9人に1人となっています。増加が止まらない背景には、どのような要因が考えられますか?

「乳がんの発症は、女性ホルモンのエストロゲンと深く関わっています。乳がんにはいくつかタイプがあり、最も多いのが女性ホルモンのエストロゲンが乳がん細胞にあるエストロゲン受容体に結合して増殖するタイプ。したがって初潮が早く閉経が遅い、あるいは出産・授乳経験がない、初産年齢が遅いなどエストロゲンの影響を受ける期間が長い人ほど発症リスクは高くなります。エストロゲンは卵巣以外に脂肪細胞でも作られるので、欧米型の食事を好み肥満度が高い人も要注意です。特に閉経後は、肥満による乳がんの発症リスクのウエイトが高くなる傾向があります。

食事以外の生活習慣では、アルコールとタバコも危険因子です。アルコールは肝臓で分解されてアセトアルデヒドになりますが、この物質には人への発がん性が疑われています。お酒を飲んで顔が赤くなる、二日酔いになるのはアセトアルデヒドの蓄積が原因なので心当たりがある人は注意が必要です。また、乳がんの多くは乳腺を構成する乳管に発症しますが、タバコの煙を吸うと乳腺細胞に発がん物質が蓄積されるので、能動喫煙はもちろん受動喫煙もNGです。そして、家系内に乳がんや卵巣がんを発症した方がいる場合、遺伝的に乳がんを発症するリスクが高くなる可能性があります」

野菜不足、高脂肪化で発症リスクが増加。魚の脂肪はリスク減に

― 食事面では欧米化が危険因子になるということですが、具体的にどのような食事でしょうか。反対に、乳がんの発症リスクを下げる食事はありますか?

「欧米型の食事の特徴として高脂肪、低食物繊維、超加工食品が挙げられます。1日あたり450ml以上の牛乳を摂取する人や、アルコールを頻繁に飲む人も乳がんの発症リスクが高いことが明らかになっています。反対に発症リスクを下げる食事は、果物や野菜、トロ、サーモン、サバといった脂肪分の多い魚、大豆製品、キノコ類、オリーブオイルなどのいわゆる地中海食です。魚の脂肪がなぜ良いかというと、乳がんに限らずがんという病気は、細胞核内にあるDNAを損傷する成分が細胞に蓄積し酸化することでがん化していきます。ですから、抗酸化作用のある多価不飽和脂肪酸を多く含む魚の脂肪を摂ると、細胞のがん化リスクの低下が期待できます」

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がん細胞の増殖にブレーキ!?「乳がんリスクを下げる野菜トップ3」

― 野菜のなかでも、乳がんリスクを下げる効果が期待できるトップ3を教えてください。

1位 ニンジン

乳がんの発症リスクを下げる効果が実証されている成分の一つが、赤や黄色などの天然色素であるカロテノイド。カロテノイドの一種であるβカロテンが、野菜のなかで最も多く含まれているのがニンジンです。焼く、煮るなど加熱による損失は少ないですが、蒸し料理にするとβカロテンを余すところなく摂取できて甘みもアップ。

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2位 ケール

ケールもβカロテンの含有量がトップクラスを誇り、さらにビタミンAも豊富。青汁はもともと100%でしたが、最近は飲みやすさと溶けやすさを重視して明日葉や緑茶、フルーツ果汁が使われる商品が増えています。ケールをしっかり摂るなら生のままサラダで食べるのが一番。茹でると水分が失われて繊維質を感じるようになるので食べやすさの面からも生食がおすすめです。

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3位 玉ネギ

ケルセチンという成分にも乳がんの発症リスクを抑える効果が期待でき、最も多く含まれるのが玉ネギです。細胞はがん化する際、アポトーシスという防御作用によって自ら消滅する能力を持っていて、ケルセチンはアポトーシスを誘導しがんの増殖を阻害する能力を備えています。加熱しても失われない成分なので料理に幅広く使えます。

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「野菜の摂取+生活習慣の改善」で予防効果がアップ!

― 野菜を食べると細胞のがん化がこれだけ抑えられるというデータはありますか?ただ野菜を食べていれば安心といえるのでしょうか?

「まず、野菜の摂取量を1日200g増やすと、乳がん発症リスクが6%下がるというデータがあります。ただし、これは野菜の摂取量だけにフォーカスし、アルコール摂取の有無やその他の生活習慣は除外した研究結果になります。アルコール、タバコ、高たんぱく・高脂質の食事を見直しベースとなる生活習慣を整えたうえで野菜を摂取するとより高い予防効果が期待できます。食事をはじめ多くの生活習慣は自分の行動ひとつで変えられ、それでがんの発症を抑制できるなら見直す価値はあると思います」

― 食の多様化、コンビニエンス化により便利な加工食品を使う機会が増えました。こうした加工食品で注意することはありますか?

「加工食品のなかでも特に気をつけたいのが超加工食品で、摂取量が増えるほど乳がんに限らずがんの発症リスクが高くなると言われています。超加工食品とは5つ以上の添加物を含み工業的な製造工程を経て作られたものを指します。問題なのは超加工食品に使われている発がん性のある添加物で、もちろん毎日食べても発がんリスクの心配がない摂取基準量内で使用されているのですが……。あくまでも一つの成分に対する基準であり、多くの商品は複数の添加物が使用されておりそれらの複合効果は検証されていません。データがないので議論の余地がなく、安全かそうでないかという根拠を提示できないのが現状です。添加物が直接的な原因と言い切れないまでも、超加工食品の摂取量が増えるとがんからメンタル疾患まで、さまざまな健康被害が生じやすいことは明らかになっています」

教えてくれたのは…岩崎真宏さん

医学博士、管理栄養士。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることを実証。その後、医学的根拠のある栄養学を実践するために独立。運動指導者、医療スタッフ、保育士、介護士、アスリートなどを対象にヘルスケア人材の育成と雇用創出、コンテンツ開発を行う教育事業を開始し、病気になってからではなく、健康なうちから使いこなせる栄養学を発信している。2017年には一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)も話題。

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取材・文/北林あい

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ヨガジャーナルオンライン編集部

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ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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